12月7日 傾眠
12月7日、月曜日。晴れ。バリバリ晴れ。兄の出勤前に洗濯物を干しまくる。
毎週月曜の9時、父を看てくれる訪問看護が来る。「お水はどれくらい飲んでますか」という質問に対し、普通に答えた。
「知りません」
その男の様子を見る余裕はございません。せいぜいコップ2杯。どれだけ水分を摂れと言っても摂らない。だから知りません、その男のことは聞かないでくださいと正直に申し上げた。
「だってその男は、母が発作で救急隊に運ばれていく時も一瞥だにせず、自分がいつも眠る時間に眠れないことで激怒するような矮小な存在ですから」
看護師もそんなこと言われても困るだろう。なら誰に聞けばいいのかという話だ。
おれも正直困っている。余裕がないのだ。母の状態が刻々と変化する。痰が絡むことも多いし、訳のわからないことを叫ぶことも増えた。今日はずっと眠っている。それらの変化についていかなければならないので、かなりギリギリのところに立っている実感はある。
14時には母のリハビリ担当者が来た。リハビリの最中もずっと眠っていた。
「やはりこういった状態が増えることは予想されます」
知ってる。まあ予想してた。そうなると怖いのはなんだろう。怖いの多すぎてわからんね。
15時半、母がいきなり目を見開いた。何事かと手を握りながら話しかけると
「お寿司が食べたい」
と言っている。
「じゃあ、かんぴょう巻きとかっぱ巻き買ってきてもらうか」
と返すと笑いながら怒っていた。このように、時々意思が通じることがある。これがだんだん減っていくのだろう。
いいところの寿司を買ってきてやりたいのは山々だが、現状、家に両親を残して外出することは不可能だ。想像できない。いいところといってもスシローだが。銀のさらは高すぎるので却下。
17時、謎の覚醒。
「お腹が空きました!」
というので早めに夕食。17時30分、母の食事を行っている間にヘルパーが到着。ヘルパーはなにをしてくれるかというと、うんこ掃除である。今日は恐らく12時に出ているので出ていないと思われる。
それでも見てくれるわけなのだが、やっぱりこういう時に重なるのだな、父の食事は。で、やっぱりこういう時に限ってうんこが充填されているのだな。
わざとやっているのではない。一応父には確認をしている。「食事はヘルパーの後でいいか」と。
すると奴は「いつも通りにしろ」と言うのでこうなる。食事というかエサというか。芸術的な生命のいびつさを見せつけながら、今日も桑原家のリビングはガタピシと回っております。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます