12月16日 思い出の蛇花火
キッツイ系の痛み止め「ボルタレン」とせん妄に効果のある「アメル」を頓服として母用に処方してもらった。昨晩、少し考えて飲ませなかった。根拠はないが大人しく眠ってくれるんじゃないかと思ったのだ。そういう時は大抵裏目に出る。
12月16日、水曜日。寒い! よく晴れているが寒い! ベランダで洗濯物を干していたら指が動かなくなったほどだ。
結果からいうと30分に一度起きて絶叫していたらしい。昨日は兄が母の横に寝てくれていたので大変だったはずだ。朝方、兄と顔を合わせると「一睡もできねえ」と真っ赤な目でこぼしていた。運転する仕事なのに無理をさせてしまっている。
頓服は置いておくとして、薬の効果はすぐには出ない。昨日、訪問看護立ち会いのもと、薬の種類と量を増やしてもらった。だがすぐに効果が現れることはない。いつまでこんな状態が続くのかと思っていたら、治った。治ったよ、ついに。現在16日の11時を回ったところ。母は穏やかな寝息を立てている。
だがその前になかなかの山場があった。と言ってもおれは何もしていないのだが。
10時30分、訪問看護が二人で来てくれた。いつもは一人なので何か特別なことをしてくれるのかと見守っていたのだが、そういうわけではない。ただうんこのチェックをしてくれただけだ。
「肛門まで来てますね」
どうやらかなりの量が詰まっているらしい。食事量が少ないからうんこも少ないのかと思っていたがぜんっぜん違った。悲鳴を上げる母を軽く抑え、指で掻き出してもらったところ出るわ出るわ、もう打ち止めかと思ったらしつこい蛇花火のようにグネリグネリとうんこが出よるわ。母の肛門は別次元と繋がっているのではないかと疑わせるほどの量が出た。
もし数十年前の多感な時期に今日の四次元系超絶大脱糞劇場を目の当たりにしていたら、夏の夜の花火で最後まで残る不人気王者・蛇花火に火を点けるたび、母の悲鳴が幻聴として蘇っていたに違いない。
ニョロニョログネグネとその身を伸ばす蛇花火に怯える少年、これは何かしらの小説の題材になり得る可能性を秘めている。行き着く先はうんこなんだけど。
そんなわけでずっと悲鳴をあげていた母は疲れ切ったのだろう、出すものを出し切った爽快感もあるのかもしれない。すやすやと眠ってくれている。どうやら食事はできなそうだ。
まあ良し。昼くらいは抜いても全然構わないと看護師から承諾は得ている。おまけに昼に飲んでもらう薬もない。
まずは往診医に経過を報告。報告といってもあくまで事務形式である。「10時傾眠、12時に昼食、悲鳴をあげたので再度アメルを服用」といった感じのもの。めんどくせえからといってこの日記をそのまま送ったらどうなるだろうか。少しだけ興味がある。
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