お前が元凶か

 最近、父親のデイサービスに振り回されている。


「体調不良だから一週間は利用させない」

「帯状疱疹の恐れがあるから来させない」


 いずれもクリアーした。でかい病院で診てもらったし、皮膚科で「帯状疱疹ではない」という診断をもらった。


 しかし、本日の帰り、新たなミッションが告げられたのである。


「帯状疱疹ではないという一筆をもらってこい」


 とのことである。

 何言ってんだと思ったが、要は診断書をもらってこいと言うことだ。


「診断書をもらって来いということでよろしいか?」


 とおれはケアマネージャーに問うた。


「そこまではいかないけど、なんか一筆もらってこいとのことで」

「コピー用紙に書いてもらったものに効果はあるんですか」

「無いと思います」

「つまり、診断書をもらって来いということでよろしいか?」


 皮膚科に電話をかけた。繰り返すが、おれの父親は左半身不随の一級障害者である。病院に連れていくのはものすごく大変なので、まずは電話でそんなものを書いてもらえるかの相談をしたのだ。


 医者は言った。


「帯状疱疹じゃないとこちらが下した診断が間違えていると言うことだよね」

「多分そうだと思います」

「そのデイおかしいよ。やめた方がいいレベル」

「その旨、そのまま伝えても宜しいですか?」

「うん、伝えて。何より、診断に文句があるなら直接電話してこいって言ってもらえるかな?」


 ちょっと怒った感じで医者は続ける。


「そもそも、『〇〇ではない』なんて診断書、聞いたことがない。そのデイがおかしい。バカか。診断書でなければ何かしらの用紙に一筆? 本気で言ってるの?」

「どうやら本気です。それがないとデイを利用させないと」

「もうね、私の言ったことそのまま伝えてくださいよ」

「ありがとうございます!」


 先生、おこである。

 そもそも、楽になるためのデイサービスにここのところ苦しめられているので、おれも正直うっぷんがたまっている。元凶の一つと言える。


 なので、ケアマネにそのまま伝えた。


「ということで、直接電話してください」

「えっと、それはうちのスタッフが直接桑原さんに電話をするということですか?」

「いえ、僕は病気のことは分からないので」


 一回区切る。おれにとってのジョーカーであるから勿体ぶるのである。


「その『一筆もらってこい』とおっしゃってた方に、直接、皮膚科に電話をしてもらえればいいです。その方が何度も『帯状疱疹なので来るな』って言ってるんですよね」

「いえ、それは……」

「それで解決です。僕はそれ以上のことはできないです。すでにご相談しましたが母の件で手一杯なんです」

「それは……そうなんですが」

「ここ数週間、何がなんでも帯状疱疹って決めつけられていたので、僕もイライラしてます。もちろんそれなりの根拠と知識があってのことでしょう。僕は無知なので。だから電話してもらってください。そうすれば納得していただけるでしょう?」


 というわけで、今はデイからの電話待ちである。本当に皮膚科に電話したのかどうか。一時間経っても返答がないということは、追い討ちの電話をかけた方がいいのかな。

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