第31話 さらなる見た目にショック!
シンは1度深く頷くと腕を組み目を泳がせ、右手で頬をかき、左手で頭をポリポリとかいた。
その様子から怪しさ満載と感じたローズはシンをジーッと見つめた。
「大丈夫。変わってるって、そ、それより、な、何? もう準備万全?」
何度となく、大丈夫大丈夫とシンはローズに繰り返し言った。まるで何か大丈夫で無い事を隠しているかのように。
「私、何も言ってないけどそんなに話し出すなんて何かが怪しいと思って」
「別に怪しくないさ、俺っちだってバレたら危険にさらされるのに今になって嘘はつかないよ」
イライがいないためその言葉が真に真実かを知る術は無いが、シンが言いたい事はよく分かる。つまり、今このタイミングで嘘をついてもシンの得にはなら無いということだ。
しかし、そんな当たり前の弁明でさえローズを納得させ無かった。
そのためそのままジーッと見つめることを続けた。
「ね、もう行こうよ」
「シンは変装しないの?」
「え? そりゃ俺っちは努力の末に消えられるようになったから」
「ふーん。そう」
「ね? もう行こうよ」
ローズは1つ思いつきシンの逃げるような態度への対抗として、
「シンが着てみてよ、どんな見た目か分からなかったらもし白に入って誰かと会話することになった時困るじゃん」
「そ、そうだけど……俺っちが着ても、サイズが」
「ほとんど背格好同じでしょ? それにもともとシンのものだし」
「いや、でも俺っちこれでも悪魔だし」
「じゃあ何? 何か着たくない理由でもあるの?」
ローズは口が滑り核心についての言葉を自分から漏らしたことにあとから気づいて目を見開いた。
が、それを気にする様子も無く、
「俺っちもしつこいってのは分かってるけど、やっぱりさ俺っちが着るのはおかしいって言うか」
そこですかさず、ローズの一睨み、
「…………あーもう……」
これに根負けした様子のシンは現在の状況からはこれまでできた逃げるという選択肢を持てず、
「……ナメクジです」
「え?」
「見た目。ナメクジです」
と丁寧語でローズに口にした。
「ちょっとどういうこと? それ!」
「シッ! 静かに! バレちゃうから」
「ごめん」
少し声を荒立てても城門が動く気配は全く無く、ダミーかと勘ぐってしまうがシンがさすがに場所を間違うことは無かろうと指を立てて静かにするよつ促す眼前の少年姿に視線を戻す。
「何でナメクジ?」
「俺っちもまあ、貧乏で買えたのがそれだけだったってことですよ……変装はいつもそれ」
「じゃあ、使ってたんだ」
「ハイ。消えられない時とか……会話が必要な時とか……」
その言葉にどこか物悲しさを感じつつもそんな事は気にする事無く、
「ねえ、どんな感じ?」
ローズはナメクジの見た目と言われただけではイマイチ想像できずシンに尋ねた。
「と言うと?」
「見た目」
「それは……」
シンは左手で城の前にある池を示した。
自分での説明を避けたようだが抽象的な言葉を並べられるよりはマシと判断。
何故空に浮く城に池が? と思ったがそのような異常はすでに何度と無く見てきたローズにとってはまあ、おかしくないかというのが疑問に対する答えだった。
そもそもローズの体が元はドロドロだったスライムでそのドロドロだったスライムがモンクによって地面に伸ばされ出てきてしまった魂だった幽体をぶつけるとあら不思議、それかま現在肉体として安定しているのだ。
それからというものローズの体がドロドロになったことは無くどういう原理で固まっているのかはスライムになった自身も把握していない。
それだけでは無い。
ローズの身に起こった変化は。
口撃魔法もまた大きな変化だ。
言葉が宙を舞う光景、それが直接は実体あるものに直撃しないことなど、これまた原理が理解できないものではあるがそれでも今では1能力、1機能としてスライムの体の説得力を高めている。ように思っている。
ならばナメクジになることなどさして変化ではあるまい。
今まで2本足で歩く自分を見慣れているとはいえそこまでの変化では無いと踏んでいた。
「…………!」
池の水面に映る自分の姿を見てできたのは手で口を抑え少しずつ水面に映る自らの姿を見えないようにすることだけだった。
ナメクジだった。シルエットも姿形も。
振り返って歩き出せばそれで済んだ話だと見えなくなる場所まで戻ってから気づいた。
顔の強張りを感じながら冷静な判断ができなくなったと自覚した自分の頭でローズは、
「何でこれなの!」
と小さな悲鳴をシンへぶつけた。
するとシンは同情するような表情を浮かべて、
「それしか無いの」
と言った。
そして、
「そもそも俺っちはそれで変装して今まで活動してきたわけ、第一変装という面では見た目が自然ならいいの。ローズちゃんは知らないかもだけど、俺っちたちの城にはナメクジの悪魔って至る所に居るから変装の見た目としてはとても機能がいいの……」
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