14.その後はなすがままだった。

暗闇の中、菜野葉ちゃんに身を任せたのみだった。

「んっ、んっ」

暗闇の中、菜野葉ちゃんの、掠れた声が聞こえる。

「静かに、静かに、救世主様、何も喋っちゃ駄目ですよっ?しーっ。」

僕が声を発しそうになる度に女神ちゃんが、注意する。

魔力の供給が終わった。

声が出せないし、魔物に終われてるから、長くは出来ないから、手早く終わってしまった。

「うー・・・っ、力が、力がみなぎるよ・・・」

元気良さそうに菜野葉ちゃんは言う。

「菜野葉ちゃん、そんな大きな声を出したら、連中にバレてしまうよ」

「平気、平気っ。救世主様の魔力のお陰で、今、私、かつて無いぐらい力がモリモリなのっ!この学校ごと魔物をぶっ飛ばせそうな感じ」

「それやったら、救世主様もぶっ飛ぶからやめるですよ?」

「ふふっ、分かってる分かってる、女神様」

菜野葉ちゃんは戦う準備が万端の様だった。

僕らはロッカーから出た。

ロッカーから出ると、辺りに二、三匹魔物が居た。

「燃えちゃいなさい」

魔物達はあっさり燃やされた。

仲間が燃やされるのに気づいたのか、他の魔物達が、ワラワラと沸いてくる。

「さあ、よってらっしゃい!全部燃やしてあげるからっ!」

次々と現れる魔物達を、菜野葉ちゃんは、次々燃やす。

魔物は仲間が燃やされる度に、わらわらやって来るが、菜野葉ちゃんの、魔法の火力は疲れを知らずに、火炎を吹き続ける。

「張り切ってるですねぇっ、まどかっ」

「もっちろんよ、救世主様の魔力、お腹の中にいっぱいたっぷりあるもの!」

「ふーむ、愛の力ですねっ、救世主様っ?

「えっーと、愛というか、なんと言うか・・・」

「愛よ、愛っ!これは救世主様との愛の力よ、うふふふぅ♪」

菜野葉ちゃんはご機嫌の様だった。

ご機嫌の火を吹かして、魔物達を、その後15分位、焼いていた。

それ位長く、魔物達を焼いていたので、流石に魔物のストックが切れてきたらしい、段々、沸いてくる速度が落ちてきた。

「どうしたの?もう、終わりかしら?」

菜野葉ちゃんは、得意気に微笑んで、ふんすふんす鼻息を吹かしている。

「やるもんだなあ、菜野葉ちゃん」

「えっへへ♪そうでしょ、そうでしょ♪」

誉めてやると、菜野葉ちゃんはニコニコ微笑んだ。

「戸川よぉ・・・、良いのか?お前、そんな女の子に護られてさ、お前はいつだって自分一人も守れない奴だった。歳食ってもそうだなあ」

奴らの声がした。

残された魔物達は、集合していく、そして、各々が合体していき、一つの大きな大きな塊と形成していく・・・。

「お前は、いつも人に馴染めない奴で、集団からつまはじきにされた。ただただ人の気づかいを受けながら、何とか集団の中で生息していた。誰もがお前を疎んじる。誰もが、お前を好いてくれない、誰もが・・・」

魔物は大きく、さらに大きくなっていく。

「何だ・・・お前は・・・?」

魔物は大きな大きな肉片の塊となって、僕らを威圧してくる。

「俺達を知らないのか?常に、いつも、お前の身の回りに居たんだぞ、俺達は。クズなお前がクズである事を自覚させる為に常に居たんだぞ」

そう言って、巨大な魔物の塊を腕を振るう。

「危ないっ!救世主様っ!」

菜野葉ちゃんの叫び声が聞こえたかと思えば、菜野葉ちゃんに抱えられ、窓から外に飛び降り出された。

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