12月20にち
昨日は久しぶりに日記を書くのを忘れた。忘れたということにしておこう。
タイトルに「はつか」と入力すべきところを「20にち」と打ち込んでしまった。おのれの頭の悪さと語彙の貧困さに愕然、困惑、噴飯。バカに罰を与える為そのまま晒しておく。決してネズミで実験した頭の良くなる薬が切れてきたせいではない。
12月20日、日曜日。晴れ。
完全に薬を呑ますことができなくなった。あの手この手を試してみたがどれも効果はなくお手上げである。母は基本的に傾眠状態、もしくは昏睡にあるので口の中に放り込めばいいというものではない。気管に入ってしまう。
水分も栄養の補給もできない。低血糖を起こしていたとしてもブドウ糖を舐められない。できることといえば痰を取るくらい。家では完全にできることがなくなった。
さてどうするか。
最も良いのは、このまま発作が起きず、安らかに眠るように逝ってもらうことだ。だが恐らくそうはならないだろう。何しろてんかん防止の薬を飲めないのだ。どんなタイミングで起きるかはわからないし、起きたらまた緊急搬送することになる。
もしくはその前に入院させるかだ。病院なら栄養の補給を点滴で補うことができる。だが回復することがない以上、それをするということは病院から出て来られないということになる。
どうするかというよりも、他に手立てがない。
今まで十分に母はがんばってきた。てんかんが起きるたびに言語機能も運動機能も極端に衰えていくのを間近で見てきた。一番悔しいのは本人に決まっている。
兄もがんばっている。金、土と会社を休んでくれた。父のことを全て任せているのでこちらはかなり楽になる。また買い物のお願いもできるので非常に優秀なアタッチメントと言える。
がんばっていないのは父だけだ。訪問看護が帰った後「そこに立ってるとテレビが観れないと言っとけ」とのたまいくさった。さすがは「私にとっての介護」を読んだだけのことはある。性根が腐り果てていやがる。
実際訪問看護もやることがなく、血圧や体温を測ったり胸の音を聞いたりしているだけ。バイタルには今のところ異常なし。一昨日まで鼻からチューブを入れて痰をとってもらっていたが、穏やかに眠っているのでもう必要ないだろう。口から出てきたものだけ取れば良いのだ。
ここまでは理屈。以下は感情的な問題になる。
できれば家で看取ってやりたい。やりたいのだがそこに至るまで衰弱する一方の有様を見ていられるかどうか。正直に言うとものすごく抵抗がある。無力感に苛まれるだけの生活となるだろう。もっともすでにそうなっているが。
昨日まであれだけ力強かった母の左手が、今はあまり動かない。それを握りながら最良の道を探っている。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます