B-EX レミとアミー
エレノラと喧嘩した次の日、目が覚めた私はエレノラを起こさず、そのまま朝食の準備に入る。そうしているとサイカが起きてきた。
「おはようございます。今日も打ち合わせですか?」
「ううん、今日は原稿直し。あっちで直した方が早いから。」
「そうですか。」
サイカと私の分をよそうと、ちょうど用意していた分がなくなった。
「あ……。」
「どったの?」
「いえ、何でもないです。」
ちょうどいい。エレノラには、私が必要だって思ってもらわないと。
ちょっと子供っぽいと思ったけど、よく考えたら私はまだ子供だし、これくらいは許されるはずだ。
結局私がアカデミアに出発する時間になってもエレノラは起きてこなかった。
家のお酒は飲んでなかったけど、そういえばロロさんのところで飲んだのかもしれない。
まったくもう。
*****
アカデミアでは、私の中にある魔力を使って誰かの実験や新しい魔術を試す助けをしている。知らなかったのだけど、新しい魔法や魔術を生み出すのには、大きな魔力を必要とすることも多いらしい。
といっても、たいていの人は私の
そのアミーも、なんだか今日は私を避けている。
「どうしたんですか、アミー。」
「いえ、なんていうか……何かあった?」
いけない。どうも態度に出てしまっているみたいだ。
「何でもありません。」
うーん、お仕事に影響を出しちゃだめだ。でも私だって頑張ってるのにエレノラもひどいと思う。
エレノラは何も知らないくせに。
結局、今日はそれぞれが本を読むくらいしかしなかった。私はあまり読書にも集中できなかったけど。
アミーもいつもは時々話しかけてきたけど、今日はずっと一人で本を読んでいた。
眉間に手を当てると皺が寄ってる。いけないいけない。ごしごしと手でこする。窓の外を見るともう日も高そうだ。お腹もすいてきている。時計のない生活にも慣れた。まあ、時計のない不便さを感じる前にって感じだったけど。
「そろそろいい時間ですし、ご飯にしましょう。」
立ち上がってのびをして、アミーを誘うと、アミーも黙って立ち上がった。
二人で食堂の方に向かうと、なんだか見覚えのある人影が奥に見えた。
「あれって……。」
「……席が埋まっちゃうから、早く食堂に行こう。」
アミーが手を引いてくるけど、やっぱり気になる。
「でも、」
「うわっ。」
と、これまた聞き覚えのある声が聞こえてきた。
つい駆け足になって、その声の元に向かってしまう。
「ちょっとレミ!」
聞こえた部屋を覗くと、そこにはエレノラがいた。
しゃがみ込んだまま後ろに倒れ込んだような、まるでのぞき見していたところに驚かされたみたいな。
「……何してるんですか、エレノラ?」
「え?」
こっちを見ると、なんだか冷や汗をかきだしたみたいな。
「あ、ああ。二人とも奇遇ね。」
なんだかにやついてるのが、また神経を逆なでする。
「どうして隠れたんですか?」
「え?いや隠れたっていうか、あの、そう!『
「ん?いや彼女はむぐっ。」
『
考えてみたら今私は怒ってるのだから、わざわざ隠れようとしてるエレノラを見つけに行かなくてもよかったじゃないか。
「……まあいいです。じゃあお邪魔しました。」
それで私はきびすを返して、また食堂に足を向けた。
少しして気付いたけど、アミーが着いてきてない。
「アミー!行きますよ!」
それでアミーが礼をしてこっちに来た。まったく。
*****
食事中も、なんとなくブツブツとつぶやいてしまう。というか、アミーに指摘されるまで気付かなかった。
「あのさ、レミって変わった?」
その言葉に、思った以上にドキッとした。
「……そんなに変わりましたか?」
アミーはこくりと頷く。
「なんというか、年相応な感じ。初めて会ったときはもっと子供っぽいというか、まるで迷子の子供みたいだった。」
迷子の子供……そうだったかもしれない。
「そういえばアミーには話してなかったかもしれませんけど、その時の私は記憶喪失だったんです。」
それで、私の受けていた仕打ちを説明する。『
そしてその時、『
アミーはしばらく言葉を失っていたようだけど、しばらくして口を開いた。
「ひどい……。」
私はゆっくりと頷いた。
「でもそれはもういいんです。ただ、そのせいで私には、私が旅をしていたという感覚がないんです。まるで、一人称の物語を聞いているみたいで。」
私じゃない私に話しかける人たち。そんなことに喜びを感じる私じゃない私。怖さはない。でも実感もない。
「だから、私の側にいる人たちが私と仲良くしてくれるのも、時々少し不思議に感じてしまうんです。」
本当は不思議なんてものじゃない。誰かと勘違いをしているんじゃないかというようにさえ感じてしまう。向けてもらえる笑顔が信じられなくなることだってある。
「レミ……。」
「エレノラも、いつか気付いちゃうんじゃないかって。私が私じゃないことに気付いて、それで私から離れちゃうんじゃないかって。」
ダメだ。言葉にすると平静でいられなくなる。まるで本当のことになるみたいに感じてしまう。
にじんでしまう視界の中で、アミーは少し悩んでいる風だった。
「……はっきり言っていい?」
前置きされると怖くなるけど、だからといって首を振っちゃったらずっとモヤモヤしっぱなしになってしまう。おそるおそる頷いてみると、アミーは軽く何度か頷いて、口を開いた。
「正直、今のレミの方が私にとっては付き合いやすい気がする。まあ機嫌悪いのはやめてほしいけど。」
ちょっと意外な言葉だった。前の私のことがあったから、今もこうして一緒にご飯を食べてくれてるのだと思っていたから。
「それじゃあ、前の私はどうだったんですか?」
「初めて会ったときのレミは……。なんというか、常に人の顔色うかがってるみたいな感じだったから。」
それはまさしくそうだったと思う。あの時の私は、誰からも嫌われないようにするのに必死だったから。
「でも、変わってないって思わせたいんだったら、さっきのは失敗だったんじゃない?それこそ、嫌われないようにする人の動きじゃないと思うけど。」
「う……。」
確かに。前の私だったら早々に謝ってるだろう。いや、そもそも今回の喧嘩もなかったか。
どうしよう。やっぱりもう気付かれてるんじゃ。……なんだか怖くなってきた。昨日のエレノラだって、いつものように私のことを心配してくれただけなのだろうし。
また泣きそうになってるのに気付かれたか、アミーがため息交じりにまた口を開いた。
「まあ、あの人……エレノラさんは大丈夫だと思うけど。正直、あの人そんな細かいこと気にしなさそう。」
「そう……ですかね。」
「そんなに気になるのなら直接聞いてみれば?」
正直に言えば、何度か聞こうと思ったことはある。
「でも、直接聞いても、たぶん大丈夫としか言わないと思います。エレノラ、優しいですから。」
「レミには、ね。」
そうかな……。結構他の人にも優しいと思うけど。でも、私にはというのを聞いて思いついた。
「あの、お願いがあるんですけど。」
アミーは不思議そうな顔をしたけど、そのうち察したのかものすごーくいやそうな顔をした。
「絶対いや!」
そこまで言っても結局やってくれるのは、アミーの優しさなんだろうな。
*****
イヤリングに魔方陣を書いてもらい、魔術を掛けてテストをする。
「聞こえますか?」
『……聞こえてる。』
うんうん、感度良好。
イヤリングにトランシーバーの役目を持たせるなんて、我ながらなかなかのアイデアだ。
イヤリングだったらアミーに聞こえる音を全部拾えるし、アミーにしか聞こえないようにボリュームを絞るのも難しくない。私の方はその辺の紙だから、ちょっと周りから見たら変な感じに見えるかもしれないけど、この街ではこういう変な人がいるのは日常茶飯事だ。
「そのイヤリング、大事なものですからなくさないでくださいね。」
『そこまで言うなら別のものを使ってよ!」
だって、急に思いついたから他に用意できなかったんだもん。
「本番は別のものを使いましょう。」
『……またやるんだ。』
「当たり前です!今日は単なるテストですから。」
受け答えも問題なし。あとは、どれくらい離れれるかを調べれば、今日の所はそれでよし、かな。
「それじゃあ、ちょっと離れて――」
『アミー。レミは一緒じゃないんだ。』
ドキリ。聞こえたのはエレノラの声。
『あ、』
「そのまま自然に!」
今ばれたら元も子もない。何とかアミーには……いや待てよ。
『エレノラさん。どうしたんですか、こんなところで。』
『いや、なんというか。散歩……かな。』
エレノラも偶然アミーを見つけたらしい。ついでに言えば、私のことには気付いてない。
どうせだったら、このまま作戦を決行してしまった方がいい。改めてエレノラを誘うとわざとらしさが出るかもしれないし。
離れても聞こえるかは不安だから、結構近づかないとだけど、ばれないようにするのはたぶんできる。サイカもよくやってることだ。
「アミー、このまま始めましょう。お代は後で払いますから、どこか落ち着けるようなお店に行ってください。」『――もりはあるんだけど……。』
アミーから漏れるため息。これは了承の合図だ。
『あの、少し時間ありますか?』
『え?まあ大丈夫だけど。』
よし、対象は釣れた。どうでもいいけどアミーって聖徳太子みたいに聞き分けできるんだ。すごいな。
アミー達について行きながら、簡単な認識阻害の魔法を自分に掛ける。あまり大きすぎると魔力が漏れてしまうから、加減が難しい。けど、こっちをちらちら見る人たちが減ってきてる。よしよし、このくらいかな。こういう時目立つ名前は便利だ。
アミーはうまく入口が見えにくい席を選んでくれた。流石。私もエレノラの視界に入らないように店の奥まで行って席に座る。
「お待たせしました。準備できました。」
二人の方を見ると、ちょうどコーヒー……じゃなくてカフェって言うんだっけ。コーヒーと何が違うか分からないけど、とにかくカフェが届いたみたいだ。
『うん、やっぱりここのはおいしいね。』
エレノラの声が聞こえると心臓の音が大きくなっていく。ほ、ほんとに隠れながらエレノラの本音が聞けるんだ。どうしよう、何を聞けばいいんだろう。
「あ、あの。私のこと、どう思ってるか聞いてみてください。」
……ものすごい抽象的な質問になってしまった。
『どういう意味で?』
逆に返されちゃった。
「どういう意味……?」
『どういう意味……?』
あ、それは言わなくていいのに。どうしよう。
『うーん……可愛いと思う。』
え。ちょ、ちょっとエレノラ。どういう顔で言ってるのかすごい気になる。というか、顔が熱い。
とにかく落ち着かないと。深呼吸深呼吸。
私の所にもカフェが届いたので口にする。……うん、頭の覚める苦さだ。
頭が冷えたところで、お砂糖を入れながら二人の会話にまた聞き耳を立てる。
『もしかしてレミに聞かれた?』
どきり。長年旅していたエレノラだから、なんだかんだ言ってカンはいいはず。ほんとはもう気付いてるんじゃないだろうか。
『いえ、そういうわけでは。』
アミーはなんとなくごまかしてるけど、いつまで持つかは分からない。
よし、もう本題をズバリと聞いてもらうしかない。
「そ、その、私が変わったことについて聞いてみてください!」
……ちょっと大きい声になっちゃったかな。でもとりあえず聞く分には問題なかったみたいだ。
『つまりですね、その、最近レミは変わったと思うんですけど。』
聞いた。聞いちゃった。どうしよう。なんて答えるんだろう。怖い。
わがままな子に変わっちゃったって、もうあんな子とは一緒にいられないなんて言われたらどうしよう。
ものすごい長い時間に感じられた少しの間のあと。
『それはまあ、アミーがどこまで知ってるかは分からないけど、最初にあったときは記憶をなくしてて――』
そっちかー。まあそっか。アミーにはそのことをさっき話したんだから、エレノラもそこから話さないとって思うよね。
『それは知ってます。』
『あ、そう。』
エレノラはうーんと唸って考えている様子。
『どうなんだろ。実際の所変わってない方が不思議ではあるんだけど……。』
欲しいのはその後の言葉。いや、欲しくないの、かもしれない。
でも、その次の言葉が出てこない。
「やっぱり言いにくいことのかな。」
不安になる。
「どうしよう……。どうしたらいいかな?」
普通に聞いちゃったけど、アミーは今答えられないんだった。
『やっぱり、そこですか。』
『え、何が?』
『レミが変わったのを気にしてるんじゃないんですか?』
「ああー!」
そんなズバッと聞くなんて!いや聞きたかったけど!聞きたくないというか!
でもその後のエレノラの言葉を聞き逃すわけには行かない。テーブルに広げた魔方陣に思い切り耳を付ける。
『まあ……うん。やっぱり前とは違うから、どういう反応を返してくるか……。』
うん、うん?
「え?どういうこと?いい意味?悪い意味?」」
どうしよう。エレノラの考えてる方向性が全然分からない。もっと詳しい話を聞かないと。
「えーっと、」
どういうことを聞かないといけないかが分からない。
いけない。早く何か言葉を出さないと。
「あの、あれです。あれを聞いてください。」
あー、言葉が出ない!
「あの、別人感というか、違和感というか、そういうのを聞いてください!」
『別人感とか、違和感とかは?』
『違和感?』
よし!聞けた!
『うーん……別人って言うのは、まあそうと言えばそうだと思うけど。というかむしろそうなってるのにこれまで通りの扱いしかしてなかったわけで、そこで嫌な思いさせちゃったんだと思うし……。』
……あれ?
「エレノラは嫌じゃない……?」
『別人だから嫌になるとかは?』
アミーはほんとにすごい。聞きたいことをズバリと聞いてくれる。
『え?いやいや。別にそれくらいで嫌いにならないというか。それに約束もあるし。』
『約束……?』
約束……。何のことだろう。
『そう。あの子が嫌になるまでは、私はずっとあの子の
思い出した。ちょうどこの街で、エレノラに怒られて、そうして許してもらったときにした約束。
あんな泣きじゃくる子どもをあやすための、方便みたいな言葉も、エレノラは大事にしてくれてるんだ。どうしよう。涙が出そう。
「ありがとうございます、アミー。」
アミーから大きなため息が聞こえる。ほんと申し訳ない。
……でも、本当に?約束があったから一緒にいるだけじゃないだろうか。エレノラは、なによりも約束を大事にする人だ。
だから、本当は嫌なんだけど一緒にいてくれるだけかもしれない。それに、嫌な人が相手でも上手に付き合う大人の余裕を、エレノラは持ってる。
「あの、アミー。もう一つだけ聞いて欲しいんですけど。約束がなくても、一緒にいてくれるかを聞いてもらってもいいですか?」
……反応がない。さっきまではすぐに質問してくれたのに。
「アミー?」
『そ、そういえばアカデミアに仕事を残して――』
『ねぇ、アミー。今度は私から聞きたいことがあるんだけど。』
急に慌てたような声を上げだした。どうしたんだろう。
「アミー?どうしたんですか?アミー?」
『ねぇレミ、聞こえてるんでしょう?』
……まるで表情が浮かび上がるような声。絶対目が笑っていないやつだよ。
このまま隠れていようか。いや、たぶんアミーが私のイヤリングをしていることに気付いたんだろう。それなら、ここをやり過ごしてもどうしようもない。
私は諦めて二人の前に出た。うう、どんな顔して出ればいいんだろう。
「こ、こんにちは、エレノラ。あの、奇遇ですね。」
つい口から出てきたけど、これ、ばればれってレベルじゃないよね。いや最初はほんとに奇遇だったんだけど。
と、とりあえず笑ってみよう。あははー、はあ。
~本編に続く~
*****
*****
ロロさんの結婚式の日の夜。エレノラが天井に映してくれた夜空をを、しばらくエレノラと一緒に眺めていた。
エレノラはやっぱりお酒を飲みながら。正直、お酒に良いイメージがないからあまり飲んでは欲しくないけど、まあ今日は仕方がないかな。それに、エレノラはあまり酔ったそぶりを見せないから、そこまで気にしなくてもいいのかもしれない。
空をじぃっと見ていると、動き月がゆっくりと動いてるのが分かる。ほんの少しずつ、ゆっくりと留まり月から離れていく。丸一日掛けて離れては近づいていく二つの月。今は一番近いときでも距離がある。でも、また半年経てばその距離はやがてなくなっていく、不思議な双子月。
「エレノラは、どうして私とずっと一緒にいてくれたんですか?」
空を見上げたまま、ついぽろりと言葉が出てしまった。言ってから後悔の念が押し寄せてきて、なんだか顔を下げられない。
しばらくまた静かになったと思ったら、やがてエレノラがぽつりと声を出した。
「正直、よく分かってないかも。はじめは、シンパシーとか、妹に似てるとか、そんな感じだったけど。今は、一生懸命な姿を見て、手伝いたいって思ってるから、かな。」
それからごまかすように笑ってたけど、でも真剣さが伝わってきた。
うん、それなら私は、今を一生懸命に生きよう。エレノラやサイカが、きっと今の私を支えてくれる。そう信じて。
「レミは?」
「はい?」
質問を返されると思ってなかったから、つい顔を下げてエレノラの方を見る。
「レミはどうして私と一緒にいてくれるのかなって。あ、答えにくかったら忘れて。」
エレノラは言いながら頭を掻いて、「やっぱちょっと酔ったかな」なんてつぶやいてる。
確かに、正直な話この世界に私の居場所はあまりない。身を寄せられるような知り合いは、アミーのほかには、どこにいるともしれないお師匠様くらい。
それに、エレノラもサイカもすごい魔女だ。きっと二人が助けの手を差し伸べて、断るような魔女はそういない。
でも、そういう話じゃない。もしもこの世界に両親がいたとしても。たとえエレノラにぐうたらなところがあっても。私はエレノラと一緒にいたい。だって。
「私は、エレノラが好き、だから。ですよ?」
いつもやりたいことをまっすぐ見ていて。どんなに難しいと思えることでも必ず突破口を探して。そうしてついにはやり遂げるかっこいい人。
周りで困ってたり悩んでる人がいたら、なんだかんだ言ってその解決を手伝う優しい人。
そういう人だから、エレノラのことをもっと見ていたいから、私はエレノラと一緒にいたい。
エレノラはちょっと面食らった顔をして、「そ、そっか」とだけ言って顔をそむけてしまった。
なんだかそれが可愛く思えて、ついついその顔を追いかけてしまう。
一周したところでエレノラがぶんぶん首を振った。
「あーもう!ほら、明日はお休みじゃないでしょ。そろそろ寝ましょう。」
そうして寝室に行こうとするエレノラ。恥ずかしがってるのを見てると、ついついいたずら心が湧き上がってきて、その手をぎゅっと握った。
「エレノラは?」
「え、な、なに?」
「エレノラは、私のこと好きですか?」
そう訊ねた途端、心臓がばくばく鳴り出した。これ、いたずらじゃ済まなくない?
エレノラはこっちをじぃっと見てたと思ったら、あーとか唸りながら顔をあちこちに動かして、また私の方に向いた。目が合って、どきりとする。
「うん。好きだよ。」
……今の私の顔、サイカには見せられない、かな。
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