第17話 不安と期待と喪失感それは【あなたへの愛】

私たち神は元々地上へ出向こうともせず

ただ怠慢とすごしていた、

イーフと名付けた世界では、人間同士の争いを

ワーフと名付けた世界では、魔族や魔物と言った

怪物と人間の争いを行わせていった

そのため人間とは玩具の一つで、

さして重要度はなかった

このように世界を想像しては試練を与え

程よく楽しんでいた

しかしある時、スルトという世界が

破滅の危機に陥った

それは神の想像を遥かに超えるほどの力を持ち

生まれた【魔老王】により起こされた

そのものは神と同じように不老の民となり

人々を導いていった、そして王国を築き上げ

あろう事か神々へと反逆した

勿論たかだか人間に私達は負けはしないが

ある神が手傷を負わされた

その神は激昂しその世界を破滅へと導こうとした

だが、【魔老王】はそれさえも凌いでしまった

神への反逆、それを成し遂げた【魔老王】は

果てしない虚無感を味わう事になる

残ったのは荒廃しきった世界、

しかし死ぬ事の出来ない彼は永遠に

その大地に縛り付けられている

このような解決方法しか出来なかった我々は

次にこのようなことが怒らないように

【天使の十二条】を作りあげた

【一】

世界の創造を行うことは禁止する

【二】

世界の破滅を促す動き及び破壊を禁止する

【三】

現時点で確認されている世界に一人ずつ神々の配置を

義務付ける

【四】

他の世界への鑑賞を禁止する

【五】

「神の領域」への帰還は周期的に行い

無差別に帰還した場合これを罰する

【六】

管理下の世界が破滅の危機へ陥った場合のみ

原初の世界イーフから1人【勇者】を召喚しても

良いものとする

【七】

原初の世界イーフの民は我々でも手に負えないため

【勇者】が暴走した時に限り他世界への

応援を許可する

【八】

「神域の波動」の使用は最低限とし

死者の蘇生等を行った場合、これを罰する

【九】

神々での抗争、戦争、紛争を禁止し、

管理下の世界を第一とし、

これを反した場合これを罰する

【十】

原初の民イーフには恩恵として三つの能力を与え

その世界を救わせる、しかしその者の記憶や能力を

改変した場合、これを罰する

【十一】

「神の宴」を周期的に行い

現状の報告等を行うこと、これの参加には

招待状を送り、事情がありいけない場合は

伝書鳩による伝令を速やかに行うことを義務付ける

【十二】

これらの条約を反した場合の罰則は

天使への降格及び神格化の切符の排除となる


これらの条約により私達は地上へと降り立った

私が担当する世界、メドリアでは世界の危機に瀕し

彼の召喚を行い、深層の森を突破させ

機械都市メドリアへと導いた

大怪我をした時は焦ったが

それ以降はこれといって問題はなかった

しかしメドリアにつき、国王と呼ばれる役職の方との

謁見後に彼は倒れたのだ

私は嫌な予感がして背筋を冷たい汗が流れた

それでも、そんなのは勘違いだと言い聞かせ

自分を落ち着かせた

しかし、【魔人化】と呼ばれる

メドリア史上最悪の病にかかってしまった

瘴気に当てられ、自我を保てなくなる

そうして自分の限界を超えた力を出し

破壊の限りを尽くす、過去の事例としては

農夫が【魔人化】し、それを四大隊で討伐した

というものがある

ただの農夫でさえこれ程の力を有していたのに

彼が【魔人化】してしまったらどうしようもならない

ここで応援を呼び、彼をいち早く楽にするべきかと

普通はそうするのが1番なのだが

私はそれを出来ないでいた

強大な力と飲み込まれそうな闇、

そして失うことの無い綺麗な光を持つ彼に

私はどんどん惹かれていった

彼を想うと胸が痛いし、一緒にいると心が踊る

何千年と生きているが初めての出来事だった

その想いが私を迷わせる

こんなにも悲しいものなのかと、

彼のいない世界を想像出来なかった

それは私には耐えきれないから

だから信じて待ち続けていた

でも、彼は【魔人化】してしまった、

私が彼への栄養剤を取りに行っていた間の事だった

彼はこちらの世界に来てどんどん変わっていった

透き通るほどの綺麗な瞳に変化して行ったのだが

急いで駆けつけて、そこに居たのは

原初の世界の最大の敵として永遠に居続けた

【狂人】となっていた

その時の絶望は私をその場から動かせなくするのには

十分すぎるものだった

その場は一瞬の静寂の後に

大きな破裂音を発生させた

時間にすると一分にも満たないほどの時間で

【狂人】としての彼は姿を消した、

誰がやったとか、どうやってやったという疑問よりも

私は彼の安否が気になって仕方がなかった

痛む胸を押さえつけ、彼の元へと駆けつける、

街が修復され活気が戻った市場を見向きもせずに

ただ彼の元へと走った

彼は屋上で一人のパペットといた、

その瞳は透き通るほどの綺麗な瞳だった、

その時の安堵感はきっと忘れられないだろう

そして私はこの時に気づく、

この胸の痛みは 愛 なのだと、

そう考えが至った瞬間彼への想いを

抑えきれなくなった

アリシエ「水無月!」

私は水無月に抱き着き安堵の声と共に涙を流した

アリシエ「心配しました…

本当に…本当に良かった…」

水無月「心配をかけてすまないな…

俺はもう大丈夫だから…さ

離してくれないかな…少し苦しいよ」

アリシエ「心配をかけた罰です…でも…」

私は彼への想いを伝えれない

それは神だからとかそういう訳では無い

ただ彼はそういう関係を望んではいないから

私は彼が幸せならそれで満足できる

それこそ慈愛に満ちた神様ってもんだからね

アリシエ「いいえ…おかえりなさい水無月、

そしてはじまして、本当の貴方」

彼の本性…と言うよりも全てを割り切った彼は

恐らくこの世の中で最も綺麗で歪んだ瞳をしていた


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はい!という訳で第1章おしまい!

ここからが本番ですよー

今度こそ【勇者】として彼が立ち上がる!

少し短めですが、ご勘弁を〜

では、第17話

楽しんで頂けたら幸いです

それではまた次のお話でsee you 〜








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