16.辺りの風景が変わった。
学校から、僕の狭いアパートの風呂場に戻った。
傷だらけだった菜野葉ちゃんは、さっき魔力供給したせいか、すっかり傷は治り、かつ衣服がずたぶろに破れ、肌を豪快に露出し、僕と女神ちゃんは、学校に居た時同様、裸のままだ。
急に恥ずかしくなって、股関を隠して、二人の体を見ない様にする。
そんな僕の様子を見てか、クスクス二人が笑う声が聞こえる。
「何、さっき魔力供給したのに、今さら恥ずかしがっているの?変なの。救世主様」
「そうですよっ、まったくウブですねっ、ふふっ、可愛い奴ですっ」
そう言って、視線を外すべく俯いている僕の頭を女神ちゃんは撫でた。
「いや、だってさ・・・僕は男で、君達は女。しかも僕は大人で君達は子供だろう?、それなのに、まともにいれるはず無いよ。」
「大丈夫大丈夫、私にはそんな気遣い必要無いから」
「そうですっ。私は女神で、まどかは魔法少女ですからっ、ふつーの常識は必要無いのですっ」
「・・・そんなものか?」
「そんなものですよっ」
常識外れの事を経験したばかりだ。確かに彼女達との接し方は常識的にはいかないかもしれない。
「とにかく、体洗おうよ、魔物と戦って汗だらけだし、ほぼ裸でつっ立っていたら、寒くなって来たよ」
菜野葉ちゃんはブルブル震えた。
確かに寒い。
「じゃあ、僕は上がるから、二人はごゆっく・・・」
「3人一緒に入るですよっ」
風呂場から出ていこうとした僕の手を掴んで、女神ちゃんはにっこり微笑んだ。
仕方がないので、二人と一緒に風呂を入る事にした。
ひと悶着はあったけど、体を洗い終わり、3人で湯船に浸かっている。
「狭いから、二人共、もうちょっと隙間を開けてくれ」
「無理ぃ、隙間なんてないわよ」
「救世主様、恥ずかしがっちゃ駄目ですよっ」
猫の額程もない湯船は、僕ら3人で、ぎゅうぎゅうになっていた。
とにかく、狭いなりに落ち着く事にする。
「・・・今日は色々あったなあ、二人に会ったり、魔物に襲われたり」
僕がぼやくと、女神ちゃんはクスクス笑った。
「ふふっ、明日からは、毎日、こんな日々ですよっ」
「ええっ!?」
「魔物はこの世界を終わらせようと、毎日毎日襲って来ますっ。ふぁいとですよっ!」
そう言って、女神ちゃんは僕の頭を撫でた。
「大丈夫、大丈夫。私達が守るからさ」
「そうそう、難しく考えなくて良いですよっ、救世主様はただ私達に守られていれば、それだけで良いんです。そうして、世は救われるこですからっ」
菜野葉ちゃんはふんふん鼻を鳴らして、ぎゅうと僕に抱きついた。
「・・・そう言えばさ、何で僕、救世主なんだ?別に悪の帝王をぶっ倒すって訳じゃないのに・・・」
「そりゃあ、救世主様が世界を維持して守っているからですよっ。救世主様が生きているだけで、世は守られます。」
「僕はただのそんへんのサラリーマンなのに?・・・今は無職だけど」
「違いますよっ、救世主様は世界の中心。この世界は救世主様を中心に存在しています。救世主様が存在している事によって、世界も存在を現としているのですっ」
「そういうものか?」
「そうですっ、例え、ただ生きているだけでも、それでも、救世主様は戦っているんです。この世界が無にならない様にと頑張って生きていますっ」
両拳を握りしめて、熱弁を振るう女神ちゃん。
「・・・どうして、僕が世界の中心なんた?、僕がいつ世界の中心とやらになったんだ?」
そう聞くと女神ちゃんはうーん・・・と考え込み
「今の救世主様が生まれる前から、ずっとずっと前から、救世主様は世界の中心なんです・・・、多分」
僕が生まれる前から、僕が世界の中心?、まるで意味がわからない。
「何しろ、私が、この世界を見つけた時は既に救世主様が世界の中心になっていましたのでっ」
「・・・女神ちゃんはさ、この世界以外の世界は知っているの?ついでに言えば、年齢とかおいくつ?女神と言うからには、見た目通りの年齢じゃないんだろう」
そう聞くと女神ちゃんは「そうですね」と頷いた。
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