みっちり詰まった蜜をあなたに
外来で1日が終わった。終わっちまった。朝7時50分に介護タクシーで家を出発、戻ってきたのが14時前。処方箋を薬局へ提出し父をデイサービスから受け取ったらその後は夕食の支度である。
問題は病院にある。予定では採血が8時30分、脳神経外科が9時、外科が9時30分とあった。ここまでは順調に来ていた。
外科の先生からバルーン(尿を溜める袋)の交換を指示され、外科の待合室でボケーっとすること25分、やっと処置室に呼ばれたと思ったら作業が終わったのが20分後。普通10分程度で終わるらしい。
そしてなぜかおれが母のベッドへの移動を行い、その間看護師はやれ管がない、やれバルーンがない、やれバケツがない、バルーンがどこかへ行ったとその都度ドタバタ動き回り、要するに何もしていなかった。
仕事の準備でここまで混乱しているヒトに対する感想は「使えねえなこいつ」である。
看護師の異様なトロ臭さに首をかしげつつ、退室。その看護師は「まだ外科にいてください」と言った。
「なんでですか」
「まだお話しがあります」
「誰からの何のお話しですか。これから次の科へ行く必要があるんですが」
「でしたらその後に」
「だから何の話ですかと聞いてるんですが。受付に確認するからそれでいいですね」
受付に行ったところ、別に話はないとのこと。その間に駆け寄ってきた看護師がバルーンに日付を記入した。もしかして日付を記入し忘れていただけなのか。それを自分のミスとはしないために「話がある」とか言っていたのか。
次の科は内科。内分泌代謝内科というまだるっこしい名前だが、糖尿病を見てくれる部門だ。
内科の棟は狭い。狭い上に繁盛しておりいつでも密度がすごいことになっている。徹底的な密により、しっかりとコロナを培養してやろうという意識すら感じる。
いや、ここまで書いておいてなんだが、さすがにすさみすぎた。ごめんなさい。
それはさておき、そのミッツミツの密の中に放り込まれること1時間30分。診察はわずか7分。それも「これからは糖尿病に対して熱心な治療は致しません」という内容。
理由はステロイド剤。脳腫瘍の腫れを抑えるために飲んでいるステロイド剤は、糖尿病と極めて相性が悪い。血糖値が跳ね上がってしまうのだ。そうするといろんな病気の複合症を気にしなくてはならなくなる。母は今、毎日アイスを食べているが、とてもではないがそんなもんあり得ないのである。
それでも血糖値が落ち着いているのは単純に白米の量を減らしているからであり、いいことなのか悪いことなのかは分からないがなんとか乗り切っている。
全ての診療を終えたのが13時10分くらい。普段なら昼食を終えている時間だ。ここで不安になるのが低血糖。母の顔を見ると案の定冷や汗をかいていたので甘い紅茶を買って飲ませる。
糖尿病外来に行って低血糖起こしているんだから世話ない。今後受診するかどうかはじっくり考えないとならない。薬と注射だけ出してくれればいいと思うんだけどな。
家に戻って食事の支度をバッタバタと整え薬を飲ます。それから母のスクワットと爪先立ちを補助。これをやらないと足がむくむくとむくみだすのだ。
次は自分の番。忙しい中でも30分くらいは筋トレをやっておきたい。なので母に確認をとった。
「しばらく筋トレしたいのだけど、うんこ行きませんか。途中だとめんどいので」
「行かない。大丈夫」
で、腹筋から始め、ダンベルプレスの途中でいきなり車椅子が動く音。なんで素直に便所に行ってくれないのか。
そんなわけでしっかりストレスを溜め込み、自分の仕事も進めることができないヤキモキが爆発したのか、新型アップルウォッチの安い版を今さっき買った。なんで買ったのか、冷静になってみるとわからない。だって外出できないのだから意味がない。
運動しないとウォッチから怒られると聞く。それによりまたおれのストレスが溜まることは間違いない。なんで買ったんだろう。バカじゃなかろうか。
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