足りないよ、もともと足りないよ!

 仕事が少しだけ復活したので、無職という無敵の金看板を下ろすタイミングを見計らっています。

 緊急事態宣言が解除されたエリア、具体的に言うと大阪府の仕事をメインにやらせてもらっておりまして、少しずつ忙しくなってきました。

 未だそれが解除されない神奈川県民としては唇を噛みしめるところではございますが、もう少しの我慢であります。


 と綺麗に結んだはいいが、実際忙しすぎる。

 まず、父の血糖値を測るセンサーが足りない。これは説明が難しいが、小さい金属板みたいなもので、実費で買うと30枚入りの1ケースが5千円もするのだ。病院に話して追加してもらうしかないのだが、そこでの折衝がまためんどくさい。

 父も金看板を背負っている。一級障害者というド級のブツなのだが、こいつがあると医療費は基本タダ。けどタダだからくださいな、というわけにもいかない。


「これだけの枚数があって足りないことはないでしょう」


 と言われるわけですな。そうするとおれはカレンダーを目の前で広げながら説明するしかなくなるのである。

 実際足りないんだ。4週間分で出されてるけど、実際は5週間なんだ。だからそっちの計算ミスなんだ、という主張になるわけであります。平日の昼間から病院の受付でそんなことやるやつは無職としか思われないだろうが、今のおれはセミ無職、半熟無職なので周囲の目は気にならない。


 今は、いつその話をしに行けばいいか、病院からの連絡を待っているところだ。

 ならその空き時間を使って仕事を進めるなり家事をするなりすればいいではないかと思われるだろうが、そんなマルチタスク能力をおれは持ち合わせていない。

 スーパーシングルタスク、つまりちょっと要領が悪くてちょっと計算が遅くてちょっとバカで、色々加味すると普通の人よりそこそこ劣ってる身としては、もう電話が鳴るのを今か今かと待ちわびているのだ。その間はこういう文章しか吐き出せない。



 忙しい理由はまだある。なんか知らんが毎日洗濯しているためだ。父のそういう、なんだ、ズボンを毎日洗うのは慣れっこである。今では食事時でも父親のケツを拭ける技術を所有するに至ったが、夜中にサイレント漏らしをされた場合は事後対処しかできない。


 さらに「負けてたまるか」といわんばかりに母が同じようなことをしだした。二人ともだいたい一日置きになさるので、頑張る日が増えるわけだ。床拭いたり布団広げたりなんだかんだするわけだ。


 何よりデイサービスがコロナの影響で無くなっているので、昼の食事を作るのがめんどくさい。食材を買いに行くのも父がいる限り無理なので、ネットスーパー頼りになる。ならむしろそこで惣菜とか注文してしまえばいいのかもしれないが、病気のゼネラルマーチャンダイジングストアたる父は腎臓もしっかりいわせているので、普通の食事の塩分は強すぎる。結果おれが作るという一択に。

 そしておれは2年ほど半熟無職、実質年利0円(?)なので、世の中に対する罪悪感が常にある。それを払拭する為に、ネットスーパーの支払いはおれの口座から引き落とされるのだ。地域に貢献してますよ、という無職なりの悲しい遠吠えなのである。


 先程電話が鳴った。


「確かにセンサーは4週間分しか出していませんでしたので、足りないでしょうね」


 とのことなので、持ってきてくださいとお願いしておきました。こういう時は何を言われても「取りに行く時間がありませんので、よろしくおねがいします」のみ。スーパーシングルタスクマシンはこういう時に真価を発揮するのだ。

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