第16話 壊れ果てた人形は狂った人を救済する


この呪詛は心を蝕む

その呪詛が描くイメージは鮮明に頭に浮かぶ

信じていた私が見る幻想と

所詮はただの殺人鬼と裏切られるだろうと

冷めきった私が知る現実

こちらの世界へ来た際にかけられた

死者たちの許しの声や「女神」の慈悲の笑顔

「国王」からの賞賛の声と言ったイメージ

信頼を寄せられても、賞賛の声をかけられても

結局は壊すことしか出来ない私を彼女達は

それでも優しく迎え入れてくれるそんな幻想


死への恐怖と言った澱み切ったイメージ

憎悪と言った悪感情、信頼も賞賛もない

その侮蔑の声を余すことなくぶつけてくる

彼女達という現実


この二択を選ぶのは彼女達だが

それでも圧倒的に後者が強いと己で決めつけて

またしても理性の私を心へと閉じ込めていく

それは無意識下での出来事

本来ならば心というものを知らない彼は

その開け方も閉め方も分からないのだ

故にもう出てくることは不可能

よって、彼がとった行動は

水無…【狂人】「呪詛…か

愚かしい、そんなものが効くとでも、

壊れかけの人形風情が笑わせる

同情はせん、恨むなら生まれてきた自分を恨め

結局お前には価値はない

ただ汚い人間に利用された滑稽な物なんだよ」

ニース「ハッ、なんなんだよあんた

それは人間が出せるもんじゃないだろうに

全く…その強大すぎる力に当てられたかね…

おっとっと待ってくれよ

あたしを攻撃するのはよしてくれ

ひとつ話をしようじゃないか

私には、あんたがとても辛そうに見えるね

何を悩んでいるのか知らないけど

その澱みはきっとあんたをもっと辛くするだろうね

だから今のうちに決着をつけるべきだと思うよ」

【狂人】「俺が澱んでいるなんて当たり前だろう

それに、壊れかけの人形に心配されるほど

落ちぶれちゃいないし、この痛みや苦しみは

自分への業だ……話は終わりだ壊してやるよ」

ニース「あたしは壊れないよ、何があっても蘇る

これがさっきの呪詛の効果なんだよ、

あんたっていう操る人と

あたしっていう操られる人形

それを確立したのがさっきの

【デミトリア・ランドルフ】なんだ

おっとっと怖い怖い…

だからあたしは永遠に壊れないし

あんたの元を離れない

仲間がどうたらもあたしの妄想だったし

あんたの本当の支えにしてくれよ

まぁ嫌って言ってもついてくけど」

そう言っている彼女にはいつの間にか脚があり

澄んだ瞳に花を咲かせこちらを見ている

この子は嘘を言ってなどいない、だが

【狂人】「俺はもう優しくなれない

さっきまでが嘘のようにそう言われても

信じることは出来ない」

俺はもう壊れたのだ、いや元に戻ったと言うべきか

俺に出来るのは壊すだけ

【勇者】なんてものは俺には無理だ

ニース「あんたに心臓部を抉られた時

あんたの…

いや水無月の記憶全てが流れ込んできたんだよ

水無月はあたしなんかよりもよっぽど辛くて暗くて

まるで地獄…いやそれ以上の人生だったんだね

水無月を初めて知ったのはもう随分前だけど

今初めて水無月を本当の意味で理解したよ

あんたは優しすぎるんだ

その優しさは今も尚続いてるよ」

【狂人】「俺は…そんなことは無い

本当に…壊れてて、裏切ることしかできないんだ

だから、こんなことになってるんだ

街は壊れ、人はたくさん死んでる

ほら、これをやったのは全部俺だ

だから、俺はそんな期待を置かれるほど立派でも

優しくもないんだよ、わかってくれ」

レミ「あぁ、確かにな、水無月君は優しいよ、

でもねこれは国王として見逃せない

いくら君がやりたくてやったんじゃなくてもね

おっと先ず聞くのは、君がこれをやったんだろう?

だったね」

【狂人】「!やぁ…国王、俺を壊しに来たのか?

ならチャンスだ、今のうちに壊しておけ

もう、俺には何も出来ない」

レミ「…別に壊したりしないよ

私はね、ただ聞きたいことがあってここに来たの

私達はまだ会って10分もしてないけど

貴方の優しさを感じただから聞きたかった

貴方はこの惨劇を見てどう思うってね

でも答えはもう出てる…

貴方のその辛そうな顔を見ると

こっちまで辛くなるわ」

【狂人】「私は…そんなに酷い顔をしているのか?」

レミ「そりゃ、もうぐちゃぐちゃよ」

ニース「あぁ、そこの人が言う通り

とっても辛そうだ

とてもさっきまでの雰囲気を出してた野郎とは

思えないほどにね」

【狂人】「…どうやらニース、

お前の呪詛が思ったより効いてるみたいだよ

そうか…この込み上げてくるのが悲しみなのか

これは…確かに涙が出てくるな…

辛い、痛い、あぁ、どうすればいいんだろうか」

ニース「どうだい?壊れた人形もやるだろ?

だけどこの呪詛を形にしたのは

他でもないあんたなんだよ」

レミ「そうね、貴方から感じる呪詛は

とても呪いとは言えないわね」

水無月「あぁ…そうか…そうなのか…」

俺が殺してしまった死者達は言った

君は可哀想だと

俺がこの手で葬った【朋】は

きっと俺に何かを期待していた

焔というお転婆な少女は

私に強さを見いだし、私を目標にしてくれた

ニースという人形は私と言う大きな過ちを

結果的に治そうとしてくれた

レミという国王は私と言う小さな青年の心を

何処か達観した瞳で見つけてくれた

そして、アリシエという女神は

私と言う存在を丸ごと包み込んでくれた

そんな人達に囲まれていて

優しさというものに気づけないほど

私も壊れてはいなかった

この優しさに溺れる訳にもいかないから

私は恩返しをしようと思う

だから


水無月「私はまだ人として未完成だし

やっぱり壊すという快楽を忘れられないと思う

だけど、救うこともやっていこうと今思えたんだ

だからさ、私…いや俺の第1歩として

この街を、市民を、元通りにしたいんだ」


そう言って彼は準備を始めることにする

イメージするのは「時の歯車」

その膨大すぎるイメージ空間で彼は時を掴んだ

そして思いっきり引き戻す、

すると壊れていた街は何も無かったようにそこにあり

怪我をした、死んでしまった人達は

それこそ、いつも通りに生活をする


そう、彼は時を戻したのだ


…とてつもない倦怠感と吐き気に襲われながら

何とか成功したようだ

水無月「これで、元通りになった

ニース、お前のおかげでこうして正気になれた

ありがとう…」

ニース「なーに、最初は殺す気で来てたんだ

礼なんて言われたらむず痒いよ」

レミ「な、何が起きたの?」

流石に時を戻すという自称を初めて見たようで

レミは混乱していた

水無月「時間を戻したんだ、

俺が魔神化する前の時間に

で、魔神化する未来は消し去って

俺たちは無事、この国も無事、

まぁこんなところで許してくれ、

これ以上はさすがに無理だからさ」

レミ「……驚いた…

流石にそんなことができるとは思わなかったわ

あっ、でもなんで私達は忘れてないの?

それにアリシエ様は?」

水無月「アリシエも記憶はそのままだよ

これは1つのパラレルワールドを見せるような感じ

世界線Aと世界線Bを入れ替えたような、

口で説明するの難しいな…まぁはっきりは言えない

ただ連発は出来ないし、下手をすると

この世界の理まで壊しかねないから

できる限りしないことにするよ」

レミ「えぇ、まぁそうね

そうした方がいいわ、でもどうしましょ、

魔神化の危機も去ったし街も平和

やることが無くなったわね

…今まで通りに研究を進めることにしようかしらね

じゃあ、こんなことがないように

気をつけるんだよ」

ニース「私はもう正気に戻ったし

呪詛の効果であんたと離れれないから

どこまでも一緒にいくよ水無月」

水無月「あぁ、これからよろしく頼むニース」


かくして、彼の魔神化を阻止できたのであった

だが、まだ解決していない問題があることを

忘れているだろう、

そう

アリシエ「水無月!」

寂しがりの女神様は自分に正直になった



おまけ

焔「ハッ!

…あれ?なんで私こんなとこにいるんすかね

おかしいっすね、国王との謁見後に

水無月さん達と奴隷市場を回る予定で待機

してたはずなんすけど…あれぇ?」

時を戻され、その時の記憶が無い彼女は困惑していた


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はい作者です

シリアス展開になって

魔王ルートになると思ったそこの君!

残念!

ちゃんと勇者を目指します

なんだがご都合主義がたくさんで、文章力皆無な

気がしますが

まだまだこれから進化していきますので

乞うご期待!

あっ能力説明

時を止める能力←名前はまだない

時の歯車を止め、それを戻すことにより

時が戻る

進めることや止めた世界で動くことは出来ないが

チート級の能力

指定した人の位置や場所、状態なんかを

事細かに設定できるが

今の水無月は完全には使えていない

だから記憶だけ飛んだ焔ちゃんがいたんですね

とまぁそんな感じですねぇ

分からなかったり

説明が欲しかったりなんかある方は

ぜひぜひコメントお願いします

そんなこんなで第16話

楽しんでいかれたら幸いです

ではまた次回!

バイバイ(ヾ(´・ω・`)





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