第5話危機
お茶をどうぞ、インスタントでごめんなさい。まだヤカンもないんです。買いたいんですけど、気おくれしてしまうんですよね。
茶箪笥ですか、ええ、まだ使っているんです、この茶箪笥。
あれからしばらくして、またコップが割れたんです、ええ、色違いのやつです。
ドラマを見ていた時でした、あのコミカルな音楽ドラマ、ご存知ですか……演奏がどどーんと鳴り響いた時に、一つ壊れました。私達は振動のせいだと納得して茶箪笥を使い続けています。
その現象を二人で体験したということは、戻ったのです、家に。
私は家で夫の帰りを待つ生活をしました、ええ、わかっています、たった一週間です。
その頃、胎動のようなものを感じた気がしていました。……実際はまだ早いはずなのですが、そんな気がした最中に、胎動が止まった気がしました。それで、実家近くの病院へ行ったのです。
お腹の中で、赤ちゃんが下の方に下りていました。安静にするようにと、言われました。
それで実家に舞い戻ったのです。あの時は、もう怖くて動けませんでした。まだ生まれることのできない時期だったので。
じっくり横になって、辛い辛いとばかり思って。
恐怖は長く続かないもので、次第にどうでもいいやと思うようになりました。
どうでもいいと思わないと、気持ちを保てないという。
それでひたすら横になりました。
暗い内容の漫画ばかり読んで、子育て準備ができないと嘆いていました。
子どもが生まれた後のことなんて想像できないって。
今まで忙しく、形だけは動こうとしてきた。
けれど、もう疲れた。
働け!
勉強しろ!
家のことは!
これまで頭に響いてきた言葉と休みながら戦って、全てを放り投げて。
休んだら見えた。
必要なのは、努力ではなく、休むことだった。
ダメ。
ダメダメ。
そんなこと考えちゃダメ。
怠けたら、子どもがダメになっちゃう。
じゃあ、ダメな私は、子どもをダメにしないのか。
子どもをちゃんと育てられるのか。
んな、訳、ないじゃん!
全部ダメだ!
もう疲れた!
葛藤の末、ジ、エンド、長い眠りにつきました。
冬眠ってこんな感じかな、と、思いながら。
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