第19話 ギルド【ハルペント】
水無月「お待たせしましたハーキスさん」
ハーキス「おぉ、来たか構わねぇよ…
…なんか疲れてんななんかあったのか?」
水無月「アハハ…気づきますか?
実は…」
こうして先程起こった出来事を話しながら
目的地へと歩いていく
客観的に見たら、ガタイのいい男性が
背が高く綺麗な「女性」と歩いているようにしか
見えないそうな
水無月はオシャレと言ったことにはとても疎く
このように女性の服を着せられても違和感なく
疑いもせずに着こなしてしまうのだ
彼の顔は中性的で少し可愛い顔をしている
そして未だに一人称がぶれるが
俺、と言っても私と言っても
声は女性よりなので俺っ子かとハーキスは思っていた
彼は眉目秀麗という言葉が似合ってしまうほど
綺麗に整った顔立ちの為、本来ならならず者たち
つまり冒険者という立場の彼らには
たまらない物なのだが、流石はトップギルドの団長
と言った具合で彼らの事を避けて通る人が
ほとんどだった
しかし、彼と同じようにトップギルドの団長である
メルトという人物だけが
真っ向から水無月に話しかけた
メルト「おぉ、ハーキスが女連れて歩いてるよ
女より冒険だ!なんて言ってたのになぁ、」
ハーキス「おいメルト、俺と同じ間違えをしてるぞ」
メルト「ぁ?間違えだって?
あれか、冒険より女になったのか
ハッハッハそれなら笑い話にして酒を飲みたいねぇ」
水無月「俺は男だ、それと水無月と言うよろしく」
そう告げたメルトの顔は普段の糸目を限界まで開いて
驚いていた、それほどまでに信じられないのだ
メルト「おいおいおい、俺のかみさんより
綺麗なのによぉ、男だってのかい
こいつは…驚いた…」
ハーキス「ハッハッハお前のその顔を見るのは
随分と久しぶりな気がするなメルト
あと、お前のかみさんだが
後ろで般若浮かべて腕を組んでるぞ」
メルト「……あー」
そのため息混じりの声と同時に
彼のいたはずの大地が消滅した、
その場所は半径2mほどで何故か踏み入ることが
出来ない
水無月「なるほど、ここだけが
亜空間のようなものになっていて
その中で夫婦喧嘩の真っ最中ということでしょうか」
ハーキス「流石はあんちゃん大方あってるよ
しかし一つだけ違うのは喧嘩じゃなくて
一方的な説教だけどな」
あいつのかみさんは怖ぇんだと
苦笑いを浮かべるハーキスさんは何処か
微笑ましそうにその空間を見詰めていた
その瞳は何処か悲しそうに懐かしむように
水無月「…あっ出てきましたね」
時間にして五分ほどだが
どうやら亜空間の方では何時間も経っているらしく
ぐったりしたメルトさんと
何処かスッキリした女性がいた
?「髪の毛はサラサラ、瞳は透き通るほどの綺麗
顔立ちは言わずもがな、
そしてそれを引き立てる服装
うん、これは私より綺麗だね、
いやぁごめんねメルトこれは私、完敗だわ」
と言いながら何処か品のある笑いを浮かべ
こちらを見てる女性
水無月「いえいえ、私なんかよりも
貴方の方が美しいですよ私は…」
そこまで言いかけて口を閉じられた
人差し指を唇に当てられただけなのに
それ以上喋るなという事だけはしっかり伝わってくる
?「こら、
自分を過小評価するのはいけないことですよ
おっと、まだ自己紹介をしてませんでしたね
イズドラ・メルトよろしくね水無月さん、」
水無月「メルトさんから聞いたんですね、
では改めまして水無月と申します
どうぞよろしく」
彼女から感じとれのは優しい木漏れ日のような雰囲気
それは全てを包み込んでくれる光で
それでいて覆いかぶさってくれる影のようで
とても不思議な人だ、先程の魔法をただの説教だけで
使えるほどに彼女は魔法の才があるのだろう
そして品のある立ち振る舞いを見ても
冒険者という役所のイメージが崩れていく
俺が知ってる冒険者はもっと荒くれ者の集まりだった
この世界ではそうでは無いのか、それとも
この人たちが特別なのか、
そこまで考えを辞めた
これは考えても仕方がないことだと
メルト「ここは、戻ってこれたのか…
軽率な発言は控えるべきだった…」
イズドラ「さてあなた、
帰ってからみっちりお話があるので帰りましょう」
メルト「嘘…」
イズドラ「ではまたお会いしましょう水無月さん
次はお茶でも」
そう言い残して去っていく彼女を見送ってから
水無月「行きますか」
ハーキス「そうだな」
その後たわいない話をしながら知識を深めていた
そんなこんなで約30分して
ギルド【ハルペント】のある北区に到着した
その大きさはこの街一らしく
あの王宮よりも大きいので貴族たちが
良い顔をしないとか
まぁそんなことは置いといて
ハーキス「ここが我ら【ハルペント】のハウスだ
どうだ?大きくて驚いただろう」
水無月「えぇ、これは圧巻ですね…」
その大きさに驚きを隠せない俺を後目に
何やら話をしているハーキスさん
受付のような場所で何やらもめているらしく
そちらに向かって欲しいとの事
その会話が終わった瞬間、
?「なんだよ!あいつが悪いんだろ!
そんなことも分からないのか!!
っけ、流石は【迷惑な付人】のギルドだぜ!」
そう言い放った瞬間に場の雰囲気はどす黒く変わった
あぁ、やはり殺気を浴びると
まだ高揚してしまう自分がいる
それは仕方の無いことだと思ってはいるが…
うぅん抑えるのが大変だ…
ハーキス「なんだぁ?呼んだかよおい」
荒くれ者「【迷惑な付人】…
てめぇのギルドはほんとに使い物にならんな
俺の方がよっぽどいい具合に使えそうだ」
その下卑たは笑いは見るに絶えず
あぁやはりこう言う輩もいるのかと確認して
少し懐かしんでいる所へ
凛とした雰囲気で刀を帯刀した女性が現れた
その女性は男を一瞥したあとハーキスさんの元へ
残り数メートルという所で立ち止まり
?「どういうことだハーキス
お前のギルドの売りは
争いごとのない受付では無いのか?」
ハーキス「酒にでも酔ってんだろあいつ
なんにも言うことを聞きゃしないんだよ
おっそうだ、なぁ水無月そこの荒くれ者を
鎮静させて見てくれよ、お前の実力をみたい
それと、殺すなよ」
そう言ったハーキスさんは何処か子供のようで
何やら期待をしている
そんなに期待をされても俺に出来ることなんて
限られてる、それにこの雰囲気で殺すなと言うのは
しんどいものがある
水無月「はぁ…分かりましたやりましょう」
昨日の疲れはもう無い、存分に力を出すと
この街がまた昨日のようなことになる
力を極限まで抑えて…
荒くれ者「おい!なめんじゃねぇよ!
こんな小娘ひとりに何ができるってんだ!
…まぁいい粉々に砕いてやる!」
自信満々に飛びかかってくる荒くれ者
その動きはまるで止まってるかのように遅く見える
突き出した拳を付け根から捻り
体の芯をずらしながら宙へと投げる
その大きく太った腹に軽く拳を当てた
それだけで泡を吹きながら外へと飛んでいく荒くれ者
その光景を見ていた面々は想像を絶するその動きに
賞賛の声をおくった
「すげぇぞ!嬢ちゃん」「可愛いのにやるわねぇ」
「なぁ嬢ちゃんこっちで飲もうぜ!」
などなど、こうも目立ってしまうとは、
ただの荒くれ者退治だそんなに珍しいものでもない
何故こんなに賞賛されるのか全く分からない
それに先程争いごとのない受付と言うのが 売り
と言っていたのだがこのバカ騒ぎは…
やはり根本は冒険者気質と言うやつだろうか
まぁ褒められるのは悪い気はしないと
なんだか暖かい気持ちになりながら
その賞賛に浸っていると
?「なんだ、なんだと言うのだ
君…いえ、貴方は
どこでその技を伝授されたのですか!
是非とも…ご教授願いたい!」
先程の凛とした女性がこちらに憧れの視線を
送ってきた
技と呼べるほどのものでは無いのにそんなに
驚く程のものだろうか
水無月「そんな、大層なものじゃありません
誰にでも出来ることですよ」
現に私のいた世界ではこんなのは子供でもできていた
この世界の力を一とするなら
あちらの世界は一千と差はあれど
教えられたら誰にでもできることだ
ハーキス「あんなのを誰にでも出来たら困る
俺の秘技と似たようなものだぞ
はぁ…やはりお前にはこのギルドに入って欲しいよ」
?「このギルドに入るのか?
いや、師匠はうちのギルドの団長になって
私達を導くのだそうですよね師匠!」
落ち着きをもった人だと思ったんだが訂正だ
この人もしっかりと冒険者であった
それに師匠ってなんだ、教えをとく人のことだろうか
水無月「師匠と呼ばれるいわれはありませんが
稽古はつけてあげましょう私は水無月
あなたは?」
?「あっ私はシリアと申します
それより!稽古をつけてくださるのですね!
ありがとうございます!」
ハーキス「おいおい、話がトントン拍子に
進みすぎだ…まぁいいか
さぁ皆に紹介しようか!
こいつが昨日の凶悪な殺気の正体にして
恐らくこの世界最強の御仁だ!
昨日の事件を解決したのも彼と彼の従者だそうだ
昨日のような暴走もないそうだから
気軽に接してやってくれ!」
凄い…
団長の顔とはああいうのだろうと分かってしまうほど
彼の顔は凛々しく自信に溢れていた
しかし…
水無月「そんな褒めないでくださいよ
俺は凄い人じゃあありませんから」
その言葉を聞き入れる人は誰もいなく
質問を初めとしたこの賑わいの中に
雲のように消えていった
彼と【ハルペント】の関係はこの先ずっと続いていき
その中で冒険者に可能性を見出す彼は
これからこの街を変える事変を起こしていく
しかしそれはまだ先のこと
今はこの質問攻めを回避する方法を見つけるのが
何よりも先決のようだった
狂人が目指すは優しい世界 白紙先生 @whiteteacher221
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
フォローしてこの作品の続きを読もう
ユーザー登録すれば作品や作者をフォローして、更新や新作情報を受け取れます。狂人が目指すは優しい世界の最新話を見逃さないよう今すぐカクヨムにユーザー登録しましょう。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
関連小説
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます