第4話 出会い
「家寄ってもらえる?」
俺の車でスーパーに向かう途中で香奈の家に寄ることになった。大学からだと俺の家とは反対方向になる。
でだ。
「荷物多くない?」
「気のせいじゃない?」
車の中で30分は待たされた挙句、香奈は少し大きめのバックを追加して持ってきた。
「なに持ってきたんだよ」
「女の子の持ち物を気にしちゃだめでしょ」
あまり追及するのはよくないらしい。
なんとなく嫌な予感はするがあえて口にしないでおこう。
「淳平、リクエストは?」
「ん〜?時間も時間だし簡単なものでいいぞ。パスタとか炒飯とか」
「そんなのでいいの?私作る意味ある?」
拗ねたような表情で見つめられてもなぁ。
ただ一緒にいたかったんだなんて言えないし。
「意味は……あるだろ」
じーっと見つめる香奈の視線に耐えきれずに顔を背けてしまう。「わかってるよね?」とでも言いたげな目で見ないで欲しい。
「まあ、うれしいけどね。彼女じゃないけどさ」
「うっ!」
バシッと背中を叩かれてつい声が溢れた。
「いてーよ」
「恨みがこもってたかもね?」
シレッと言うなよ。
今日のメニューはパスタに決まったらしく、サラダとスープ用の食材も俺の持っているカゴに入れていく。
「お酒は?」
「飲んだら送れないだろ」
飲まないと意思表示しているにも関わらずビールとチューハイを1缶ずつカゴに入れた。
「おいっ」
「私用だよ?」
いや、お前ビール飲まないだろうと言いたいところだが、今日はなぜか抗えない。
悪いことした自覚はちゃんとあるからな。
今日はしたいようにさせてやるか。
♢♢♢♢♢
「いや、あのさぁ」
「うん?何?」
メシの準備は香奈がしてくれたので片付けくらいはと俺が洗い物をしてたんだけど、その間に風呂を沸かしていたらしく、そそくさと着替えを持って風呂場に消えていった。
春樹や久美子と一緒に泊まることはあったけど、香奈1人で泊まったことはもちろんない。
「焦ってるのか?」
なんて自惚れたことを考えてしまってるわけだけど、正直困っている。
「お風呂先にいただいちゃった」
風呂上りで上気した頬や艶のある髪にパジャマ姿の香奈に思わず見惚れてしまう。
タオルで髪を拭いている仕草に色気を感じてしまう。
「淳平?」
「ああ、見惚れて—っと」
ついつい本音が溢れてしまい、香奈は照れたように俯いている。
「いまさらだけど泊まる気か?」
「いまさらだけど泊まる気だよ?」
だよな。パジャマ着てるしな。
「布団用意する—、何?」
「一緒がいい」
服の裾を掴まれ上目遣いで縋り付かれた。
「まずいってば」
理性と本能との争いに俺が勝てる見込みがあるのか?
「覚悟なんてとっくにできてるよ?できてないのは淳平でしょ?」
「……だな」
男の部屋に2人っきり。
なにも意識しない女ってありえないよな。
「でも。その前に聞きたいことがね?」
「Renaのことだろ?」
しかないよな。
突然現れた有名人が俺を探してたってどんな展開だよって思うよな。
「うん。話して、欲しいんだ」
声は震え、顔も緊張で強張ってる。
それでもその瞳には強い意志が感じられた。
「どこから、話すかな?」
「全部。朝まで掛かってもいいから彼女とのこと教えて欲しい」
そんなに緊張するなよ。
俺は香奈の隣に座り肩を抱き寄せた。
「きゃっ」とかわいらしい声が聞こえてきたが、意図を汲み取ってくれたらしく頭を俺の肩に預けてきた。
♢♢♢♢♢
高校3年の夏。
インターハイ出発前の最後の練習を終えた俺は1人帰宅の途についていた。
時刻は21時過ぎ。
「あちーな。コンビニでアイスでも買ってくかな?」
途中、街灯の途切れた通りを歩いていると正面から人が近づいてくる気配を感じた。
ノースリーブのシャツにホットパンツの少女は後ろを気にしながら猛スピードで俺に近づいてきた。
「助けてください!」
上からも下からも下着が見えそうな格好の美少女。なんとなく予想ができたが、その後を追いかけていたのはガラの悪そうな3人組の高校生だった。
「ナンパでもされたの?」
大会前の大事なときに厄介なことに巻き込まれたなぁと嘆息を吐いていたが、この少女を見捨てるわけにもいかない。
「無理やり連れて行かれそうなんです!」
「同意してくれればいいじゃない?」
追いついてきた男達は下衆た笑顔を浮かべながら少女を舐め回すように見ていた。
「やめたら?彼女嫌がってるし」
少しドスの効いた声で脅してやると少しびびったみたいだが、3人いたこともあって気が大きくなっていたのだろう。俺に対して毒づいてきた。
「ああん?お前こそ何格好つけてるんだよ。関係ないんだからひっこんでろよ」
あ〜、こいつ典型的な雑魚だなと思っているとやはりと言うか、殴りかかってきた。
「正当防衛成立かな?」
受け身もまともに取れないやつらに、体重をのせてアスファルトに叩きつけたので、数分で方がついた。とりあえず頭だけは打たないようにしてやったけどな。
「よしっと。あんたも見てたよな?」
最悪証言をしてもらわないといけないので、少女に確認を取るがポカンとした表情で固まっている。
「おいっ!」
「ひゃっ!す、すみません」
やっと俺の声に反応した少女はものすごい勢いで頭を下げて謝ってきた。
その美少女こそが中学3年生の平井エレナ、Renaだった。
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