7-5 戦いの準備 ―決意―
「終わりましたか。」
声をかけられて振り向くと、双子たちがこちらを向いていた。
「ええ。悪いわね。あなた達のご主人様は、私たちのものよ。」
「その様ですね。」
『
「あなた達、これからどうやって生きるの?」
「さあ?しかし、心配はご無用です。こんな場所でも生きられたのです。どこでも、生きることはできるでしょう。」
『
「それじゃ、そろそろ私たちは行くわ。」
「ええ、レミ様もお元気で。」
「あ、お待ちください。」
『
「違和感はございませんか。」
「えと、はい。すごいです。」
ちょっと触ってみても違和感がない。本当にそのまま戻ったみたいだ。この様子だと、『
「それでは、お呼び止めして申し訳ありませんでした。」
「はい。えと、また、会いましょう。」
「機会があれば、是非。」
別れの挨拶を済ませ、杖を出そうとしたが、そういえば杖は無くなってしまったんだった。代わりにフライニーを
レナを先に乗せ、私も後ろに乗る。そして、フライニーは空を飛んだ。
これでもう、私のやるべきことはただ一つ。『最強』と戦うことだけ。戦って、勝つ。勝てるかは分からないけど、それでも勝たなくちゃいけない。この子のためにも。
空を飛ぶ間、レナが話しかけてきた。
「そういえば、ズメウさんの、お名前は、どう、するんですか?」
「名前って……もうズメウって名前があるじゃない。レナは私にも名前を付けるつもり?」
「あ、そうでした。」
レナは前を向いたかと思うと、しばらくするとまたこっちに振り向いた。
「じゃあ、私のこと、レミって、呼んでください。これからは。」
そういえば、『レナ』って名前も本当の名前じゃなかったんだったな。
「でも、その名前でいいの?」
「それが、いいです。エレノラが、付けてくれた、から。」
レナは笑ってこっちを向く。なんだか照れてしまって視線をそらしてしまう。ついでに話題を変えよう。
「そういえば、レミの記憶ももうすぐ戻ってくるわね。」
私が『最強』に勝てば、だけど。
「はい。……サイカが、私の記憶、持ってて、良かったです。」
「どうして?」
「一緒になりました。私の旅と、エレノラの旅。戦う目的も。」
こっぱずかしくなってまた目をそむけそうになるが、我慢して今度はちゃんと笑い返した。
でもそうか。私が、じゃない。私達が、『最強』と戦うんだ。
あの魔法都市で出会った少女と。ちくりと、胸が痛む。
空を飛んで少し経った頃。意を決してレミに話しかける。
「レミは、レミは大丈夫?その……サイカと戦うって。」
レミにとっては、『最強』は、サイカは初めての友達だ。私は、ロロと戦えと言われたとして本気で戦えるかは分からない。冗談で言うことはあっても、それはあくまで冗談でしかない。
レミは振り返らないでしばらく黙り込んで、やがて口を開いた。
「本当は、戦わないなら、それがいいです。でも、たぶん、サイカが戦いたいって。」
そうかもしれない。レミの記憶を奪ったのは、レミの逃げ道を奪ったようにもみえる。
……レミが私の
私が黙っていると、レミは振り返って笑いかけてきた。
「それに、サイカは悪い子です。友達が、悪いなら、止めないとって。」
「……『って』って、誰かにそう聞いたの?」
「はい。ロロさんに。だから、エレノラを、働かせるんだって。」
……町一つを消し去ることに比べればかわいいものだと思うんだけど。というか、そんなになまけているように見えてたのか……?
複雑ではあったけど、レミがレミなりに戦う理由を見つけているならそれでいいか。
勝手な考えだと思うけど、やっぱり無理にこの子を戦わせたくはない。レミなりに思いやっての言い訳かもしれないけど、それでも私はこの子の言うことを信じよう。
「うん。それじゃあ、一緒に止めよう。」
「エレノラは、それでいいです?」
「私?いや、レミが戦うって決めたならそれでいいと思うけど。」
そう答えるとレミは首を振った。
「殺す、でなくて、止める、で。」
確かに、前にあった時には、たとえ差し違えてでも、殺すつもりだった。憎い気持ちは、いまもそれほどには変わらない。
でも結局のところ、私にその力はない。何かを決める、変えるためには、それに合った力がないといけない。ズメウに勝ってよく分かった。その力を持つのは、私じゃなくてレミだと。
勝つにせよ負けるにせよ、最後に『最強』の前に立っているのはレミになるだろう。
だから、私は私の変えられるところを変える。私が見たくないものを見ないで済むように。それくらいなら、私にだって出来る。
「エレノラ?」
「ううん、なんでもない。『最強』に戦って勝てたら、私はそれでいい。」
その先は、この子が決める。私は、それがなんであっても、レミを支え持つだけ。
レミの
*****
全ての駒が揃い、目的地ももう分かっている。
私たちの旅も、もうすぐ終わる。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます