12月18日

 往診医が言った。


「そろそろ覚悟を決める段階です」


 今更だが八方塞がりが極まりつつあるのだ。


 12月18日、金曜日。晴れ。


 母の痰がひどいので結局徹夜した。放っておくと窒息してしまう恐れもあるのでバカにできない。

 だが吸引がなかなかうまくできない。鼻からはその技術がないからできないし、口からだと舌でチューブを押さえつけられてしまう。結局溜まってゴホゴホ言い出したら手作業で取りだす方法にした。


 昨日の午後、往診医が来た。あまり良くない状態であるということが訪問看護から伝わったのだ。食事ができないということは薬が飲めない。てんかんの危機が近づいている。


「自宅では水分以外の点滴はできません。その為、食べられなかったら入院せざるを得ないのですが、どうしますか」

「入院させます」

「その後は」

「可能な限り家に戻します」


 わかりました、と医者は言った。続けて、てんかんが起きてしまった時にどうするか。


「今まで通り緊急搬送しますか?」

「そのつもりでいます」

「恐らく次、ご自宅に戻ることは難しいと思います」

「でしょうね。けど、家で効かない座薬打って、体力が切れるまで震えさせておくのはあまりにもかわいそうなので」


 そんな場面を見届ける自信がない。唾液を飲み込めないと痰が発生する。肺炎のリスクも高まる。体温が上がるとてんかん発作が起きる可能性が高まる。要するに八方塞がりになってきているのだ。不愉快極まりないフローチャートだが飲み込まなくてはならない。


 昨日の夕方は薬をお湯でドロドロに溶かした後、とろみをつけてアイスに混ぜて強引に食べさせた。20分後に吐いてしまった原因は不明。


 何はともあれ、眠い。回復する時間が欲しい。

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