キースの戦い
三日目の最後の競技はバトル・ロワイヤル。
ディアフォード魔法学園とアムステラス魔法学園のポイントの差はほんのわずか。
つまりこの最後の競技に勝ったほうが優勝となる。
「ようやくこの時がきたな」
キースと正面から向かい合い、グリムが口にする。
今まさにはバトル・ロワイヤルが始まろうとしていた。
「この戦いに勝ったほうが優勝だ。今度こそ我がアムステラス魔法学園が優勝させてもらう」
「そうはさせん。今年もディアフォード魔法学園が優勝する」
二人は見えない火花を散らしていた。試合開始を今か今かと待っている。
「それではキース・グランハルト対グリム・ラースの試合を始める。それではーーーーー始め!」
試合開始の合図と共に戦いの火蓋が切って落とされる。
まず仕掛けたのはグリム。《具現魔法》が得意な彼は、《具現魔法》
「行けっ!」
グリムが命じると、狼は激しく吠えキースに襲いかかる。
キースは躱すこともせず突っ立っている。誰もが狼に噛みつかれる未来を想像しただろう。だが、狼の牙はキースを貫きーーーーーすり抜けた。
「相変わらずコスいやつだ」
《幻影魔法》
この世界は、物質次元、情報次元、霊魂次元の三つの次元が重なりあってできている。魔法とは情報次元に干渉し情報を書き換え、書き換えられた情報が情報次元に従い、物質次元に影響をもたらす、という仕組みだ。
キースの《幻影魔法》
従って本体を見つけるのは極めて困難である。
グリムは空間をしらみつぶしに狼達に攻撃させている。
バトル・ロワイヤルのフィールドは決まっていて、本体は必ずそのどこかにいるからだ。
その時、グリムの背後で魔法の発動を感じとる。
「そこかっ」
グリムが勢いよく後ろを振り返る。しかしその時にはすでにキースの魔法は発動していた。
《氷魔法》
魔法陣から氷の矢が放たれグリムに襲いかかる。
横にステップしその攻撃を躱すとすぐにグリムは攻撃を仕掛ける。
狼を操り、さっきキースが魔法を発動した場所を攻撃する。
狼の牙はまたしてもなにも捉えられずにすり抜ける。
すでにそこには本体のキースはいなかったようだ。
(ちっ、厄介なやつだ)
心の中でグリムはそう思っていた。キースの《幻影魔法》
グリムにとっては、本体は魔法発動の兆候からしか見つけることができない。
その時、キースの幻影が距離を詰めてくる。
幻影は質感、雰囲気、全てが再現されている。
幻影だとわかっていても、目から入ってくる情報には逆らえず思わず身構える。
幻影が拳を繰り出す。
それを思わず受け止めて防御してしまうグリム。
しかし、幻影の拳はすり抜けず幻影には無い重さと感触を感じる。
(そこか!)
キースは中身のない幻影を作り、その中に隠れていた。つまり、幻影に見せかけた本物というわけだ。
キースはグリムから大きく距離をとる。
グリムがニヤリと笑う。
再び《具現魔法》
「行け」
重みのある声で命令すると、狼達が激しく舞う。
何もないところを攻撃し、キースの居場所を炙り出そうという考えだろう。
真横で魔法障壁の発動を感じとる。
グリムは剣を具現化し《移動魔法》で一気に距離を詰め、斬りかかる。
剣は空中で何かにぶつかったように止まり、何もないのに火花を散らしている。
魔法障壁に力を注いでいるせいで《幻影魔法》
魔法障壁に身を包んだキースが姿をあらわす。
そこにすかさず狼達を操り、キースを攻撃させる。
魔法障壁に全力を注いでいるキース。
少しでも気を抜けば突破されてしまいそうだ。
ーーーーー負けるわけにはいかない。
キースはレイラのことを思い出し強く心で思った。
自分を慕う女子の傷ついた様子をみて、負けたのは自分のせいだと、せめて自責の念に駆られないように優勝を勝ち取ろうとキースは思っていた。
ーーーーー負けるわけにいくか!
魔法障壁が急激に膨張する。
グリムは吹き飛ばされ空中に飛ばされる。
キースは移動魔法で空中に飛び、グリムに一気に距離を詰めると、空中でグリムの腹に思いっきり蹴りを叩き込む。
グリムが地面に叩きつけられる。
あおむけに倒れたまま動こうとしないグリム。
「そこまで!勝者、キース・グランハルト」
会場に歓声が響き渡った。
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