第2話

しばらくコソコソと身を隠してはいたが、『三度目の正直』もう一度探して見ることにする。半ば諦めかけてはいたが。この街—S市は、住むぶんには良いが、およそ怪盗と名のつく者がビジネスで足を運ぶ場所ではない。鈴木のやつ悪友は興奮していたけど、そんなはずはないんだ。だってあいつは…。『令和の怪盗ルパン、ふたたび‼︎』今までになく注意深く捲った1枚目、その裏に大きめの文字の小見出しが踊る。僕は眉をしかめる。だってあいつは日本中を股にかける大怪盗(自称)だし、そろそろ本家フランスに凱旋するはずだとかなんとか、それはもう実しやかに噂されている(らしい)。毎朝新聞—(自称)怪盗が、懇意にしている、つまりは予告状を決まって送り付ける新聞社だ。それにしても、第二、三面の全面を惜しげもなく使うっていうのはいかがなものだろう、仮にも全国紙じゃないか。政治はいいのか、日本経済の先行きは。僕だってこんな恨み言はただの八つ当たりだってことは分かっている。何より気に食わないのは、鈴木の言う通りに、しっかりきっかり【予告状】が掲載されているってこと!鈴木よ、『賭け』は僕の負けだ。認めるとも、あの怪盗がこの街に来るって。コーラ一本で許しておくれよ…。

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