第5話 再会
「なぜ?」
彼女はあくまでも柔らかな口調のまま続ける。
「理由は2つです。1つ、精神が安定していない。2つ、霊力操作ができていない」
「どうにかなりそう?」
「え?」
「あの子の補佐をするのでしょう?」
「知っておられましたか」
「陰陽道に疎い私でもそれくらいは分かるわ」
「失礼しました」
美紀は静かに紅茶のカップを傾ける。
「それでどうなの?」
「時間をかければどうにかなるかと」
「時間がかけられないのは分かっているでしょう?」
「・・
「そう。夫は出られる状態ではないわ」
神楽祭。年に一度、神無月に出雲で行われる鎮魂祭だ。この場では日本中いる悪霊討伐の本家当主が霊装で神楽を行う。
「とはいえ、娘さんも出られるわけではありませんよ」
「だからあなたに教育してもらうのよ。あと2ヶ月で」
「他の当主に劣らない実力に仕上げろと」
「ごめんなさいね。これは本来
「いえ。あなたが気にすることではありませんよ。2ヶ月で何とかします」
「ありがとう、乙葉さん」
乙葉もカップを傾け、一息着いた。
「ちょっと待っていてくださいね」
そういうと、美紀は部屋から出ていった。その隙に鴉が顔を出した。
《あれを2ヶ月でどうにかするだと!?》
「安請け合いだったかな」
《お前の腕次第だ。何とかしろ。人間のことはわからん》
ぶっきらぼうに言うと、鴉はコートに隠れた。
(あらら、ご機嫌斜めか)
乙葉はぼんやりとカップの紅茶を眺める。
(どうしたものか。あと2ヶ月で霊力操作を叩き直し、神楽を教え込む。・・・・相当スパルタになるな)
それに乙葉の前で分家が、なんて口走るような人間が素直に指導を受けるかどうかもわからない。
(そう言えば、あいつなんて名前だったっけ? 学校でも話さないから忘れたな)
すると、ドアの向こうから言い争う声が聞こえてきた。
(・・・大丈夫かな、俺。殺されないかな)
バン!
「どうゆうこと!?」
そんなことを考えていると、急にドアが開き、鬼の血相をした跡継ぎが入ってきた。
「?」
「どうして私があなたに指導をもらわなければならないの!?」
「・・・仮にも命の恩人にその態度はないと思う」
「いいから答えなさい!」
乙葉はゆっくりカップを持ち上げ、作り笑いを浮かべる。
「君が神楽祭に出られるように俺が君を鍛えるってことだよ」
(思い出した!
※次回更新 2月22日 土曜日 0:00
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