お参りサンデー

 よく晴れていたので洗濯物を干した後、いくつかの場所へお参りをすることにした。


 10月25日、日曜日。快晴。史上3頭目の無敗三冠馬の誕生が見られるのかどうか。


 お参りといっても大したことはしない。花を持っていくわけでもお布施をするわけでもない。ただ晴れていたから散歩がしたかったのだ。母が戻ってきたらこんな贅沢な時間の使い方はできない。


 父のことは全て兄に丸投げし、動きやすい格好で外へ出た。まずは父方の墓へ。人通りが少ないのでマスクを外す。イヤホンからはジミーキャスターのhow beautiful you are。いい休日になりそうな気がした。


 20分もしないうちに到着。手ぶらなので、水だけ汲んで墓にかける。この墓、いまだにポンプでコキコキとやって地下水を汲み上げるのだ。修理はしてあるが本体は昔の記憶のままの赤銅色の手動ポンプ、是非このまま使い続けてもらいたい。もしかしたら戦前からあるんじゃなかろうか。

 この日撮ったものではないけど、ツイッター@siokonbu_13honに貼っつけておいたので興味のある方はご覧ください。


 墓の前に仁王立ちする。報告することは特にない。

 続いて土地の氏神様へ。歩いている最中、兄から電話があった。


「なんかお前あてのでかい荷物が届いた」


 忘れていた。ビックカメラでダイソンの空気清浄機が3万円オフになっていたから買ってしまったのだった。必要かどうかでいえば必要ないが、転売屋に買い占められるのも腹が立つのでとりあえず買ってしまった。必要ないから忘れていたが、バカめ、こんなことをしているからカネがたまらないのだ!


 神社到着。暑いのでTシャツ。暑いとはいえ10月も終わり。Tシャツで歩いているのはおれか外国人くらい。

 注意書き通り二礼二拍一礼。

 これ、毎回思うんだけど、間違って伝わってるんじゃないかなあ。最初に二礼ってなんとなく不自然な気がする。神仏分離の時に誰かが間違えたんじゃないかとかそんなこと言ったらバチが当たるかも知れないが、なんとなくそう思う。

 一礼の神社もあると聞いたが、そちらのほうが自然な感じが。あくまで何も根拠はないのですが。


 続いて母方のお墓へ。更に20分歩く。暑いが気分は良い。やはりお日様の下で行動すると気分も晴れる。

ここのお墓は東海道線の線路脇にあり、お参りに来ると電車の音で旅情に駆られるという面白い組み合わせになっている。また、まだ実家から東京に通っている頃は毎日車窓からこのお墓を眺めていた。出勤しながら郷愁に囚われるというのもまた面白い。

 お墓に手を合わせる。報告することがたくさんある。ゆっくり近づいてくる下り電車と、速度を上げて東へ進む上り電車の音が交差している中、しばらく手を合わせたまま目を閉じていた。


 最後に30分ほど歩いて、地域の八幡神宮へ。ここは数年前に神主が児童買春でとっ捕まった、ありがたいにもほどがある神社なのだ。まさしく有り難い。ここのお守りを持っておけば子供を買えるくらいカネがモリモリ貯まるのかもしれないが、事件を知った日には車からお守りを外していた。


 七五三らしく、境内は着飾った子供がたくさんいた。その隣に立つ親御さん一人ひとりに「知ってる? この神社の神主がね?」といらぬことを吹き込んでみたい誘惑に駆られる。

 ここにも二礼二拍一礼の立て看板が。参拝客に注意するより先に、身内をどうにかしたらどうか。

 一応手を合わせてお参りする。特に聞いてもらうこともない。この神社は今年の2月から十回ほど来ているので、もうお話ししたいこともないのだ。


 帰る途中、また兄から電話。


「お母さんから。戻ったらクリームシチューが食べたいと」


 まず兄が電話をし、それに気づいた看護師さんが電話に出てくれたらしい。

 了解である。なら材料を買って帰らねばならない。しかし木曜日の退院までまだ日にちがある。ならば今はカネを稼ぐ時ではないか。


 徳は積んだ。今日だけで徳タワーが倒れそうになるくらい積みまくった。おそらくここまで健気な休日の使い方をしている人間は市内にいないだろう。自分で健気と言い切る傲慢さは積み上げた徳3つ位で相殺される。


 意気揚々、駅前のとある店に飲み込まれた。

 そしてその2時間後には半泣きで退店し、今年四度目のパチンコ引退の決意を固めたのだった。

 最後の神社のせいだな、うん。間違いない。最後に行った神社で積み上げた徳を全部ぶっ倒されてしまったようだ。うん、神社のせい。

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