第15話 遡る運命の行く末は…
さぁ…誰が来る
誰が私という【敵】を殺しにくる
楽しみかと聞かれると
歪んだ笑みで、勿論と答えよう
それほどまでに昂るこの心を抑えることもせず
ただ私を討ち滅ぼすものを待っていた…
狂人としてでは無く上原水無月という人間を
討ち滅ぼさんと集結する彼女たちは
後に後悔することになる
ここにいるのは、ただの殺意の塊なのである
情けはないが優しさはあったはずの彼
これまで立ち向かって行ったもの達を
生きて帰すことはしなかった彼
善人も悪人も等しく殺す
だが、その生涯で子供を手に掛けることは無かった
母の温もりだけが彼の中での唯一の優しさであった為
子供だけはと理性の彼が働いていた
しかし、そんな理性の彼はいなくなった
ただただ純粋に
殺戮を楽しむ本能という彼に支配されたことで
上原水無月という人間は
元々【狂人】としての彼がいた場所で
静かに目を閉じる
まるで諦めたかのように
狂人「……かつてないほどに
私の心は落ち着いている
それ以上に高揚感を隠せない
感情を学んで人間になろうとしていた私は
きっと愚かであったのだろうな
…あぁ、限界だ
どうか私を、俺を、壊してくれ」
大粒の血液が白いベットに溶け込んでいった
?「あぁ、あぁ、あぁ、やっと…やっと見つけた
スゥ…これより最終任務に取り掛かります
我が名はニース…
この身体を捧げ、悪鬼羅刹を討ち滅ぼしましょう
さぁ…決別の時だ【狂人】」
これはこれは、殺意と憎悪に満ちたいい眼だ…
私と言う鍵を見つけた君という扉は
一気に開いた、
それは殺しの才能か、復讐の才能か、
どちらにしても君は堕ちていく
そうだな…では手伝ってやろうか
水無月「ニースと言ったなら
お前は何を悔しんでいる、何を恨んでいる
何を壊したいと願う」
ニース「分かりきったことを…
無論、貴様に決まっているだろうが!【狂人】!
貴様に潰されていった…仲間の仇を今!」
水無月「仲間?仲間といったか…
ハッ…甘いな…甘すぎる、知っているか?
その甘さは人を自己暗示の世界へと引きずる甘さだ、
仲間を守って死んで言ったヤツらは
皆総じて最後には後悔の念を残していった
最後には自己暗示の世界が壊れるからだ
だからお前らのような奴は復讐を果たしたとしても
時と共に朽ち果てる
それでもそんな意味もないことに
命を賭すと言うのなら…かかってこい、壊してやる」
…澱みなく透き通る殺意をぶつけられ
それを澱んで濁りきった殺意で返す
あぁ、あぁ、あぁ、久しぶりの感覚だ
全身が軋む…速く壊せと心が呻く
さぁ、開戦だ
その後は一瞬だった
私は今確かに【狂人】を見ていた
だが次の瞬間、視界が霞がかった
もう一度【狂人】を捉えようとするが
見当たらな…っ……!?
全身を駆け巡る得体の知れない快感と、恐怖、
それを感じたと思ったら次は喪失感を感じた、
ドク、ドク、ドク…
18年間使い続けてきたその足は私の元を離れ
地面に横たわっていた、
足という支えを無くした私は重力に従い
地面へと叩きつけられる
ドク、ドク、ドク…
血が流れる…痛い、痛い、痛い!体が冷たくなる、
叫ぶことが出来たらどれだけ楽だろうか…
声も出ないほどの痛み、
骨盤からごっそりと持っていかれた私の体は
血と内蔵が出ていて、血の池と臓物の植林が
そこには出来ていた
それを見た私は…
狂ってしまった…仲間のためにここまで生きてきた
騙して、殺して、逃げる、そんな生活を続け
やっと掴んだチャンスは
時間にして10秒にも満たずに打ち砕かれた
強い弱いの話ではない
次元が違ったのだ…
でも…諦めたくない…
私達の幸せを奪ったあの【狂人】に
一矢報いてやらねばならない…
お前にも絶望を与えてやる…
私の心臓に埋め込んである魔力の塊を暴走させる
オートマタとしての体になっていた私だからできる
復讐劇
…今まで生きていても意味がなかった
だが、ここに私と言う存在を確立する
アドニス…ヘンドラー…ルームドルト…
私も今そっちに行くよ…
ギギギッ
水無月「……ハッつまらん…」
グシャ…
水無月「ニース…ねぇ、
どこの誰かも分からないし興味もないが
いい眼だったのになぁ…
それに形容しがたい何かを感じたんだが…
いや、考えるだけ無駄かな
あ?こいつ人間じゃない…のか?
肉じゃないもので出来てやがる…
あぁ…足りない…もっと喰いたいよ」
復讐を成し遂げれずただただ殺された彼女の名は
ニース、
生前彼女が受けたのは人間としての扱いではなかった
改造、調教、実験、
それを繰り返す毎日に次第に狂っていった彼女は
前世と呼ばれる記憶を蘇らせた
そこに映っていたのはありえないほどの死体の上に
ただ立ち尽くし瞳から血を流しながらしながら笑う
青年
ここで曲解してしまった
彼のことを自由だと思ってしまったニースは
架空の人物を作り出しそれを殺されたという物語を
作り上げた
それは次第に大きくなっていった
そして限界が訪れた
使い捨てられ、奴隷として市場に流された彼女は
やっと見つけることが出来た
自由な彼を…【狂人】を
狂っても人のままで生きている彼と
人形として狂ってしまった彼女
そんなふたりを結びつけるのは糸か鎖か、
無論それは糸であった、
かつての【狂人】のように彼女は市場を一掃した
辺りは赤く染まり、彼女の目には花が咲いた
ありえない身体能力で目的の彼まで迫る
やっと、やっと、やっと、
真実として確立できると、彼女は喜びを隠せなかった
そして出会った【狂人】に出会ってしまった
それは彼女の物語を最終章へと迎えさせた
彼のところまで登り詰め、戦闘を始めた…のだが
それは戦闘なんて言えないほど一瞬で終わった
技なんてない
ただ圧倒的な存在の前に打ち砕かれた
そして彼女はフィナーレを飾るために
自爆の道を選んだが それも止められてしまった
さて、狂ったものたちの晩餐会は
いつまで続くのだろうか
方や人、方や人形としての狂った参加者は
物語をさらに加速させて行った
ニース「【血潮流れるその世界】」
そう彼女はただ殺されただけだ、
壊されてなんかいない、
ニース「【その不変の大地を狂うと笑うば】」
心臓部がなければその部分を使わなければいいだけ
脚がなければ、地べたを這いずってでも
たとえ塵になろうとも還ってきて見せよう
ニース「【我逝くことなかれと唱うと知れ】」
私に死という概念は存在しないのだから
ニース「【自由な彼と束縛されし私が贈る】」
何処までも自由なはずの彼と
何時までも束縛されるはずの私
ニース「【永遠の舞踏会をここに開こう】」
さぁ、踊り続けようじゃないか【狂人】
私が生まれた意味は、作られた意味は
きっとこのためなのだから
ニース「【デミトリア・ランドルフ】」
それは魔法のように詠唱を綴る呪詛
その綴られた唄は何処か澱んでいて狂っていて
それでも確かに聞こえてくる唄
狂った人形が狂った人へと送る
死への招待状
そんな歌を聴いた彼は
迷わずその呪詛を喰らうであろう
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