第3話少年の行きつく先は・・・
一月七日・・・私立水沢学園
朝から教師の声というものは、どうしてもやる気がそがれる。
「今日から新学期だ。気を抜かないようになぁ~宿題出してないやつは明日必ず持ってくるように~」
どれだけ学業成績を伸ばしても、FPSの時間は伸ばせない。
先生にそう言われたのは半年前のことだった。学業成績の低下が原因で取り組まれた物なのに、全くもって笑ってしまう。
国が決めた事にはあらがえない。
それは紛れもない事実だった。
「新学期で盛り上がるのは分かるが、いったん静かにしてくれー・・・えー今日からこのクラスで新しく皆と勉強する仲間が増えます。まぁ~俗にいう転校生っていうやつだ。みんな仲良くしてくれよぉ~」
大きな扉からゆっくりと入ってきた転校生は、チビで髪はボサボサで、今にでも喧嘩が始まるのではないかという鋭い目をしていた。
「東京から来ました・・・頂点龍雅です・・・宜しく」
「えー・・・と龍雅君は趣味とかあるのかな?」
「ないっす」
「好きな食べ物とか・・・」
「いや、特にないっす」
「まぁ・・・まだ緊張しているのかな!?んなわけでみんな仲良くなぁーじゃあ・・・龍雅君はあそこにいる英太君の隣の席に座ってくれるかな?」
転校生の龍雅は、俺の隣の席にため息をつきながらゆっくりと座って俺に手を差し伸べてこういった。
「宜しく」
「ん?あぁ・・・英太って呼んでくれ宜しくな。自分から話してくれるんだな(笑)」
手を差し伸べてきた龍雅の手首はアザだらけだった。
「いや、あいさつは基本だろ」
「お前・・・面白いやつだな!(笑)そうだな!わりぃな」
「あぁ?」
こうして、暗いのか明るいのかよくわからない転校生との学校生活が始まった。
△△△
「みんなすまん。次の四時間目の授業は数学の先生が体調不良で急遽休んだため、技術の授業になった。みんなパソコン室に行くようにー」
俺が唯一好きな授業・・・技術。
PCに触れるからだ。授業の前は、みんな早めに教室に座ってタイピングのテストや、ちょっとしたネットサーフィン、各々と皆好きなことをやっている。実に最高だ。
「おい龍雅、お前も一緒に行こうぜ、遊びたいだろ?」
「いや、まぁ別に遊ばなくてもいいんだけど・・・場所がわからないからついてくわ」
教室に着いたらやることはただ一つ。
俺の日課FPSゲームだ。といっても・・・子供用の画面に出てくる動くキャラクターをクリックしてお友達になるという単純なゲームだ。
FPSでは敵に標準を合わせる能力、いわゆるエイム力というものが求められる。
俺はその感覚をあらゆることを利用して忘れないようにしているわけだ。
「龍雅はゲームしないのか?」
「いっただろ、別に遊ばなくてもいいって」
「じゃあさっきから何いじってんだ?」
「何って、本体設定だけど・・・マウスの感度が遅すぎるから調整してるんだよ、お前こそ何やってんだよそれ・・・動物とお友達になって楽しいのか・・・?」
「お前じゃなくて英太!楽しいに決まってるだろー?これでエイム力をバキバキに鍛えてんだよ、龍雅知らねーの?FPSだぜ?」
「うーん・・・英太の言っているFPSっていう言葉は『ファースト・パーソン・シューター』の略で簡単に言うと、素手や武器で戦う一人称アクションゲームのことだ・・・まぁ・・・一人称で敵?・・・を狙ってはいるが・・・」
「細かいことはいいんだよ!(笑)俺にとっちゃぁ狙ってクリックできれば全部FPSだ!」
こいつめちゃくちゃだ・・・
「ん?そういや、やけに詳しいんだな龍雅」
「あ・・・あぁまぁちょっとテレビで見たんだ!英太もゲームが本当に好きなんだな!」
「好きだよ・・・下手の横好きだけどな・・・俺にとっちゃぁ大事な時間なんだ、一時間が一時間40分になるっていうことはさ」
間違いなく英太はFPSが好きだ。
そう感じながらも元プロゲーマー龍雅は、英太がゲームを嫌いになる姿を想像してしまう。
世の中には好きと嫌いの他にもう一つ・・・
やらなければいけないことが存在しているからだ。
ヴァイオレンス香川 渡邊SUN屍 @NagickG
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