エピローグ

 三ヶ月の韓国滞在を終え、志穂は福岡に戻った。スーツケースを受け取って税関を抜け、手早く真山にメッセージを送る。


「着いたよ。荷物も受け取ったところ」


 到着ロビーに出ると、ニューヨーク行きの便に遅れが出ているというアナウンスがあった。


「福岡発ニューヨーク行き、JC三一〇便は悪天候のため現在、遅れが生じております。ご利用のお客様には大変ご迷惑をおかけしておりますが、今しばらくお待ちくださいませ」


 志穂はスーツケースに手をかけたまま、通路の真ん中で立ち止まる。視線の先には出発ロビーに向かうエレベーターがあった。


 真山から電話がきた。

「お疲れさま。駅まで迎えに行くから、何時頃に着きそうか連絡ちょうだい」

「うん…」

「疲れた? 大変だったね、いろいろ」

「うん」

 真山の声にうなずきながら、志穂の目には涙があふれてくる。


「ごめん」

「なんで謝るの、帰ってきたらうちで鍋でもしよう」

「ごめん、私、やっぱり帰れない」

「えっ、なんで?」

「だって私、このままじゃ」

「志穂、どうしたの、意味分からない」

「ごめん、…ごめんっ」


 志穂は携帯を手にしたまま、声を上げて泣く。

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手と骨 世界を旅する黄色いイキモノ「みじんこ」 @oumavet

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