第4話 人は君のことを狂人と言った
これは夢であろう
そう確信できるほどに不思議なものだった
恐らくは前世の記憶と言うものであろう
もう嫌という程見てきた血と臓物の世界
それをまた見ることになるのかと憂鬱になっていった
そこはまるで地獄であった
泣き叫ぶ子供、のたうち回る男、潰れかけの女
半身ドロドロの肉体
吐き気がした
悪寒がした
恐怖してしまった
この惨劇を見て
確かに心を痛めた
しかし、
見苦しい、汚らしい、
とも思ってしまったのだ
この気持ちは…きっと…人間としては
仕方ないのかもしれない
不意に横を見ると、
お腹に爆弾を抱え必死に叫ぶ
母親らしき人、
その人は赤子を抱えていた
なんだろうか、違和感を感じる
私ではない何かが流れ込んでくるような…
そんな感じがする
そんな思考の渦の中でも
時間は進んでいく、
きっと居場所がなかったのだろう
引き取ってくれと、この子だけはと、
叫ぶ、嘆く、
そんな母親を憐れむ目はあれど
その言葉に耳を貸すものはいない
母親の顔は
段々と青白くなっていく
爆弾のカウントダウンか何かだろう
ピッピッピッピッとこちらまで聞こえてくる
最後に母親は言葉にならない雄叫びを上げた
自爆
下手に撃てば起爆することが分かっていたのか
敵兵は最後まで撃たなかった
いやきっと撃てなかったのだろう
敵兵だって人間である
残虐非道の限りを尽くしてきた訳では無い
普通の人間だ、そんな彼らが
泣き叫ぶ母親を打てるだろうか
…無理だろう
爆風を背に受けた彼らは
各々生きて帰ると誓ったであろう
しかしそんな願いは儚く消える
咀嚼音が聞こえるのだ
その音が聞こえる方を見た
そこにそれはいた
母親と共にいたはずの赤子だ
そう、跡形もなくなっている
【はずだった】
赤子だ
赤子、と言うには酷く醜いものであったが
本能が伝えてくる
あれは【私】だと
不思議と違和感はない
むしろ清々しい気分である、
あぁ、やはり私は壊れていたのだろう
生まれてしまった時から
敵兵は恐怖に顔を染め
私に攻撃をしかけてきた
しかしかすり傷ひとつ付けられない
私は敵兵なんかよりも
【空腹】を満たすために死体をくらった
必死に食事をしている私に対して
異常事態と大声で叫ぶ隊長らしき人物
私は必死に食事をしている手を止め敵兵を睨みつける
その口元には赤黒い何かがべっとりとついていた
そして先程より一回り大きくなっていた
危険信号をフルで作動させたであろう
敵兵は一斉に私から背を向け走り出した
赤黒く染った私の口は弧を描いた
そして一言
イ タ ダ キ マ ス
その後に残っていたもの、立っていたものは
少し何かが付着した人骨らしき何かと、
内臓のような物体、
そして狂気に顔を歪ませ次の獲物を探していた
【私】だけであった
そこで夢の映像は消え
真っ暗の中に今の私がいる
…懐かしい私の過去…
狂人、化け物、殺戮者
そんな呼び名で呼ばれていた私だ
なぜ転生したのかはわからない、が、
だがこうして二度目の人生を送っている、
…ならば…
私は、前世のような事を繰り返してはならない
たとえ狂っていようとも、
私はきっと償わなければならない
他でもない殺してしまった彼らのために
だから
彼らの分だけ生きようと
彼らの分だけ強くなろうと
彼らは私にそんなことをして欲しくはないだろう
むしろ早く死んで欲しいと思うかもしれない
だけどこれだけは譲れない
これは私の我儘だ
憎悪の感情を向けられるだけのことはした
してしまったのだ
生まれた時から罪人であった私が
罪を背負い 業に生き 殺戮を繰り返した狂人が
みなを救う勇者になるそうだ、
心などない、ただ殺すことしか考えていなかった
愚鈍な物であった私も
狡猾な人へとなれるだろうか
いやなって見せるのだこれは儚い夢だろうか、
もろく淡い希望だろうか、
そうだとしても掴み取ってみせる
どこかで微笑む声が聞こえた…
私の意識は覚醒していった
起きたのだと気づいたすぐ後に
水無月「…っ」
その頬に涙が流れていたことに気がついた
その涙は
狂人から出たものとは思えないほど 優しかった
結局彼が辿る道は茨しかなかった
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はい、割とシリアスな展開になりましたね、
水無月は前世と向き合い
前を向いて歩きだしました
私も頑張らなくては!
よぉし
課題しよ…
という訳で!
第4話!
読んでいただきありがとうございます!
ではでは次回もー
おっ楽しみに!
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