波乱の授賞式
選手たちが泊まっているとある一室にオリビア、クシェル、デュランが集まっていた。
「優勝できてよかったわね」
「そうだね。みんなで頑張ったからだよ」
「俺たちの力ならこれくらい当然だぜ」
オリビア、クシェル、デュランの順に呟く。
3人はイスに座って飲み物を飲んでいた。
「でもアンタは危なかったんじゃないの?」
オリビアがデュランに嫌味のこもった風に訊く。
「大丈夫だったっつーの。そりゃ俺は遠隔攻撃魔法が苦手だけどよ、自分のマトを硬化しまくってその隙に相手のマトを壊したんだよ」
デュランが出場したのはパワー・ブレイク。自分のマトを守りながら相手のマトを壊す競技。遠隔攻撃魔法が苦手な彼は口ではそういいながらも危うく負けるところだった。
「お前の方こそ危なかったんじゃねぇの?」
お返しと言わんばかりにオリビアに訊ねる。
「アタシなら全然余裕だったわわよ。ガゼルに練習に付き合ってもらったからね」
しーんと空気が静まりかえる。
全員顔を伏せて悲しそうな顔になっていた。
ガゼルのことを口にすると、嫌でも死んでしまったことが頭を過る。
「ほんと、短い間だったけどアイツには頭を悩まされっぱなしだったわ。強いくせになんか抜けてるし、遅刻するし、授業中に居眠りするし……っ」
話しているうちに思い出が頭をよぎり、うるっときてしまうオリビア。
「そうですね…。短い間でしたが楽しかったですね」
「ああ。俺も楽しかった。あいつとの約束、優勝ができてホント良かったよな」
デュランがそうまとめる。
談笑するような空気ではなくなってしまったからだろう、これ以上は会話が続かず、3人はゆっくり自分の飲み物を飲みほした。
授賞式が始まり、全学園の出場選手が集まっていた。
その中にはもちろんディアフォード魔法学園とアムステラス魔法学園の姿もある。
並んでいる先頭に立っているのは出場選手たちの代表だ。
ウチの学園で言えば生徒会長キース・グランハルト、アムステラス魔法学園で言えばグリム・ラースだった。
「今年も俺たちの勝ちのようだな」
キースが隣に並んでいるグリムに声をかける。
「そうだな。お前との勝負も負けたし、
含みのある言い方にキースが疑問を浮かべる。
「この勝負?」
「いいや、なんでもない」
「ーーーーーそれでは、ただ今より授賞式を始めます」
大会委員のアナウンスが聞こえたのでキースとグリムの会話は断ち切られた。
「ーーー総合順位、3位サーライト魔法学園、2位アムステラス魔法学園、そして1位は、ディアフォード魔法学園」
観客席からさまざまな声が上がる。出場していないが観戦しにきている者もいるんだろう、歓声や落胆などいろんな表情になっている。
「それでは、1位のディアフォード魔法学園代表キース・グランハルトくん、国王様よりトロフィーが授与されます」
国王が観客席より降りてくる。後ろには護衛の魔法騎士を引き連れている。
国王が一歩前に出るとキースも前に出る。
「この度は優勝おめでとう。実に見事であった」
国王がトロフィーをキースに渡そうとしたその時ーーーーー
「キャーーッ!!」
観客席で激しい爆発が起こる。観客の悲鳴が上がり会場は混乱に飲み込まれる。次々と起こる爆発に会場は恐怖の色に染まっていた。
動揺して動けなくなっている選手たち。
そんな中で動いている人影があった。
「やれっ!国王を殺せっ!!」
声をあげたのはグリム。《具現魔法》
「国王様っ!」
護衛の魔法騎士が剣で狼達を薙ぎ払う。護衛の2人は国王様を狼から守るので手一杯のようだ。
「今だ!」
グリムが声を上げる。
すると、国王様の背後にセレスが《転移魔法》テレポートで現れる。
ーーーーー国王様の胸に剣が突き刺さる。
「貴様ぁっ!!」
護衛の1人が声を荒げるが狼に手一杯のようだ。
国王が膝をつく。
そのまま膝をつき動かなくなってしまう。
だか、胸を刺されたのに倒れる気配がない。
「オレを何回刺せば気が済むんだ、セレス」
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