30.「救世主・・・様・・・」
衣服がボロボロに破れ数々の傷口から血が流れ、痛々しい姿のミクちゃんは、先ほどの快活で煩そうな様子から一変した、瞳を潤ませて、僕を見つめる。
「先にあたしから、魔力を供給して貰うっす」
そう言って、ミクちゃんは僕に抱きつく。
その抱きつく手は、ベタベタと僕のをまさぐる仕草だ。
「み、ミクちゃん、ちょっと待ってく・・・」
「救世主様ぁ?」
ミクちゃんの様子に戸惑った僕に女神ちゃんの少し怒っている様な声をかけられた。
「今、恥ずかしがってる場合じゃないですっ。分かっていますよねっ?」
顔を膨らませてジト目で僕を睨む女神ちゃん。
出会って以来、僕を困らせてばかりの女神ちゃんだが、女神ちゃんに怒られるのは初めてな気がする。こんな顔するんだな・・・。
「救世主様、恥ずかしいなら、目を瞑って、後はあたしに身を任せた欲しいっす。補給を手早く、パパっと済ませるっすから・・・」
そう言って、ミクちゃんは僕の頬を撫でた。
顔が近い、僕は自分の胸の鼓動が早くなったのを自覚した。早くなった理由はもちろん、目の前のミクちゃんだ。
・・・こんな華奢で朗らかな子を意識してしまっている。・・・そんな自分が情けなく感じた。
「救世主様っ!早くぅ!」
遠くで奴らを押さえてる菜野葉ちゃんが叫ぶ。
その姿はボロボロで、今にも折れてしまう細木の様だった。
「ミクちゃん!・・・よろしく頼む!」
僕は決心して目を瞑った。
「・・・・・・・・・任されたっす。今回はすぐ終わらせるっすよ」
そう言って、ミクちゃんは僕から魔力を供給を始めた。
瞼の暗黒の中、ミクちゃんの体温や感触が僕の肉体の全神経を爆風の様に撫でた。
瞼の外では、何をされているのか、分からない。分かったら、理性が働いてミクちゃんを拒否するだろう。
しかし、僕はミクちゃんに何をされているか、分からない。
・
・
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「終わったっすよ!目を開けた良いっす!」
時間にして3分程か、身近時間だったが、ミクちゃんへの魔力補給は終えた。
「ふっふー、ちょっとまだ欲求不満っすけど、パワーモリモリっす」
ミクちゃんは鼻息をふんふん鳴らして両腕を回した。
「ちょっと!ミクっ!魔力供給終わったのなら早く来てよ!本当に死にそうなのよ!」
前で戦っている菜野葉ちゃんが半ギレした声音で悲鳴を上げる。
かなり辛そうに戦っている。
「分かったっす!あたしに任せろっす!」
そう、ミクちゃんは答えて、
「あたしの活躍、期待してて欲しいっす」
と言って僕の頬にキスをすると、戦っている菜野葉ちゃんの方へ駆けていった。
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