第3話「最弱不死と破壊の魔神(3)」

 ドラゴンの話をまとめると、こうだった。


 遥か昔。この世界が創生されたばかりの頃。


 神々はこの世界に様々な種族を誕生させ、自分達が創り出した種族がどれほど優れているかを自慢し合いながら、天上界から世界を見守っていたらしい。


 そんな俗世っぽい話題で花を咲かせる神達の中に一人、種族を上手く創れず、神々の会話に入れなかった不器用な神がいた。


 それが俺の目の前にいる、ドラゴンらしい。


 このドラゴン。神様だった頃は破壊の象徴だったらしく、何かを壊すのはどの神様よりも得意だったが、創り出すのは恐ろしく苦手だったそうだ。


 しかし諦めの悪いドラゴンは、数々の失敗を重ねながらも、遂にある種族を創った。


 その名も、魔族である。


 ……明らかにヤバそうなネーミングの時点で嫌な予感しかしないのだが。


 ともかく、そんな紆余曲折を経てドラゴンの創った魔族は、どんな奇跡か他の神達が創ったあらゆる種族よりも優れた種族だった。


 あとは世界に誕生させるだけと思っていたらしいのだが、そこで問題が起きた。



 このドラゴン。うっかり種族を創った際にできた大量の失敗作。


 魔物も一緒に世界に誕生させてしまったらしいのだ。



 何だろう。仮にも神様にこんなこと言うのは失礼だろうけど。


 マジで馬鹿なんじゃないのか?


 ともあれ、そこから突如誕生した大量の魔物のせいで世界に混乱が広まるのは、紙が水を吸うように早かった。


 しかも最悪なことに、魔族は自分達が他の種族よりも圧倒的に優れていると分かった途端。


『魔族こそがこの世界を支配すべき種族である!』


 とか言い始め魔王軍を設立。


 他の種族を襲いながら魔物と共にこの世界の侵略を開始したそうだ。


 なんという大惨事。


 この事態に気づいた他の神々達は、この世界規模の大混乱をどう収めたものかと酷く頭を悩ませ、やがて一つの解決策を思いついた。


 それは、異世界から呼んだ者に強力な神の恩恵であるギフトスキルを与え、神々の代わりに魔族と魔物を討伐させようという案だった。


 やがて呼び出された五人の異世界人達の尽力によって、魔王を含めた魔族は滅亡。


 戦犯であるドラゴンは世界を破滅に導いた邪悪な魔神として、神々によって力のほとんどを奪われ、三千年もの間この谷底に封印されたのであった……。


『どうじゃ? つまらん話じゃろう。じゃが、わっちに語れる話はこれくらいしか無いのでな。許すがよい』


 ドラゴンが自嘲気味な声で言う。


 ……うん。まあ、自業自得と言えばそれまでではある。


 けれども、こんな何もない場所に三千年も独りというのは、ちょっと厳し過ぎじゃないかと思ってしまった。


『……さて。わっちが語り終えたところで、次は貴様の番じゃ。そもそも貴様、どうやってこの場所に来た? ここには神々の結界が張られ、普通の奴は来れぬはずじゃというのに。わっちはそれが気になって気になって仕方が無かったんじゃ!』


 しんみりとした空気を払拭するかのようにそう言うと、ドラゴンが顔を近づけてくる。


 俺の姿を映すその深紅の瞳は、溢れ出る好奇心で爛爛と輝いていた。


 何というか、可愛いな、こいつ。

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