第3話【内藤は座って話を聞いた】
「救う? 俺が?」
目覚めてから畳みかけられる訳の分からない展開に、俺はただ聞き返すことしかできなかった。
「えっと、エル……エルドレッド?」
「エルリットです」
「あー、ごめん。間違えた」
カープの助っ人外国人とごっちゃになってしまった。
「エルリット、もうちょっと分かり易く説明してもらっていい?」
村や国を救ってほしいと言われた気がしたけど、寝起きで初対面の相手から言われることじゃない。助けを求めたいのはむしろ俺の方だけど、内容が内容だけに突っぱねるわけにもいかないし……とりあえず話を聞こう。
俺が片膝を立てて座り直すと、エルリットはぽつぽつと語り始めた。
「今、私たちの村は2つの問題を抱えています。1つ目は、魔獣による襲撃です」
「魔獣の襲撃?」
「はい。私たちの村では村人が協力して農作物の栽培や家畜の飼育をしているのですが、少し前から周囲の魔獣の動きが活発化してしまって……」
「あー、荒らされてるのか」
山から下りてきた動物が畑を荒らすということは、ニュースでも何度か目にしたことがある。海外では狼なんかが羊を襲ったりするらしいし。
「今は備蓄で凌いでいますが、この状況が続けば食糧難に陥るのは時間の問題です」
「なるほど、そりゃ大事だな」
人間、衣食住さえあれば最低限生きていけるが、逆に言えばそのどれかが欠ければ命に関わる。農業や畜産業で自給自足しているのなら、畑や家畜を襲われることは大問題だろう。
俺が頷くのを見ると、彼女は指を2本立てて続きを話し始めた。
「2つ目の問題は、警備ができる人材の不足です」
「警備?」
「魔獣から村人を守るために、これまでは主に若い男性を中心に警備網を敷いていたんです。ただ、食糧難に陥る可能性が高まったことで、彼らの多くが仕事や食料のある大きな街に出稼ぎに行かざるを得ない状況になってしまいました。結果、警備網が機能しなくなってしまったんです」
俯きがちに、一息で話すエルリット。
「今のところ村人に被害は出ていませんが、魔獣にいつ勘付かれてもおかしくはありません。そうなってはもう終わりなんです」
「……なるほど」
農作物や家畜が襲われて困っている。さらに、食糧難を見越して男が出稼ぎに出た結果、村の警備が薄くなって危険性が増したと。
細かい部分は分からないが、ざっくりした解釈はこんなところだろう。
俺も困ってるとか、色々思うところはあるけど……
とりあえず、1つ確認しておかなければならない。
「なあ、エルドレッド」
「エルリットです。長ければエリートお呼びください」
「あ、ごめん。エリー」
「なんでしょう?」
「魔獣って、ナニ?」
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