琵琶湖

 日本で最も大きな湖は、琵琶湖である。


 いくら大きくても湖であるから、対岸が見える。カスピ海だったら見えないかもしれないけれど。


 そこに、なんとなく安心感を抱く。


 もし琵琶湖の真ん中に投げ込まれたとしても、それなりの装備をしていれば、陸に辿り着けるから。たどり着いた地点が未開の土地でないことは明白で、それも安心材料だ。それなりの装備をしていれば、琵琶湖線や湖西線を使って家に帰れる。


 一方で、つまらなさを感じることもできる。


「この大きな水面はいったい、どこまで続いているんだろう」という気持ちを抱けないのだ。例えば大津から塩津の方向を見たとき、そこが塩津だと分かっている時点でもう、ゴールが塩津であることが分かっている。逆もしかり。


 海であれば、水平線上の任意の方向を見ればゴールが不明、未踏、未開の地である。陸ではなく水平線の存在がそう思わせる。日本国外に出たことがない自分は。


 塩津、敦賀のあたりに住んでいる人は、湖の気分のときは琵琶湖、海の気分のときは若狭湾へ行くのかなぁ……

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