通常営業の再開と営業時間の延長、並びに今後の懸念2
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前回のあらすじ
おつとめから帰るなり、母は「二度とあんなところ行かない」と言った。
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帰宅するやいなやの一言目が
「もうあの施設はいやだ。絶対行かない」
だったので、もしかして嫌がらせでも受けたかと問い詰めると、それはないと言う。母の訴えが今ひとつ具体性に欠けるので、一つ一つすり合わせをしていった。
部屋は良くない。
食事は悪くない。
風呂は良い。
介護士などのスタッフは大変良い。
だが入所している他の老人たちが老人すぎて居心地が悪い。
母の足を見ると、パンパンに腫れている。むくみのひどい状態だ。
「リハビリやってた?」
尋ねたところ母は一気にまくし立てた。
「何もリハビリにならない。軽すぎて。あれはリハビリとは呼べない。『足動きますか、手は動きますか』とかそんな程度」
「歩行器の訓練とかお願いしたけど」
「そんなことは一度もやってない」
もしかしたら段階的にやっていくのかもしれないとも考えたが、それにしてはむくみがひどすぎる。これでは何も運動をしていなかったことの裏付けになってしまう。
ショートステイに行くまで、むくみはしっかり消えていた。ベッド上での足上げや腹筋、立ち上がってベッドフレームにつかまりながら行うかかと上げやスクワットが効いていたのだ。運動機能は5メートルほど歩けるまでに復活していた。
その為、もしかしたら車椅子から脱却できる可能性があると判断し、歩行器の訓練を依頼しておいたのだ。
なので帰宅後の報告で「歩行器使えます。車椅子、ポイしましょう」という結果を楽しみに待っていたのだが、現実は厳しかった。
難しいところである。「スクワットなんて一人でできるだろう」と言われればそれまでだが、できないからおれがつきっきりで見ていたのだ。バランスを欠いたら危険だし、下げる角度が緩すぎたら訓練にならない。何回慌てて後ろから抑えたことか。要介護4は伊達ではないのである。
もちろん入所者は母だけではないので、その間スタッフがつきっきりで見守るわけにもいかない。その点は理解しているし、難癖をつける気もない。
難しいところと言ったが、何が難しいかというとこのまま母が「もう行かない」という気持ちのままだといろいろヤベー。
ショートステイに行かないということは、通院時以外は家から一歩も出ないということ。いつてんかんを起こすかもしれない母を看ているおれも当然、家から一歩も出られなくなるのである。おお、年中通して外出不可! 座敷わらしの伝承が一瞬頭をよぎった。
ありのままに思いをぶちまけると、嫌だろうがなんだろうが行ってもらうしかない。座敷わらしになるには40年遅いのだ。だが本人の承諾がない限り施設は利用できない。その為、全力で妥協案を見出すことにした。
「3泊くらいはできませんか」
「無理」
「2泊ならどうですか。風呂も入れます」
「それならまあ、なんとか」
本来なら先に施設へ電話をして、なぜ歩行器使わなかったんじゃワレと詰めて詰めて詰め寄りたいところではあるが、帰宅直後にぎゃあぎゃあ喚くことにより施設と母、両者へ悪い印象を与えることになる。それは避けたい。
風呂は良かったらしいので、それが決め手となったようだ。結果、2泊3日で今後も利用することにした。ひと月の間に2日は休みがないと、こっちの神経がもたない。
最後まで難色を示していた理由は「老人が老人すぎて居心地が悪い」というもの。これに関してはあまりにもめちゃくちゃなので何も言いようがない。そんなことは施設に口が裂けても言えないし、言った瞬間ただのヤカラに成り下がる。
かつての名横綱、北の湖は「強すぎるから嫌われる」とも謳われたが、これなども常軌を逸している。ヤクザでもなければそんな理由でふっかけることはしない。
だが母の言っていることはこれと全く同レベルなので、もしかして次のショートステイでぶちまけたりしないかなどと、恐れを抱いているところである。
それはともかくとして、母が余計な言葉を覚えて帰ってきた。その為、先程から脳に病気を抱えている人間でも受け入れてくれる別の施設を探しているところだ。
夕食時、母が言った。
「施設の介護士さんと話してたんだけどね。うちの息子はよくやってくれてるって。両親の介護しながら仕事もやって」
「そうですか」
「そしたら、介護士さんが『息子さんがケアラーさんなんですね』って」
ケアラー、滅ぶべし。手前、介護
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