第1話【内藤は見知らぬ土地で目覚めた】
目が覚めさめると、そこは草原でした────完。
なんて感じで終わってくれれば楽だったのだが、どうやらそうもいかないらしい。
時間が経つにつれ、だんだん意識がハッキリしていくのを感じる。
「プロ野球選手…………や、野球?」
俺にしがみつくように眠っていた少女は、俺の(少し未来の)職業を聞くとポカンと口を開けて固まってしまった。
……まあ、自分で言うのもなんだけど、野球選手ってそこらへんにいるもんじゃないしな。物珍しいんだろう。
「ごめん、俺も少し質問いいかな?」
「え? あ、はい」
「変な事聞くんだけど、ここどこだか分かる?」
改めて周囲を見渡してみても、視界に入るのは一面に広がる草原と背の高い木々だけ。ネイチャー系のテレビ番組でしか見ないような景色というか、少なくとも俺の生活圏にこんな場所はなかったはずだ。
「えっと、ここはミラビリス・フィールドです」
『ここはどこ?』という少し危ない質問に対し、少女はよどみなく答えた。
「ミラビリス・フィールド……聞いたことないな」
●●フィールドなんて場所はマリナーズの本拠地しか知らない。ミラビリスという単語も聞き覚えがないし……。いや待てよ、まさか──。
「もしかして、ここって日本じゃないのか?」
「ニホン……。私はその場所を知りませんが、そうですね。ここはシャカール王国の領地になります」
「マ、マジか……」
嫌な予感が見事に的中してしまった。見知らぬ草原で目覚めただけでも訳が分からないのに、加えてここは俺の生活圏どころか日本ですらないらしい。
シャカール王国ってのがどこにある国なのかは知らないが、昨夜の俺はしっかり家のベッドで寝たはずだ。俺の記憶が間違っていなければ、これは拉致か大掛かりなドッキリか……。とにかく普通じゃないことが起きているのは間違いない。
なにがどうしてこうなったかは分からないが、外国にいるというならすぐに行動を起こす必要がある。
「悪いんだけど、スマホ貸してくれないか?」
すぐに帰れない可能性がある以上、とりあえず何ヵ所かに連絡を取りたい。
というか、拉致という事件性を考えたらまずは大使館に直電すべきか。
ポケットに自分のスマホが無かったので、少女に借りようと手を差し伸ばしたのだが、少女は再び首を傾げてしまった。
「スマホ?」
「まさか……スマホが分からないのか?」
「すみません、私は聞いたことがありません」
「お、おおぅ……」
スマホが普及してないということは、シャカール王国はいわゆる先進国ではないのだろう。たしかに、この見渡す限りの草原の先に大都会のビル群があるとは考えにくい。
「こりゃまいったな」
「あ、あの……」
どうしたもんかと腕を組むと、少女がおずおずと話し掛けてきた。
「貴方は一体……?」
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