睡眠ぶそく

 当たり前のことではあるが、睡眠時間が圧倒的に足りない。


 夜中、うんこ投下の為、母に何度か起こされる。それはもちろん構わない。最近は一晩あたり3打数1安打をキープしており、ここ数試合のカープの4番・鈴木誠也よりも優秀だ。柔らかくないうんこの場合はヒットエンドラン(うんこをさせた後、すぐさま自分の部屋に戻ること)も可能なので作戦の幅が増えた。


 うんこをさせればすぐに呼ばれることはないので、安心して眠れる……かというとそんなことはない。最大の不安はやはりてんかんの発作なので、1時間に一度くらい様子を見に行く。自分で言うのもなんだが、妖怪じみた行動である。名付けるならば「寝不足ケツ拭き妖怪・尿捨て太り介護」だろうか。ほぼ悪口で構成されているがキレがあるから良しとする。


 尿捨てというのはバルーンに溜まった尿を捨てる行為を指す。これもおれの仕事なので通り名に使われてもやむなし。ニョーステーと元気よく声に出せばヨーソローみたいでかっこいい。もしくは呼び名の最後に尿を持ってくればぬらりひょんのような存在感が生まれるかもしれない。

 寝不足のたわごとなのでここらへんは飛ばしていただいても。なんなら全部飛ばしていただいても。


 物理的に削れるのは睡眠時間だけなのでそこを積極的に削っているのだが、果たしてそれは削っていいものかどうか。母の退院から一週間しか経っていないのに大きめの不安が襲いかかってくる。


 介護対象の母はどうかと言うと、これがまた驚くほどによく眠る。脳の腫瘍が原因なのかは分からないが、昼も夜もよく眠る。口癖は「全然寝てない」だが、尿捨て太り介護のチェック済み、お墨付きである。実にしっかりと寝ている。おっとまたバルーンに1リットルくらい溜まった。ニョーステー!


 もしかしてここまで普通に読んでくださっている方もおられるかもしれない。だとしたらすでにお気づきのことと思うが、今日の日記は全く内容がない。しかも今日はヘルパーしか来ない。イベントの空白ともいうべき静寂であるが、これが嵐の前の静けさだということは忘れずにおきたい。


 これから父が戻ると、とてもではないがまともに人生を送れない。両親の為に生きるのは仕方がないが、積極的に潰れたいわけではない。もう少し取り返しがつかないことを口にすると、死ぬ時だけは自分のことだけ考えて死にたい。


 で、わたしひらめきました。


 母を一月に一度、入院させます。ホテル代わりに。父のショートステイに合わせれば一月に一度は休める! 休みがなければ作ればいいのだ! 

 この妙案を母に相談したところ、大反対された。家にいたい、病院はいやだの一点張りである。


「ならおれは一生家から出れないし、両親の世話の為だけに生きろと言われているのと同じですよ」


 説得というかお願いである。気持ちはわかるが、少しは、一月のうちに2日くらいはこちらのことも考えて欲しい。一人でコンビニを営業するのは無理だって。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る