理想郷(Paradox)全年齢対象版

明鏡 をぼろ

その男、名を月華という


「D-1より報告、まもなく当飛行船は対象都市アブリズ上空へ接近します。D-1より報告、まもなく当飛行船は対象都市アブリズ上空へ接近します」

「Aより指令、各隊員はフォーメーションaに就け。繰り返すAより指令、各隊員はフォーメーションaに就け。それより先の指示は各隊のコマンダーに嘱託する。以上」

 腕を前に伸ばしまずは関節の運動、次に両腕を上にあげ体全体で大きく伸びる。緊張をほぐすにはこれが一番効く。もっとも緊張というよりかは高鳴りすぎた怒りとテンションなのだが。これから一つ城を落とすと思うと興奮が止まらなかった。さすがの彼でも城落としはしたことがなかったのだ。

「本当にたったの一人だけで出陣されるのですか?」

 頭に本を乗せた少女が聞いてきた。見た目からして19-22歳だ。

 少女は頭にA5サイズほどの分厚い本を乗せ、ローブを纏っている。垂れ下がったフードの中は色の概念を失った暗さが広がっており奥行きがない。ちなみに皆が気になるお胸のほうはBだ。

「あぁ。でもどーせお前援護してくるだろ?」

 ニヤつきながら青年は少女に返答した。まんざらでもない様子だ。

「まぁ、それが私の職務の一つでもありますので。しかしじん、この策に関しては総司令官のディリジェンさんをはじめ多くの人が異議を唱えていますよ。あなたの言うことなので反対する人はあまりいませんが」

 頭に本を載せた少女は少女は青年のことを「じん」と呼んでいる。何故そんな呼び方なのかは置いといて、とりあえず彼女は青年のことを「じん」と呼ぶ。時には「じんじん」と呼ぶこともあるが、「じん」がデフォだ。

「そうだぞ月華、ベルカナの言うとうりだ。今からでもいいから作戦を変更って、するわけないよなぁ君が」

 ディリジェンと呼ばれた男はスクリーンを通じてベルカナたちに話しかけた。どうやら彼のいる場所がこの船の本部で、反対に青年-月華げっかと本を載せた少女-ベルカナのいる場所はその船の最も下竜骨に近い場所にいる。スクリーンには眼鏡の青年-ディリジェンが写っている。

「さっすが、分かってんじゃんジェンジェン」

「ディリジェンだ!何度言ったらわかるだ全く、、」

スクリーンに映る青年はため息をつきながら眼鏡を上げた。

「ま、彼ならやってくれるだろう」

 ディリジェンは言い争うのも馬鹿らしくなったかほおを緩めて笑った。

 月華の前の床が下方向に開き始めた。彼らの下に広がったのは大きな空。青年とベルカナは飛行船の一番下にいたのだ。どうやら月華はそこから飛び降り襲撃を仕掛けるつもりらしい。

 と、そのとき指令室に少年と少女が駆け込んできた。

「遅れてしまいすみませんでした!今日から第二戦闘隊に所属になります、白井=聡虎そとらです!」

「私も遅れてごめんなさい!同じく今日から第二戦闘隊に所属になります!ガーネット=柘榴ポムグラネット=ウィンクです!」

「おお、ようこそ二人とも。私はここの総司令官を務める天照=紺桔梗こんききょう=ディリジェンだ。よろしく頼む」

「私はツルギヤ=金糸雀カナリヤ=フランカだ。フランと呼んでくれ」

「こちらこそよろしくお願い

「って、ツルギヤってあの伝説の召喚士の一族の?!」

「あ、あぁ!その一族だ」

「ねね凄いよ聡虎!ツルギヤ一族はね、むっか~しから代々召喚神術の第一人者として携わり数々の星神クラスの天使や悪魔、聖獣、竜なんかと契約しその契約数では世界一を誇る超名家なんだよ!」

「そ、そうなんだね。とてもフランさんお家がすごいってわかったのはいいからそのさっきからブンブン僕の手を振り回しているのをやめてくれないか?めちゃ痛い」

「これはすまない!え~、でもこんな高貴な方にお会いできて私嬉しいよぉ!」

「そんなに言われると照れるな」

フランは顔をかなり赤くして照れている様子だ。ちなみに彼女は身長130cmで歳は38の合法ロリである。ただ性格のほうはどこか身長につられた部分がある。しかしこれでも流石は名家の娘、彼女は相当な実績を持っており、その契約数においてはこの広すぎる世界でも上位に入る。

「さて、君たちを何故此処に呼んだかというとね、うちの筆頭を見てもらいたかったからなんだ」

「月華さんですね!わかります」

「お、既にウィンクちゃんは御存じのようで。聡虎君は?」

「この組織の最戦隊の隊長ということしか、、。すみません」

「なぁに、はじることはないさ。今君が言ったとうり彼、不知火しらぬい=バーミリオ=月華げっかはこの「エルドラド」の最戦隊隊長であり「八鎖レヴォルターズ」の一員だ。聡虎君、君と同じ地球から来た人間でこの世界からしたら相当レアだ」

 聡虎はこの世界のことについては大まかな説明を受けていた。

 ここは地球から同時空、世界線に存在はするが相当離れた場所で万物の構造の仕組みから価値観、生命のシステムまで何もかもが違うと。

 そして最も大切なこととして、

「ここでは人間は迫害、差別の対象である」と教えられていた。

「そんなところかな。さて、なんで月華の戦闘を見てもらいたいかというと、まぁまだここに来たばかりでまだなんもつかめていないであろう二人にここがどんな場所か見て欲しくてね。特に聡虎君に」

「僕に、ですか?」

「月華も元は人間だ。彼がこの世界でどのように抗い生きているかを見て欲しいんだよ」

「な、成程」

「そんなに固くなるな!彼の戦闘は見ていて華麗で美しいし、それにここではみんな平等!ウェイウェイだよ!」

「お前がウェイウェイっていうとキモイんだな」

「フランちゃん言い過ぎ、、」

「粛正するぞロリコン。まぁ、ゆっくりして生・き・たまえ二人とも。ここは楽しいところだよ」

 月華が話しかけた

「D、目的座標まであとどれくらいだ」

「650秒です」

 二人はスクリーンに近づいた。

「あれが、月華さんなんだ」

 二人はスクリーンに近づき目を見張った。貫禄が確かに彼にはあったのだ。

「おっ、君たちが新しいメンバーたちか!色々だろうが、まずは一つ。この世界を謳歌しようぜ!」

 その青年は二人にっとてはとても眩しくそれでいて重いものであった。彼の言葉は緊張しているであろう自分ら2人を落ち着かせるための社交辞令のようでもあるし、本当に彼が心の奥底から彼ら二人の幸せを言っているようにも聞こえた。聡虎とウィンクにとって、月華という青年はとても謎でありながらはっきりと澄み切ったイメージで、つまり彼がどういった人物なのかを容易に形容する言葉は彼らは持ち合わせてなかったのである。

「ジェンジェン、その馬骨君とうちのプリンスは何をしている?もちろんウチの技術なら見えるよな?」

「勿論。目標アスト=ファスターはたった今風呂を出て現在は髪を整えています」

「オーケー、そこまでスケスケだと少し可哀想だな、、。だが、あいにくこちらは姫を取られてるもんでそんでもってお情けはナッシングだ。D、カウントダウンをよろしく頼む」

「了解、90秒前、89、88、、、」

「あの、月華さんはいったい今から何をされるんですか?」

「オーケー簡単に今現在の状況を解説しよう。この船にはメイデン=白オワイト=マリートゥーヴァって人がいてね、月華の相棒なんだけれども絶賛アストってやつに誘拐され中でしかももうすぐそいつに殺されそうなんだよ」

「えぇ?!」

 二人は驚いた様子でモニターを見た。そこに移る月華はやはり冷静で、さっきまでの笑顔も含めてやはりすべてが謎に見える。一体どこまでが彼の本性なのだろうか。

「でね、マリーちゃんはあの城のてっぺん、天守閣のベットに絶賛拘束され中で、今現在アスト君はあのたっかい城を上っているところ。えっと、あと30秒でやられそうってとこ」

「えっちょっと、なんでそんなに冷静にいられるんですか?」

「理由は二つ。一つはうちの月華が今から相手の城に一人突っ込む予定なんだけどまぁ百割それでダイジョーブそうだから。あともう一つはもし危なくなってもこっから襲撃すればそれも百割成功するだろうから」

 自身気に説明するディリジェン。指を四本立てているのは「1000パーセント」を表しているのだろうか。

 月華さま、予定時刻まであと10秒、9、8、、」

「おっそろそろだ」

 ディリジェンがスクリーンを拡大した。映画のスクリーンくらいの大きさである。

「頑張ってくださいね」

 とベルカナ

「間違ってもアロトオデンは使うなよ」

 月華はベルカナに注意した後にっこりと笑った。

「はいはい、わかってまーす」

「3秒前、」

「んじゃ、いってきー」

 これから一人で城を落とすものの発言とは思えない、よほどの自身があるのだろう。

「いってらー」

 この少女も同じである。

「一秒前、堕空!」

 月華は体重を前に動かし体全体を傾かせ、そのまま飛行船から降りた。上空8000メートル。二次関数で彼にかかる重力エネルギーは既にその桁を大きいものにしていた。

「第一次拘束具解除並びに発動、スゥーーー」

 月華は息を大きく吸い込み、そして城に叫んだ。

「天照あまてらす!」

 その言葉が意味するのはシステムの月華の服装の変更及びに月華が体内の主神支と呼ばれるエネルギーの活性化であった。たちまち彼の体は薄く輝き始めた。眼球は水色に輝き、肉体及びに彼の『心核』は鼓動を強めた。ドクンドクンと彼の『心核』がうなり鳴らす。

 月華の輝き、叫び声及びにその気配は直ちにアブリズの都市及びにその中央にそびえる城-アスト城へと伝わった。彼の「存在感」は尋常ではなかったのだ。

―アスト城階段―

「アスト様!ご報告があります!」

 アスト様と呼ばれた男に話しかけたのは彼の臣下の一人であった。わざわざ神力消費の高いワープの術を使ったということが事の重大さを浮かび上がらせる。

「貴様、いまから俺の娯楽が始まるとっ知って今話しかけたんだよな?」

「勿論承知の上でございます。月華が!あの『天撃の月華』がアブリズの町に落ちてきます!!」


 月華は呼吸を整えた。着地。と同時に『ゲート』から二本の剣を取り出す。「太刀」であった。刃渡りは1メートルはある。

「んじゃ、失礼します。ご愁傷さま」

 月華は丁寧にお辞儀をした後、にやりと笑いその瞬間加速した。思い切りドンっと地面を蹴り上げそのあとには大きなクレーターに似た跡が残るほどにだ。

 3歩ほど地面を蹴り50メートルは進んだ後彼は飛行した。その速さはまさに爆速。彼が通る場所は爆発にも似た衝撃と音撃が走る。

「月華が来るぞ!備えろ!封印用防護壁、展開!」

「「「「はっ!」」」」

 門の前で待ち構えていた神術士たちが防護壁を展開するが、月華には無意味も同然であった。

 彼は背中の後ろで二本の太刀をクロスさせ、防護壁まであと数メートルというところで一気にその太刀を振り下ろした。その芸当、一瞬にして見られるものではない。そうして彼は防護壁を“斬った”のだ。

「防護壁切るなんて話きいたことねぇよ」

 神術士たちはその場に座り込む他無かった。

 月華はアスト城目指して進撃を続けた。都市までは平屋が続くので屋根の上に乗り月華は進行した。その速さはとても速く意識していなければ「なにか光の塊」が一瞬現れたようにしか見えないほどである。

 だが流石は名城そして名都、四方八方から敵、矢、槍、神術様々なものが彼を襲う。

 月華は太刀をしまい代わりに『ゲート』から二本の日本刀を取り出した。彼のその戦闘力の強さは彼がいくつもの武器を自由に使いまわせることにある。

 右斜め方向から敵が一人、左から矢が三つ、上から神術士による氷柱、後ろからは槍が七本飛んでくる。

 彼は自身の主神支をあたりにばらまくことにより立体的な360°の監視を可能としていた。

 まず最初に左手の剣で左から飛来してくる矢を打ち返す。そのまま体を左方向に回転させ右足で敵を蹴る。このとき腹に下から左手を右方向に差出し神術弾を二つ打つ、この神術弾、一つは蹴ったばかりの敵にあたり確実に気絶させもう一つは上方向へ上がり氷柱のうちの一つを破壊した。そのまま後ろを向き飛んでくる七つの槍を神術で強化した剣ではじき、屋根を踏んで空高く跳び氷柱を粉々に斬る。この一秒にも満たない攻撃は彼の戦闘における才能及びにスタイルを上手く表していた。複数の剣術と神術と体術を同時に扱い戦う。そう、彼のスタイルはその頭のキレの良さと柔軟性を組み合わせたものであったのだ。

 敵が来たら一発ないしは二発で確実に仕留め、ありとあらゆる投擲物は神術と剣で斬り直進する。剣には移動の速さによる重みがかかりより強い一撃を繰り出すことができる。このほとんど無駄をそぎ落とした彼の動きは芸術とも言えるものであった。

 城の前に待ち構えるは中人、巨人ほどのサイズではないがそのサイズからは通常サイズの神人よりはるかに大きいパワーが出る。彼らは神術を施しより硬くなった岩石を月華に投げた。

「無駄無駄!不可斬系のスキルか加護を持たない限り何をしても無駄っだちゅーの!」

 日本刀をかまえ縦横無尽に斬っていく。縦、横、斜め、全ての岩石は等しく真っ二つに斬られ全く月華の足を止めることができない。

 月華はその高い建造物を見据えた。城の周りには高層ビルが城を守るように立ち並び、城に入るにはそれらを突破しなければならない。

 月華は日本刀を構えた。やるつもりらしい。

「龍連流りゅうれんりゅう奥義、逆さ鯉さかさごい!」

 叫ぶと同時に月華は剣を下から上に思い切り斬り上げた。その動きは斬撃を作り上げたのだ。紫電に似た色を帯びた斬撃は音速を超える速さでビルに正面から激突。しかし何も起きない、と思ったのが運の果て、ビルは瞬く間に斜めに切れ目が入り崩れ落ちた。月華のいる場所からは城が丸見えである。


―アスト城階段―


「アスト様、月華はそのままこちらに向かって直進中、ビル壁を破り10秒後にはこの城に入ります?」


「たわけ!この城はアスタート自らが施した結界がある。入るわけなかろう!」

「アスト様、月華が場内に進入!既に8階にいます!」

「なんだとぉ?!!おい、アスタートはいるか?」

 アストの呼びかけに応じ悪魔が現界した。身長は7メートルほど、手には鎌が握られている。

「殿、ここに」

「月華のやつの進行を止めろ!今すぐにだ!」

「御意」

 そういってアスタートは消えた。

「ふふふ、これで安心じゃわい」

 アストは憎らしく笑った。


 ホールで敵を快刀乱麻に切り刻んでいた月華に無線がはいる。

「月華!聞こえるか?私だ」

「ああ聞こえるよ、フラン。話そうとしてんのはアスタロトのことだろ?」

「既知であったか。だがそれなら尚更、彼には気をつけろ!あいつの持つ鎌は正真正銘「絶対死」のスキルだ!恨みに走るなよ」

「あいよ!」

 階段を上るのが面倒なので天井を斬りながら進む。しかしヒュンッと飛び天守閣を目指す月華の目前に突然大きな黒い鎌が現れた。

 反射で右手首で鎌を受け止める月華。しかし鎌の勢いはとても強く月華は一階まで叩き落された。

「お前がアスタロトか!」

「ごもっとも、可愛い人間ですね。とても美味しそうだ。側bぁWにgヴォ;」

「理性保ててねぇじゃねぇか。ふん、その様子だと契約者からまともな神力もらってないっぽいな」

「ゥるサい!」

 アスタロトはその昔地球に来たことのある悪魔である。多くの人間をそそのかしその命を奪った彼に対する月華の怒りはやはり強かった。

 アスタロトが鎌を投げようとした瞬間、月華がその鎌を蹴り地面に打ち付けた

「?!」

 さっきまで一階にいた月華がいきなりその何百メートル上のアスタロトがいる場所まで上がってきたのである。しかもアスタロトのスキルの一つに「非時空移動性」というものがあり彼の訳半径80メートル以内での時空移動すなわちワープは不可能なはずである。さらに彼の作った城内の結界と相まってただの『破神術』ごときでは彼のスキルを打ち消せるはずがない。

 そのとき、月華は得意げに彼の右手のブレスレットを見せた。金色に光るブレスレット、それには六芒星と呼ばれる記号が描かれている

「それハ、私がソロモン王に差し上げた8:、!」

「そ、昔会ったときに貰ったんだよ。このブレスレットだけは例外でお前の近くにワープできる。さっきの鎌もこれで防いだから死なずに済んだ。あいつはお前らのこと心配してたぜ。会ったら顔見せてあげろよ!じゃあな、契約消去アンシンヴォレヴォ!」

 月華が術によって光る剣をアスタロトの眉間に突き刺した時、アスタロトはく黒い光の爆発とともに封印された。


「アスト様!アスタロト様が!」

「うるさい!そっちはそっちに任せておけばいいだろう!さぁ、マリトゥーヴァちゃん、遊ぼうよ」

「あら―アストさんご盛ん注意散漫なこと、し・た♡」

 その瞬間アストの立っていた床から二つの斬撃が飛来し、アストを斬りながら天井へと叩きつけた。

「月華ありがとー!」

 満面の笑みで月華に話しかけるマリー。感動の再開である。

「あ、マリーまだこれ終わってないんだ。ちょっと時間無いから自分の自分のみで守ってくれ」

「へ?」

 月華は後方のに向かって衝撃の神術で後方の壁を攻撃し粉砕、そのまま外に向かって思い切り飛んだ。

壁を蹴った勢いでアスト城の斜め上上空まで来たところで、月華は大きく叫んだ。

「第八神具『叛逆への叛逆レヴェライド』・展開!」

「「「「「「「「えぇぇぇぇ!!!」」」」」」」」

 アルボロスのメンバーだけでなく、マリー都市の神人達、アスト城の戦闘員、それを見学していた英雄豪傑、全員が驚いた。

 月華の周りに「警告」と書かれた文字が表示され大音量のアラームが流れ危険を知らせる。

「警告、警告、神具の発動が確認されました、近隣の方々並びに建造物は最高速度で至急避難してください。使用者は無実の人を巻き込まないよう最大限の努力を心掛けることを。繰り返します。警告、神具の発動が確認されました、近隣の方々並びに建造物は最高速度で避難してください。使用者は無実の人を巻き込まないよう最大限の努力を心掛けることを」

「あいよ!」

 と、月華

「『あいよ』じゃねーよあいつアロトオデン使うなって言ったくせにあいつが一番派手なの使うのかよ!」

 とベルカナ。

「あの~、その『第八神具』ってどれくらいのものなんですか?」

 恐る恐る聡虎はベルカナに尋ねた

「んとね、あれ使ったら星に穴が開くね。尋常でない大きさの」

「穴?」

 その瞬間、ピカッという光とともにあたり全体がまばゆい光に包まれた。

 月華が持っていたのは全長80メートルは超える大きな槍。周りには衛星のように様々な物が浮き槍の周りを周り、槍からは協力な雷が生じている。

「あれは雷霆、君たちの星の神ゼウスが手にした武器だよ」

 ディリジェンは半分涙を流しながらニコニコした様子で話した。

「あの、なんで笑ってるんですか?」

「今から色々と厄介なことになるのが目に見えるからだよ?よぉしわかった!もう諦めて明日から頑張ろう!ほらみんな、神具の発動なんて滅多に見れるもんじゃないよ!彼が僕たちの仲間で本当に、本当に、あァ月華君!」

 月華は神具を構えた

「くらいやがれぇぇぇええええ!!!」

 雷霆は雷撃となり光の速さで衝突し、巨大な衝撃を生む。

 そこにいた全員が口をそろえて叫んだ。

「月華ァあ!なにしてくれてんじゃぁあああああああ!!!!!!」

 跡形も亡くなりぽっかりと星には穴が開いた。向こう側まで見える穴の大きさは尋常ではなかった。

 そこにマリーがいるベットだけが唯一残っている。

「助けに来ましたよ、お嬢様」

「馬鹿野郎殺す気か!」

 マリーは思い切り月華を殴った。

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