ウキウキウィークに恋い焦がれ

 母のショートステイが本日金曜日から始まり、そして父は明日の土曜日から一週間いなくなる。二人共帰ってくるのは来週の土曜日。ついに休む時が来た。


 酒飲まないと。肉食べなきゃ。寝なきゃ。感情の高ぶりのままこれらのことを行うと、寝転がりながら肉を喰らい酒をあおり始めるので猛烈な自制心が必要。


 であるからして土曜日から木曜日くらいまで、おれは少しだけ地面から浮いている。知り合いにでも会ったら「なんかお前ふわふわしていないか?」と指摘されるかもしれない。

 当たり前だ。待ちに待った休みともなれば5センチくらい浮くだろう、普通、誰しも、ごく自然に。俗に言うウッキウキ状態に突入すると大抵の人はそれくらい浮く。浮きっぱなしになる。

 ちょうど仕事のピークも過ぎた。最終校了日は両親の帰宅など色々なことが重なる来週の土曜日。あとは若干の修正だけだろう。若干だといいな。


 しかし、父を送り出したと同時になんか体調がおかしい。まず目が異様にかゆくなり、鼻水が出てきた。おまけになにやら熱っぽい。体が浮くというより沈んでいく感覚だ。

 色んなことを踏まえ、これは過労ではないかと結論づけた。緊張の糸がプツリと切れた瞬間にガタが来たのだ。


 今日の契約関係と、昨日から続いた薬の仕分けや持ち物の準備で燃え尽きた自覚がある。母のショートステイは初めて利用する場所だったので、様々な人の話を聞かなければならなかった。それに3時間あまりとられたことがこの疲労の大元にある気がする。

 よろしくどうぞ、母を一つよろしくとひたすら頭を下げつつ、契約書にポンポンポポンとハンコを押しまくった。医者や看護師がこぞっててんかんの発作が起きた時の対応を聞いてきたが、とにかく大発作なら救急車で病院へ入れてくれと伝える。快方に向かっている可能性が高いので、そこまでビビらなくてもいい、ともお伝えした。


 問題は小発作の時。大発作は体がブルブルと震え意識がなくなるので救急車を呼ぶしか手立てはないが、小発作は一応意識がある。ただ食事の時にフォークが持てなくなったり、何かわけのわからないことを口走る状態になるのだ。この対応が実に難儀である。

 普段から会話をしている家族ならばその異常に気づくが、顔を合わせたこともない人間が会話の内容に注意を払うだろうか。軽い認知症なのかと疑われる恐れもある。

 また、コロナの影響らしいが、入所から4日間は一人で食事をすることになる。見守ってくれる看護師はそれほど多くない。きちんとフォローしてくれるのだろうか。

 悩みに悩んだ結果、とりあえず電話をもらうことにした。正直電話越しに状態を聴いたところで医者でもないおれが何かできるとは思えないが、救急車の要不要の判断くらいは下せる気がする。

 それにしても普段は全くこれっぽっちも感じないが、母が目の届かない場所に一人でいると思うと途端に不安になる。我ながらなんという気の小ささか。


 そこまで不安に感じるのならショートステイなど利用するなと言われるかもしれないが、それはまた別問題。現に今のおれは糸の切れた人形、もしくは死にたてのイカ、あるいはかわいさの欠片もないたれパンダ状態。これでは介護する側でなく、される側である。一言でまとめると、すごく疲れている。やっと取れた休みを睡眠だけで浪費してしまったら切なさストップ安。


 地面から浮いていられるのは僅かな間。一週間後の土曜日に両親が戻るということは、金曜日にはシャバ飯を作らなければならない。その頃まで今の体調のままではまずい。

 まずは風呂だ。父を寝かせて兄が帰ってきたら、ゆっくりと風呂に入るのだ。そして早めに眠り体を休めよう。明朝に目を覚ました時、布団から8センチくらい浮いていますように。

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