左の腕からこんにちは

 アップルウォッチ到着。早速フィルムを貼ろうと思ったが、何度やってもうまくいかないので諦めた。風呂場に行って埃が入らないようにしたのはいいが、肝心のフィルムがうまくはがせないのである。


 説明書きが悪いのかおれの頭が悪いのか。どちらかに致命的な原因を抱えているものの、ひとまず何も考えないことにする。これにより、新型アップルウォッチはむき出しのまま使われることとなった。


 購入した理由であるが、母を預かってくれるショートステイからの「24時間電話に出れるように」という依頼に従ったものであり、音で起きずとも手首の振動でなら起きるであろう、という立派な建前は完全な後付である。実際の理由は「安いの出たから買っておこう」という一番しょうもないもの。


 先日も書いたが、安いから買おうというものは必要がない。必要だけど高い、と迷っているものこそ買わなければならないのだ。


 アップルウォッチの利点は、これとBluetoothイヤホンだけあれば電話もできるし、音楽も聞けるところか。クレジットカードも登録したからなんと買い物もできる。だが残念なことに外出できる機会がほぼないので、上記の機能は全くの無意味である。


 また、一日の運動量もチェックしてくれる。設定した時間より運動しないと怒られるらしい。運動、起立時間、あとなんかを見張ってくれるらしいのだ。素晴らしい。だがやはり残念なことに運動をするタイミングが極めて限られるので全くもってムダな機能。ついでにいうとパソコン使用時はスタンディングデスクにしてある。


 さらに、防水なので手洗いタイマーなるものまで備わっている。約20秒間しっかり洗えと時計に促されるそうだ。スゴイね。けど洗面台には時計があるので、これもやはり無意味そのもの。しかも50メートルまで潜水できるゾ。けどおれ泳げないゾ。あと洗剤に触るなと書いてあるが、食器たくさん洗うんだけど、どうしよう。


 その上、睡眠時間もチェックしてくれる。8時間を目安にぐっすり眠らないとコロスという感じで怒られるらしいが、これなどは無意味の極北、第一回噴飯大賞に値する。眠れていたらここまで疲れていないが、そこのところはどうか。アップル社には両親の介護という概念はないか。どうか。


 おまけに予定まで教えてくれる。カレンダーに予定を書き込んでおけば手首をひねっただけで「ヨガ」「ジム」等のスケジュールを表示してくれるのだ。なお、ヨガだジムだはホームページの見本にそう書いてあっただけであり、おれの手首には


「もう予定はありません」

「今日は予定なし」


 と表示されている。2行に渡って「お前には夢も希望もカネも愛も時間もない。もちろん予定もない。本当になんにもない」ということを教えてくれているのだ。ありがとう。うるせえよ。


 しかもなんと! アップルのホームページにはこう書いてあった。


「そういえば、その腕時計、時間もわかるって言いましたっけ?」


 マジかよすげえな感動した、時間までわかるのかよ! けど壁に時計あるからいらんわ!


 以上のように、全くもって買う理由がない。使い所がないと言ってもいい。先ほどなど電話が鳴ったと同時に手首から振動が伝わってわたわたした。46歳にもなってここまでわたわたするとは思わなかった。


 せっかく買ったからどうにかして使いこなしたい。なので先程から色々調べているのだが、どうも電池は18時間程度しかもたないらしい。

 アップルのホームページを見る限り、


「朝起きてから眠るまで着けとけコラ、防水だから風呂でもずっと着けておけコラ、ジムだと? もちろん着けろコラ、当然眠る時もだコラ、便利だろコラ」


 みたいな印象を抱いていたのだが、一体いつ充電せよと。

 それくらいは自分で考えるべきなのだろうが、多分そこのところ教えておいてくれないと、ずっと充電しっぱなしの時計型オブジェになる。なぜならばおれの生活において全く必要がないからだ。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る