恋する乙女の恋愛事情

三城 谷

~天邪鬼Ⅱ~

 西木野琉璃は木之下ノラに恋心を抱いている。

 自問自答のように心の中で呟いた言葉は、自分自身の鼓動を早くする結果を生む。そう、アタシという存在は彼という存在に惚れているのである。

 中学時代。彼が起こした騒動は学校中で話題となり、それは『彼が一人で暴力事件を起こした』という事となって幕を閉じた。だがしかし、その騒動の真相をアタシは知っている。何故なら、アタシはその騒動の渦中に居た人間だからだ。

 渦中というのは、その頃のアタシは地味で……俗に言う陰キャラだったからだろう。クラスメイトの男子からイジメを受けていたのだ。だがその騒動があったおかげで、アタシへの嫌がらせはピタリと止んだ。

 

 『はぁ……くだらな。興味ねぇよ、そんな言いたい事が分かってるのに言い出せない奴の事なんか。でもよ、お前みたいな奴よりは好きだわ。俺は。――』


 あの時の彼の言葉は、未だに鮮明に覚えている。ただ騒いでたのをうるさく思って言っただけかもしれないけど、それでも嬉しかったし……とても頼もしくて、あの時のアタシには彼がヒーローに見えていた。

 それから月日は流れて、アタシは彼の受けた高校に無事受かる事が出来た。偏差値が高くて苦労はしたけれど、それでも努力して猛勉強をした甲斐があった。しかも幸運な事に、中学の頃のクラスメイトは一人も居ないという状況。

 これはもうアピールし放題だと思い、黒髪地味子からパリピ感溢れるギャルへと変貌を遂げた。これで彼にアピールして、付き合って夢のハッピースクールライフを満喫する。……そのはずだったのに。


 「……ノラちん、何処か遊び行かない?」

 「は?嫌だよ、めんどくさい」

 

 一度断れた程度で諦めるには早いと思い、翌日にもう一度誘った時も。


 「ノラちーん!お昼一緒に」

 「あ、俺は一人で食べるから」


 さらに次の日も……。


 「あの、ノラちん」

 「悪い。用事があるから」


 ……――こんなんで恋が出来るかぁぁああああああ!!!!!!


 何度も何度も誘ったにもかかわらず、断られるのが辛過ぎる。もう止めてあげて?ノラちん。もうアタシの心のライフポイントはゼロに近いんだよ!?そろそろデートの1回や2回ぐらい行ってくれても良いじゃんかぁあああああ!!!!!


 「――――ッッッ!!!!!」


 ベッドの上でジタバタと一人でアタシは枕に顔を埋める。声にならない叫び声が響き、ドタバタとしていると下の階から『静かにしなさい』と母親に怒られてしまった。

 だってしょうがないじゃないか、と鬼ばかりいる世間風に言いたい気持ちのまま再び顔を枕に埋める。しばらく悶々としていると、アタシの携帯がバイブレーションで震えているのに気付いた。

 どうやらトークアプリにメッセージが届いたらしい。差出人は……彼の妹である木之下ハルちゃんであった。


 ◇◆◇◆◇◆◇◆◇


 ハル:こんばんは、琉璃さん。

   :今、大丈夫ですか?

 琉璃:うん、大丈夫だよ。

   :どうしたの?

 ハル:実はご相談がありまして

 琉璃:相談?

   :珍しいね?

   :ハルちゃんが相談なんて

 ハル:そうですか?

 琉璃:うん

 ハル:あー、そうかもしれませんね

 琉璃:で、どうしたの?

 ハル:それがおにいの事なんですけど

 琉璃:ノノノラ君がどどどどうしたの?

 ハル:何でそんな動揺してるんですか(^^;

 琉璃:気のせいじゃないかな?

   :別にさっきまでノラ君の事を考えてたなんて事無いんだからね!?

 ハル:そういうのはおにいにして下さい 

   :私にツンデレは効きませんよ?

 琉璃:ツンデレちゃうわ!<(`^´)>

 ハル:何故に関西弁なんですか

   :もう面倒なので通話にしますね


 ◇◆◇◆◇◆◇◆◇


 ――プルルルル……。

 トークアプリでそう告げられたと同タイミングで、ハルちゃんから通話が飛んで来た。アタシは受話ボタンをタップして、耳に当てる。


 「も、もしもし?」

 『どうして疑問系なんですか。琉璃さん、おにいの事で相談したいんですけど、そろそろ本題に入って良いですか?』

 「あ、うん!どうぞ!!」


 アタシはつい声に緊張が混ざり、ベッドの上で正座をして携帯に耳を傾けた。こちらの様子を把握しているのか、ハルちゃんは呆れた溜息を吐きながらも本題に入る事にしたようだ。

 

 『実は長期休暇に入ってから、おにいのニート度が急上昇しちゃいまして』

 「ノラ君、勉強は絶対するタイプだと思うんだけど……宿題だって出てたはずだし」

 『それが、宿題は全部初日の内に終わったらしくて……「俺はこれからスローライフを満喫するんだ」と言って、グータラ生活に勤しんでいるんですよ』

 「あぁ……」


 彼なら有り得る話だ。素行はどうであれ、提出物やテストではキッチリしている彼の事だ。長期休暇が始まる直前のHR中にでも、宿題を触っていたに違いない。それから家に帰ってから即効で終わらせて、長期休暇を謳歌する準備をしたのだろう。

 長い付き合いという事もあり、アタシの脳内には彼の取る行動が手に取るように分かる。そんな特殊能力を得てしまったのである。我ながら恐ろしい。


 『そうですね。琉璃さんのそれが犯罪に使われないかが心配です』

 「うぇっ!?そ、そんな事しないよ!?っていうか、何でアタシの考えている事が分かったの!?」

 『声に出てましたけど?』


 なんて事だ。アタシのこの特別な能力ちからが、彼の妹であるハルちゃんに露見されてしまった。これは由々しき事態である。早速解決方法を考えなければ……


 『現代の科学でも記憶消去は出来ますけど、お金が掛かるのでオススメしませんよ?後、別に琉璃さんの行動の方がおにいより把握しやすいんですけどね』

 「えぇ!?そんな!」

 『それで話を戻しますけど、おにいをグータラ生活から脱却させる為に何か方法は無いですかね?部屋に引きこもり気味になっているので、外に出掛けるだけでも良いんですけど』

 「うーん、ノラ君を外に……って、えぇえ!?そ、それってつ、つまり――アタシがノラ君をデートに誘えって事ぉぉぉぉ!!!??」


 ◇◆◇◆◇◆◇◆◇


 ピンポーン……。


 「ん、誰だ?こんな朝早くに」


 面倒な時間帯に客が来たもんだ。長期休暇だからオール生活を謳歌しているのだが、昼夜逆転生活となっている為にハルとは時間の差異が生じている。生活時間の基準がズレている所為で、こんな朝早くにはまずハルは起きて来ない。

 居留守を使うというのも有りだが、そういえば先日通販で頼んだ商品があった。それが今届いたとしてもおかしくはない。そんな事を思いながら、俺は下の階へと向かい玄関の扉を開けた。


 「はい、どなたですか?」


 眩しい太陽の光の下、目元を片手で庇いながら玄関先の人物を見る。宅配便かと思ったが、そこには良く見知った人物の姿があった。


 「お、おはよう。ノラちん」

 「琉璃か。どうした、こんな朝早くに」

 「え、えっと……ノラちんにお願いがあって、来ました?」

 「どうして疑問系なんだ?くだらない話なら休み後にしてくれるか?俺は今、火竜討伐クエストで忙しいんだが」

 「(本当に休日を謳歌してるんだ、ノラ君)」


 何やらモジモジとしているが、俺の脳内は今やっていたゲームへとシフトチェンジしている。いくら話をされたとしても、俺の興味を引く話題でなければ思考が働く事は無いだろう。

 それに火竜討伐が終われば寝ようと思ってたし、こいつの話を聞く気は全く持って皆無だ。俺は早く火竜を討伐して上級クエストをクリアしたいのである。


 「~~~っ(っていうか、ノラ君の寝間着が少し肌蹴てる。運動なんてしてないのに筋肉質なお腹に肩、髪もボサボサで普段見れないノラ君の無防備な姿っ!!!な、なんて至高な光景っ!!は、鼻血が出そう……)」

 「んで、お願いって何だ?聞くだけ聞いてやる」

 

 俺がそう言うと、ハッと何か妄想の世界から我に返ったような様子で答えた。


 「あ、うん。えっと、この間福引券が当たっちゃって……温泉旅行が当たったんだけど、アタシ友達少ないしノラちんと行きたいなぁ……なんて」

 「……温泉、ね」


 何を言うかと思えば、やはりくだらない話だった。そういえば、こいつはやたらと遊びに行きたいと学校で言って来ていたのに、長期休暇に入った瞬間に誘って来なくなったな。

 あまり断り過ぎても泣かれるかもしれないし、家の中にずっと居たからハルに小言を言われる毎日にも少々飽き飽きしていた所だ。面倒だが、良い機会かもしれない。


 「や、やっぱり無理……だよね。ノラちん、せっかく楽しくゲームしてるし……」

 「行ってやっても良いぞ、温泉」

 「そ、そうだよね。ノラちんが『行っても良いぞ』とか言わな……――え?い、今なんて」

 「だから、行っても良いぞ。温泉旅行。丁度外出ようと思ってたしな、気分転換には良いだろ」

 「ほ、本当に本当!?あ、後で待ち合わせに来なかったりとかドッキリカメラ仕掛けてドッキリ大成功とか実は未来の道具を使ってて『行きたくない』っていう事を伝える為に嘘を付いてたりしてない!?」

 「お前の中で俺はどんな奴なんだよ。――あー、本当だ本当。こんなくだらない嘘を付く程、俺は暇じゃねぇぞ。それとも行くの止めるなら話は別だが」

 「……――ありがとう!!!ノラちんはやっぱり優しいね♪」


 そう告げた瞬間、上機嫌となった琉璃が抱き着いて来た。むぎゅっという効果音が力強く聞こえる程に抱き締められ、意識してはいけない事を意識せざるを得ない状況となった。

 俺は理性を保ちながら、無防備なこいつに一喝入れる事にした。


 「気安く抱き着くな。お前に抱き付かれても全然嬉しくねぇよ、暑苦しい」

 「――ハッ!?~~~~~っ、ご、ごめんね?え、えええええっと……じ、じゃあ早速明日からなんだけど待ち合わせは駅前で良いかな!?」

 「明日って急だな。まぁ福引券ならそんなもんか。分かったからもう帰れ、用は終わっただろ?」


 俺はシッシッと手を振りながら、琉璃を帰らせる事にした。やや納得していない様子だったが、落ち着きのない様子へとすぐに変わって走り去って行った。何がしたいんだか分からないが、扉を締めてから俺も部屋に戻った。

 そして……――

 

 「(何なんだあいつはぁぁぁぁぁぁぁ~~~~~~~!!!!!!)」


 そんな悲鳴を声に出さないように枕に顔を埋めるのだった。


 ◇◆◇◆◇◆◇◆◇


 そして――温泉旅行当日。

 

 「お、おはよう。ノラちん」

 「ん……」


 キャリーバッグを持つ琉璃とボストンバッグを持つノラは挨拶を交わした。微かに高揚した表情を見せる琉璃に対して、ノラは大欠伸をしながら琉璃に問い掛けた。


 「何でこんな早い時間なんだ」

 「だって福引券だったとしても、早い時間で行けば色んな所見れるじゃん。旅行ならハルちゃんにもお土産買いたいし、ノラちんだって買いたい物があるかもしんないよ?」

 「……まぁ、納得な理由だな」


 琉璃は嘘は言っていない。だがしかし、それでも下心が無いと言ったら嘘になる。何故なら瑠璃は、早い時間に設定したのは長い時間をノラと共にしたかった為であった。

 それを悟らせないようにする為の咄嗟に出た言い訳である。


 「じ、じゃあノラちん行こっか!」

 「ん、了解」


 こうして琉璃とノラの初めての旅行が始まった。二泊三日の旅行だが、面倒そうなノラとは対極に、ウキウキ気分が抜けない琉璃なのであった。


 「(ノラ君と旅行ノラ君と旅行ノラ君と旅行……デートデートデートデート♪)」

 「(ふわぁ~あ、ねみぃ)」



 ◇◆◇◆◇◆◇◆◇


 アタシは今、重要な局面へと対面している。福引券で当たったのは実はハルちゃんで、偶然にもノラ君が暇そうだったからと提案されたこの温泉旅行。

 アタシもノラ君とデートがしたかったし、一緒に食べ歩きとか出来た事には嬉しく思っているし幸せな気持ちでいっぱいである。そこに文句も無いし、不満は一切無い。

 無いのだが、アタシは大事な事をすっかりと忘れていた。福引券っていう事は、勿論ペアチケットとなっている。そしてペアというのは本来、親友や恋人同士や夫婦に使われる単語だろう。

 だがこの場合は恋人がぴったりなのだが、その為に当然のように部屋はツインの部屋。そして宿泊旅館は元ホテルの物を改築したらしく、ベッドもダブル。つまり……めっちゃ近くで一緒に寝るという事態になるのだ!!

 これに乗じて既成事実を作れれば幸いだったのだが、そんな事が出来れば中学時代に告白していました。ええ、していましたとも。でも……――


 「……(ね、眠れるかこんなのっ!!!!!)」

 「……」


 すぐ隣には、恋心を向けるノラ君が寝ているというシチュエーション。普段ならば夢のように描いていたはずなのに、いざとなったらしり込みをしてしまうアタシ……西木野琉璃である。

 

 「(で、でも寝返りを打ったらすぐそこにノラ君の顔があると思ったら……ドキドキし過ぎて心臓が!!心臓が痛いよっ、病気だよ!!恋という病が加速しちゃうよっ!!!)」

 「……すぅ……すぅ……」

 「(寝てるし!!!何でこの状況で寝られるのさノラ君!?アタシ、これでも女の子だよ!?少しぐらい下心を抱いても良いんじゃないのかなぁ!?お触りしちゃったハプニングとかお風呂で裸でバッタリ遭遇が無かったんだから、この状況だったらえっちなハプニングを望んでも良いんじゃないかなぁ!?不能なのっ、男として心配するレベルだよノラ君っ!!)」


 隣で寝息を立てるノラ君を起こさないようにしながら、アタシは心の中でそんな事を叫ぶ。何処にも叫ぶ事が出来ない以上、心の中で発散し続けるのは仕方が無いだろう。

 だがこのままでは、緊張し過ぎて寝不足になる自信はMAXである。100%……いや、マジ〇ブ1000%で寝不足になる自信がある。

 そんな事を思っていたアタシだったが、彼が少し寝返りを打った瞬間に衝撃が走った。


 「んん……」

 「(手、手がこっちに……ていうか、今ならノラ君の寝顔が見放題なのでは!?ノラ君が完全に寝てる今なら、普段出来ない事が出来るのではないだろうか!?ア、アタシ天才!!こ、これは恋のキューピッドがアタシに『やれ』と告げている気がする)」


 そう思ったアタシは、緊張しながらも起こさないように寝返りを打った。するとそこには、予想以上に間近な距離でノラ君の顔がドアップとなっていた。もう少し寝返りを大きくしていたら、アタシからキスしてしまいそうになる程に。


 「(ちちちちち近いっ!!~~~~っ、ノラ君の顔が、こんな近くにっ!?)」


 恐らく今のアタシは、顔全体を真っ赤にしているのだろう。気の所為か、身体全体に血が巡っていると勘違いする程に熱い。頭が沸騰して、正常な思考を働かせる自信がもう無い。

 

 「……(それにしても、ノラ君の寝顔……思ってたより可愛い。まつ毛も少し長いし、近い所為でノラ君の匂いがする。この匂い、アタシ好きかも……何だろう、熱でもあるのかな。頭がボーっとして……)」

 「すぅ……すぅ……」

 「いつもありがとう。ノラ君……大好き。――ん」


 ◇◆◇◆◇◆◇◆◇


 ――チュンチュン……。


 「んん……朝?」


 ボーっとした意識のまま、アタシは目元をゴシゴシと指で擦った。だが隣を見てノラ君が居る事を思い出し、それと一緒に昨日の事を思い出して頭が沸騰した。


 「(あ、ああああああアタシ……何した!?アタシ何した!?いいいい勢いで、キ、キ、キ……キキキキス!!??アタシ、ノラ君にキキキスした!?)」

 「んあぁ……相変わらず朝早いな、琉璃」

 「うにゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁっっっ!!!!!!!!」


 ――パチーンッッ。


 ◇◆◇◆◇◆◇◆◇


 旅行最終日――帰りの電車の中。

 頬に真っ赤な紅葉を付けたノラは腕組みしながら、ムスッとした状態で座っていた。その隣で正座をする琉璃が居る事で、他の客からはシュールな光景となっているだろう。


 「琉璃よ」

 「はい」

 「どうして俺が怒っているか、分かるか?」

 「はい。アタシが殴ったからです」

 「そうだな。せっかくの旅行で羽を伸ばした最終日、まさか最後の最後で平手打ちが飛んで来るとは思わなかったなぁ。あ?」


 ニコッと笑みを浮かべるノラだったが、その笑みとは対象に黒いオーラがゴゴゴと音を立てているように琉璃には見えていた。そんな怒っているノラの顔を見て、気恥ずかしさと殴ってしまった罪悪感が混ざる琉璃は言った。


 「ごめんね?ノラ君。寝惚けてて、ノラ君と旅行してる事忘れちゃってて、つい」

 「ほぉ?お前は寝惚けて他人の頬を殴るのか。へぇ~、ふ~ん」

 「本当にごめんなさいでした」


 椅子の上で土下座だった。器用な土下座をする琉璃に対して、溜息混じりにノラは額を押さえながら言った。


 「はぁ……まぁ良いや。お前が変なのはいつも通りだしな、今更だろ」

 「えぇ~、それは酷いよぉ」

 「これでも譲歩して許したんだ。ほら、さっさと普通に座れ」

 「良いの?」

 「いつまでも正座じゃ、お前が辛いだろ。それに今回はお互い様だろ、次やったら容赦しねぇけどな」

 「しないしない!絶対にしません!」

 「じゃあこの話はもう終わりだ。さっさと弁当食おうぜ?帰るまで持たないぞ」

 「う、うん!」


 割り箸を割る直前、琉璃は昨日の夜の事を思い出した。


 「……(ノラ君、キスには気付いてないのかな?安心したような、残念なような……でも、変に気まずくなるのも嫌だし……良かったのかな?)あむ、ん、美味しい♪」


 弁当を食べる琉璃。食欲旺盛な部分もあるのかと思いながら、ノラは割り箸を割らずに頬杖をして片手で口を塞いでいた。隣に居る瑠璃にバレないようにしながら、心の中で呟くのであった。


 「(マジかマジかマジかマジか。琉璃の奴、あれってどう考えてもキスだよな?起きるタイミングしくって、偶然だったけど……それにこいつ)」

 『いつもありがとう。ノラ君……大好き』

 「(そう言ってやがったよな。……くそっ、まともに顔見れねぇ)」


 そんな事を考えているのであった。弁当を頬張りながらキスを思い出す琉璃と告白を思い出すノラ。彼女たちが付き合うのは、そう遠くないかもしれない。互いの気持ちを伝える日も……遠くない未来に。

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