強硬策
「おかしいな」
アムステラス魔法学園の控え室に戻ってきたグリムが呟く。
「バトル・ロワイヤルでは開始直後、キースに動けなくなる魔法が発動する予定だっただろ」
話している相手は黒髪の女である。
アムステラス魔法学園の制服を着ていないところを見ると部外者だろうか。
「申し訳ありませんグリム様。ちゃんと仕掛けておいたはずなのですが、また何者かの仕業で発動しなかったようです」
「くそっ。ガゼルとかいうやつは殺したし、他にめぼしい邪魔者になりそうなやつはいなかったはず。……何者なんだ?」
二人は得体の知れないものに恐怖を感じていた。
先日の襲撃でアジトの場所がバレていたことといい、妨害工作の無効化といい、なにもかもこちらの情報が筒抜けている。
自分たちは何に拒まれているのだろうか。
その不安が焦燥感を駆り立てる。
「まさか、最終目標までバレてはいないだろうな」
グリムが確認気味に女に訊ねる。
「それをしっているのは私とあなただけですから、さすがにバレていないと思います」
「セレスはどうだ?あいつには話してないだろうな?」
「もちろんでございます。セレス様の使い道は逃走用ですから、それ以上のことは何も伝えていません」
グリムが少し安堵の表情を浮かべる。
「ならいい。あいつの母親を人質にわざわざとったんだからな。有用に働いてもらわないとな」
「そうですね。セレス様の母親には外すと条件起動術式が発動するネックレスをつけております。外すと待っているのは死でこざいます。下手なことはできないでしょう」
「しかし、計画のためには優勝する必要があったのに逃してしまった。これでは……」
「はい。強硬策をとるしかないでしょう」
二人の会話は強硬策をとるという方針でまとまった。
「やりましたね!キース様!」
キースが控え室に戻るとレイラが興奮気味に迎える。
もう寝ていなくても大丈夫なようだ。
「ああ、お前のおかげだ」
レイラは訳がわからず首をかしげる。
「私はなにもしてませんよ?」
キースの口元がふっと緩む。
「いや、なんでもない。気にしないでくれ」
レイラのおかげで勝てたというのはキースは秘密にしておいた。
いつもレイラの前ではクールにしているキースにとっては恥ずかしかったようだ。
「レイラも授賞式には出られるようにちゃんと安静にしておけよ」
「はいっ」
レイラは勢いよくうなずいた。
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