第11話:ドイツで初めてカウンセラーに会う

カウンセラー

彼らはは患者の問題や悩み等を心理学の観点から

患者と共に解決方法へアプローチするプロである。

大体の人はこんな答えだと思う。

ドイツでもそうだ。

彼らは患者の悩みや心の問題等を聞いて、

解決方法を患者自らが自発的に導く存在だ。

知識として知っていたが、実際に受けるのは初めてだ。


僕はカウンセリングルームへ通された。

そこに待っていたのは長身で細い髭を生やした若い男だ。

彼の名はシュースター。

ここでカウンセラーとして契約をしている、学生だ。

と言っても、彼は20代後半だが。


彼は笑みを浮かべながら英語で挨拶をしてくれたた。

僕はかなり警戒していた。

何者だと。笑っているのに目が笑っていない。

知らない存在。カウンセリングなんて受けた事がない。

未知との遭遇。そんな気持ちだった。

悪い人じゃない、でもこの人からは冷たさを感じた。

取り合えず、この場は何を達成するべきかを聞いた。


シュースターさんは表情を変えず答えた

ここでは、3つの事を明確にしたい

一つ、君の過去

二つ、君の悩み

三つ、プログラムの選択


取り合えず、過去に遭った出来事を一から説明した。

シュースターさんは所々に質問を入れてきた。

「具体的にどんな状況だったか」

「どんな気分だった」

「何故、そんな事をしたのか」

「君が求めた行動だったか」

そんな事を聞かれた。


思い出すだけで嫌な気分だった。

父親の死は僕にとってトラウマだ。

未だにあの日を覚えている。

4月3日

死に目に会えず、会った時は既に冷たく、

レンガでできた安置所

ストレッチャーに横たわる、冷たくて青白い父親。

周りには泣く母、弟と妹。

人の死を身近に感じたのはこの時だ。

死んだら終わりだ。

残された者は想いが強い程傷つくと。


この時から、僕は早死を求めた。

生きていればまた、誰かの死を見ないとならない。

家族、友人、ペット、仕事仲間、可能性はいくつもある。

この気持ちは耐えられない程悲しいんだ。

だから先に死にたい。

この気持ちは未だに変わらない。


そんな話を泣きながらした。

父親との関係ははっきり言えば悪かった。

弟びいきで、僕には厳しかった。

そんな父親が好きじゃなかった。

それでも父親だ、僕は父親を誇りに思っていた。

海外へ転勤し、ゼロから立ち上げ、軌道に乗せる手腕。

計算の高さ、先見の明、人を見る目は無かったが、優秀な人だった。

そんな凄い男だった父親で、いつか超えて見せると息巻いていた。

その結果、勝ち逃げされた。

ムカつく。

こんな事も言っていた。


取り合えずシュースターさんは過去についてまとめていた。

「どうですか、先生?」

と聞いた。

彼はあまりにも有り過ぎた、出来事に彼は頭をかいていた。

「本来なら、もっと早くに鬱病を発症してもおかしくない」

「今の現状を聞いていると、正直どれがトリガーなのか分からない」

「鬱病だけじゃないかも知れない、複合的な何かかも知れない」

「正直言って、分からない。」

そう言った。

カウンセラーがそれ言ったらまずいだろ…と思いつつも

彼は提案をした

「一つづつ話をしよう、全てを聞いて、それから判断しよう」

毎週1回50分。

取り合えず分かったと伝えた。


次はプログラムだ。

シュースターさんは机から黄色い冊子の様な物を取り出した。

「これはセラピーパスだ」

「ここに書いてあるプログラムを受けてもらう」

「これらのプログラムは鬱病に効果があると言われている」

「君が受けるのは」

・エルゴ

・ミュージック

・フィジオ

・クランゲリン(?)

・バイオプシー

・アーツ

・タンツ

・カウンセリング

「取り合えずこの辺だ。ドイツ語が分からないので、基本的に対話系は外してる」

「スケジュール等は表に有るシートを見てくれ」

彼は説明を終えた様なので、僕は

「ありがとうございます、ではこれで失礼します」

と言い、部屋を出た。


取り合えず…よく分からないセラピーを受ける事になった。

明日になれば分かるから、今日はゆっくりしよう。

そんな気分で、その日を終えた。


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カウンセラーのお話ですが、

ドイツでのカウンセラーは高ストレスで、メンタルに不調を満たす人が多く、

極力、共感はしない様にするそうです。

彼らは他人の痛みや苦しみを延々と聞き続ける為、メンタルがボロボロになるのだ。

カウンセラーがカウンセラーを必要とする。

そんな世界だそうです。

故に極力感情を出さず、冷静に事を運ぶ人が多いらしい。


次回は、プログラムについて書こうと思いましたが、

箸休めとして、ドイツ生活について書こうかと。


それではまたお会いしましょう、さようなら


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