第二十九話 戦い終えて

――煉獄の島 ノーラグベル・ルル海岸


◇カイ

…………


◇クロナ

カイ?

こんなところにいたの?


◇カイ

ああ、クロナか……

どうした?


◇クロナ

どうしたじゃないよ、まったく


マロンとカシュタさんとアランが

別れの宴を催してくれるんだから

早く行かないと


◇カイ

ああ……


◇クロナ

どうしたの?

柄にもなく考え事?


◇カイ

柄にもなくってなあ……

まあ、いいや


ここまで落ち着いて

考える時間もなかったから――


父さんのこと、

ウィルゲン大佐のこと

アリアのこと


空の穴、深淵の魔王、

世界の終焉、アーク


考えたけど、いろんなことが

ぐるぐる回って


やっぱり、俺は考えるのは苦手だ

こういうのは、ノアに任せよう


◇クロナ

ふふっ

やっぱり


でも、それでいいんじゃない?


◇カイ


◇クロナ

カイは思うまま、気持ちのまま

どこまでも突っ走る


ノアが考えて、私がみんなを守る


ひとりひとり、

できることはバラバラ

でも――


バラバラだからこそ、

私たちはうまくやってきた


これまでも、

これからも、ね


◇カイ

ああ


◇クロナ

だから、

ごちゃごちゃ考えてないで

突っ走りなさい!


我が弟よ!


◇カイ

イテッ!

おまえな……力が強いんだよ……

ったく


ああ、それとな

俺が兄貴で、おまえが妹な


◇クロナ

はぁ?

なにそれ

私がお姉さんで、あんたが弟よ


◇カイ

いいや、おまえが妹だ


◇クロナ

あんたが弟


◇カイ

…………


◇クロナ

…………

◇カイ・クロナ

まあ、どっちでもいいけど


◇カイ

でも、アリアは妹だな


◇クロナ

そうだね

アリアは妹ね


でも、アリアは将来、

いいお母さんに

なる気がするんだよね~


◇カイ

そうか?


◇クロナ

そう

絶対にそう


あのなんて言うか

ほわ~んって感じの

雰囲気が


◇カイ

う~ん……

うちは母さんが怖かったから

よくわからん


◇クロナ

ああ、おばさんは怖かった……

よく怒られたなぁ……

カイのせいで


◇カイ

は?

クロナのせいだろ?


◇クロナ

は?

なに言ってるの?

あんたのせいでしょ


◇カイ

いいや、おまえのせいだ


…………


◇クロナ

…………


◇カイ・クロナ

まあ、どっちでもいいけど


◇クロナ

お母さん……か


◇カイ

……クロナ……


◇クロナ

ううん

なんでもない!


◇ノア

ここにいたのか

ふたりとも――


◇アリア

カイさん、クロナさん

大変です!


◇カイ

どうした、アリア?


◇クロナ

なにがあったの!?


◇アリア

えっと、そ、それが……


◇ノア

リンジーが――


「早くしないと料理が

冷めマース」とか言って

ごちそうにパクつき始めたんだ


◇カイ

なにっ!?


◇クロナ

大変!!

カイ、だから言ったでしょ!

早く行こうって!!


◇カイ

言ってないだろ!?


◇クロナ

いいや、言いました!


◇ノア

どっちでもいい


◇アリア

ごちそう、美味しそうですよ!

行きましょう!


◇カイ

ああ!

リンジーめ~!!


◇クロナ

ごちそうがなくなってたら

ただじゃおかないからね!!


◇カイ

よし、行くぞ!


◇クロナ

おう!



********************



◇ノア

はぁ……

まったく……


◇アリア

ふふっ

ノアさんの言ったとおりでしたね


ふたりとも

ごはんのことを言えば、

走り出す、って


◇ノア

当然だ

僕らは家族みたいなものだからな



To Be Continued……

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