第2話

その日からしばらくたったある日


警察と一緒にどこかの施設の関係者らしい人が来た。親もなにやら叫んでいる。どうもこの人達の言うことに従えということらしい。


なぜ僕が見ず知らずの人間の言うことを聞かないといけないのか。意味が分からない。僕はほぼ無理矢理連れられるような形でどこかの施設に入れられた。


説明では「大丈夫! すぐ出れる!」とのことだったが、僕は施設につくとすぐさま檻の中に入れられた。しばらくそこにいるようにとのことだった。


僕は騙されていた。なぜ訳のわからない奴らの言うことを聞いてしまったのか。しかし、ここに閉じ込められてしまったのならもう遅い。


空虚な部屋で娯楽もなにも与えられずに飯だけ出される。こんなことがあるだろうか。しかも刑務所と違って僕の家族がこの施設にお金を払ってこんな仕打ちを受けさせるのだ。


発言がおかしいだけで、彼らがおかしいと思われるだけで僕はここに閉じ込められる。


あらゆる人間の悪意を受け、裁判で判決も下されていないのに罰を受ける。しかも自ら金銭を払って。こんな異常な世界があるか?


人権なんてないに等しい。人々の悪意の渦の中でひたすら搾取されていくだけだ。


僕はこの世界の狂気の中もはや正常であることをやめた。狂気の世界では狂気であることが正常なのだ。


基本的人権なんてただの言葉にすぎない。人が本当にその価値を知らなければ意味など持たない。


僕はそう確信し彼らの狂気のドグマを信じることにした。


僕は施設から出た。僕が大人しくしていたからだ。彼らにはそれが治療効果があったと思ったらしい。とんでもない。どこぞの国の洗脳と一緒だ。


ただこれ以上閉じ込められたくないから言うことを聞いているだけだ。


施設から出て気づいた。僕が閉じ込められていたのは精神病院だったのだと。ついには周りの人間に頭がおかしい認定がされたということだ。


頭おかしいのは周囲の方だ。僕がおかしいと思うのならなぜ閉じ込める。周りの人間におかしいと決定されることがどんなに辛いか分からないのか?


僕のことをおかしいと思うのならなおさら病院に閉じ込めるべきではなかった。


なぜなら、周りの人間にそう決めつけられたらもはやその決められた人生を生きるしかないからだ。


なぜ誰も僕の話を聞かなかった。ただひたすら聞かなかった。僕は病院で閉じ込められていた時話しかけられたのは食事と体温測定のときだけだ。


ただの業務的な会話だ。それがなんの治療になるのか?


閉じ込めただけで治療になると思ったのか?投薬治療するだけで治療になると思ったのか?人間をなんだと思ってるんだ。モノかなにかだと思ってるのか?



そうだ。こうやって誰かを追い詰めて、本当に追い詰めて狂わせる。そのような狂気のプログラムだ。


僕は道を歩いていた。横断歩道の信号待ちで人が待っているのが見えた。


あぁ、これもプログラムだ。と僕は思った。信号が赤になると待たなければいけないプログラムにこの人も支配されているんだ。


だから、聞きたい。そのプログラムを書いたのは誰?誰が交通ルールを守らなければならないと最初に言い出したの?


あなたはそれを知ってるの?


ただ周りの人間がそうしてるから、周りの人間がそう言ってるから、そうしてる。


もし、それが誰かを追い詰めるプログラムだったり、破滅されるプログラムだったりした場合あなたはどうするの?


あなたはそれに従うの?権力者が誰かを殺すのが正しいと宣言して、多くの人がそれが正しいと思いこんだら?


あなたが正しいと思って周りの人間と一緒に間違った人を追い詰めても、その間違った人にも人生があり、感情がある。


そしてその間違った人も誰かにとってはかけがえのない人なのに。


そして多くの人を追い詰め殺しておいたあと気づくのだろうか。


あぁすまなかったと。


申し訳なかったと。


そしてまたすぐに過ちを繰り返す。こんなもの許されるハズがない。


地獄に落ちろ。


この狂気が支配するプログラムで多くの人がこの世界には秩序があると思っている。


そんなことまやかしだ。この世界のどこにも秩序はありはしない。ただ、自分たちの平穏無事な人生がこのまま続いていくと思い込んでる人がほとんどなだけだ。


そんなものガラスのようにすぐに壊れてしまう頼りないものだ。


そのガラスが壊れたとき人はこの世界の狂気を知るだろう。誰もあなたを守ってくれない真実を。


この世界はあなた無しでも成立し、

そしてあなた無しならひょっとしたらもっと良い世界になったかもしれない可能性を。


僕は信号待ちをしている人を再度見た。まだ待っている。僕はこの世界のプログラムに隷従することを自ら選んだが、それは表面上のこと。


そうだ。僕は誰かに教えてあげないといけない。


僕は信号待ちの人にこう声をかけた。



「あなた狂ってますよ」

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

バグ 乱輪転凛凛 @ranrintenrinrin10

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ