第2話 黒の魔法少女

 ベッドを支える四つの足が動いて、寝ている僕を連れ去ってしまう夢を見ました。


 変な夢だったなぁ。


 そんなことを思い目を開くと、見覚えのない、全てがピンクで統一されている部屋にいることが分かりました。


「……え?」


 壁はもちろん布団やマットレス、天涯に付けられたレースのカーテンに至るまで、全てがピンクでした。


 上体を起こし、さらに部屋を観察しました。

 何かお腹の辺りにひっついているような感覚がありましたが、気にしてる場合じゃありません。


「……うわぁ……」


 部屋にはベッド以外、何もありませんでした。

 そう、ベッド以外、何もなかったんです。


 ――出入り口さえも。


 僕はいったい、どうやってこの部屋に入ったのでしょうか? 

 落ち着いて冷静に考えてみましょう。

 …………うん。状況が理解出来てきました。つまり僕は、また誰かに誘拐された、っていうことですね。


 ここは出入り口のない密室です。僕は魔法なんて使えませんから、連れて来られる以外入る方法なんてありません。

 ですから答えは誘拐された。ということになります。

 結論が出たところで、お腹の違和感を思い出しました。

 子どもにきゅっと抱きつかれているような、そんな重みとくすぐるような微風をお腹の左側で感じています。


 密室。抱きつかれているような重み。呼吸に似た微風。

 間違いありません、犯人は布団の中にいます。


 右手で布団をそーっと捲ってみます。

 ――案の定、犯人がいました。


「オブシディアン……」

「ムニャムニャ……ウフフ、ケースケェ……これからはずーっと二人きりよぉ。ウフフ……」


 黒いゴスロリ服を愛用している僕より頭三つ分背の小さい少女、それが犯人で、名前をオブシディアンといいます。

 ちなみに、僕は生まれた国の平均身長より少しだけ背が低いだけです。本当に、少しだけです。

 ゴホン。誘拐犯である彼女、オブシディアンは僕という被害者を抱き枕代わりにして、気持ち良さそうに眠っています。

 普段はまぁ、アレなんですけど。今の彼女は少女らしい、とても可愛い寝顔を見せてくれています。

 なんだか、状況が状況なのに、ほんわかしてきました。 


 髪もオカッパだし……あっ。今はボブカットっていうんでした。どちらにしろ、猫ミミとかつけたらすごく似合うだろうなぁ。……うん、似合う。

 でも猫ミミなんて作ってもらわないと無いし……とりあえず、ナデナデだけしておこう。


 ってそうじゃありません! 


 自身にツッコミを入れて、頭の手前ギリギリで手を引き留めることに成功しました。

 

 ふぅ、危ない危ない。


 一人で可笑しな行動を取ってしまったせいで、ベッドを軽く揺らしてしまいました。ですが、彼女に起きる気配はありませんでした。


 起きない、ですね。ならこのまま、脱出できるんじゃ……


 試しに、オブシディアンの絡み付いている腕を外し、ベッドを極力揺らさないようお尻をずらして移動してみました。

 起きません。

 オブシディアンの呼吸を伺い、眠りの深さをチェックしながら移動を続け、僕は無事床に降り立つことに成功しました。


 第一段階突破です。ですが、ここからが本番です。

 床は大理石に似たツルツルした石で出来ています。もちろんピンクです。そして僕は裸足です。歩けばペタペタ音を出してしまうでしょう。

 ここからはさっきより慎重な行動が求められますね。 

 ……それにしても、

 僕はどうしてこんな姿なんでしょうか? 裸足なのは分かります。僕は寝るときいつも裸足なので、それは分かるんです。でもどうして、上半身まで服を身につけていないのかは、理解できません。


 僕は今、なぜか上だけ裸なんです。寝る前は確かに服を着て寝ていました。なのに今は裸です。つまりこれは、誰かが僕の上着を脱がせた。ということですね。


 部屋を見渡します。でも、ベッド以外部屋には何もありません。

 オブシディアンが服をった犯人とは考えにくいです。

 となると、服をった犯人は別にいる、ということになります。


 ……はぁー。ため息が出てしまいます。

 ただでさえ大変なのに、泥棒被害にまで会ってるだなんて……

 ……服の件は今は忘れましょう。裸で恥ずかしいですが、部屋は適温に保たれていますので問題もないですし、まずはここからの脱出することに専念します。


―――――――――――――――――――


 足音を殺して歩き、無事に壁にまでやってきました。三メートル程離れた後ろでは、オブシディアンが気持ち良さそうに眠ったままです。

 順調です。ですが問題は尽きません。次は有るかどうかも分からない、部屋の出口を探さないといけないんですから。

  

 約五分。至るところを叩いたり押したりしてみましたが、部屋を一周しているだけで、結局出口は見つかりませんでした。


 うーん……床も触ってみたほうがいいかな? それとも、もっと大きな仕掛けでもあるのかな。


 そんなことを考えあごに手を添え唸っていましたら、

 

「……うーん、どうしよう」

「何をかしら?」

「何って、出口が見つからないことだよ。オブのことだからきっと僕を気遣って隠し扉ぐらい用意してくれてるはずなんだけど、思い違いかなぁ……」

「ああ、そうゆうこと。なら正解よ、ケースケ♥ わたしが外出中、貴方がお腹を空かせたらどうしよう。トイレに行きたくなったらどうしよう。隠し扉ぐらいあった方が良いんじゃないかしら? って、一度は思ったもの」

「やっぱりそうだったんだ。うん、オブならそう考えてくれるって信じてたよ」

「ウフフ、そんなの当たり前じゃない。他の誰でもない、ケースケのためなんだから♥」


 そう言って、誰かがお尻の辺りに抱きついてきました。


「……あっ」

 

 考えごとに集中していて気がつきませんでしたが、僕は今、誰と会話をしていたのでしょうか? 

 部屋には僕以外、誘拐犯である彼女しかいません。つまり、会話の相手は……


「あったかい、それに、いい臭い……。ウフフ。それでねケースケ、隠し通路を創造つくろうと思って止めた理由なんだけど……」


 ――ヤバイです。彼女に、オブシディアンに捕まってもうてます。


 緊張で言語が狂いました。それに顔から冷や汗もドバッと出てきています。

 彼女に捕まる。それはもう、僕が二度とこの部屋から出られないこととほぼ同義です。焦って当然ですよね。


「想像してみたの。わたしがいない間、部屋でお漏らしをしてしまったケースケに、お腹を空かせてしまったケースケを、ね。そしたら気付いたの。――ケースケの汚物ならわたし、ぜんぜん嫌じゃないって。それになにより、お腹を空かせたケースケに、“わたし”を食べさせてあげたいな。って♥ きゃっ、言っちゃった」


 血の気が一気に引いてしまいました。

 きっと、僕の顔は今真っ青になっていることでしょう。

 幸い、オブシディアンが抱きついているのは背中側です。冷や汗たっぷりの顔も、今のこの青ざめた顔も見られずに済んでいます。

 

「だから出口は創造つくらないことにしたのよ。でも安心して、出口以外なら何だって創造ってあげる♥ お風呂でもトイレでも、台所でもトレーニング室でも何だってね。もちろん、ケースケがわたしに魔力を与えてくれるなら、の話だけどね」

「あ、あははは……そうだね、オブシディアン」

   

 創造つくる。と彼女が言っている通り、オブシディアンは“場”を造ることに特化した魔法少女です。

 彼女は自分の魔力を変換し、無機物なら何でも生産することが可能なんです。一見いっけん大したことのない魔法に思えますが、衣食住の住には欠かせない、衛生班でも重宝ちょうほうされている珍しい魔法少女なんです。


「あれ? すんすん……ケースケ、変わった臭いがするけどどうしたの?」

「! な、何でもないよオブシディアン!」

 

 冷や汗のせいでしょう。こんな僅かな臭いの変化に気付くだなんて、女の子の鼻はスゴいです。

 てのひらで顔をぬぐってから、お尻辺りをぎゅっと抱き締めている彼女に視線を送ります。それにしても自分のお尻を見るのは中々首にくるものですね。

 僕が首を動かしたのと同時に、オブシディアンも顔を上げてきました。

 見た目八歳ぐらいの、黒髪黒目の少女とバッチリ目が合います。目が合った瞬間、少女の瞳は大きくなり、ほおが上がり笑顔を形作りました。可愛い。

 黒のゴスロリ服も相俟あいまって、お人形さんのように可愛いです。

 ですが…… 


「やっと、二人きりよケースケ。……今日まで、わたしがどれだけ我慢してきたか、分かるかしら? あの戦闘しかできない牛女を筆頭に、バカ共が貴方に触れる度わたしは気が狂いそうだったわ……あ、勘違いしないでねケースケ♥ 貴方を責めてるんじゃないの、わたしが貴方の為にどれだけ我慢していたかを知って欲しくて言っているだけ。それと、あのアホ共がどれだけ無知で恥知らずな妄想女なのかを知って欲しくて言っているだけなのよ。分かるでしょ? だってわたし、知ってるもの、貴方は何も悪くないって。それどころか、わたしの為に嫌々あのアホ女達に魔力供給してたことだって知っているわ。ごめんねケースケ、わたしに力が無かったばっかりに、貴方を救うのがこんなにも遅くなってしまって……。でももう大丈夫。これからは一生一緒♥ この部屋は特に頑丈に創造つくってあるから、あの変なのもこの部屋は壊せない。だから、これからはわたし一人で貴方を守れる。つまりはもう、無能女共は用済み。必要ないの。ケースケはこれから、わたしにだけ魔力補給をしてくれればいいの。……どうケースケ、嬉しぃい?」

 

 と、僕以外に対して口が悪いという、すごくもったいない性格をしているんです。

 こんなに可愛らしいのに、大きな目を爛々らんらんと輝せ、皆の悪口を言いまくるオブシディアン。ギャップが激しすぎです……

 

「…………どうしたのケースケ? 嬉しく、ないの」


 あ……。

 僕が固まっていたせいで、オブシディアンの瞳がにごってきてしまいました。

 これは……ヤバイです。

 オブシディアンは口は悪いですが、根はいい子なんです。僕に攻撃してくることなんてありません。

 けど、瞳が濁ると攻撃性が高くなって、あまり話を聞いてくれなくなるんです。つまり、とても危なくなる。ということです。


「ははは……オブと二人きりかぁ。僕としては嫌じゃないけど。でも、僕がいないと皆の魔力が切れちゃうよね? そうしたら皆が……」

「他の女の話をしないでっ!!」


 !? 悲鳴のような叫びが耳に飛び込んできました。


「今はわたしとケースケの話をしてるのっ! 他の女のことなんてどうだっていいでしょ!?」


 耳が痛いです。

 そしてやっぱり、話を聞いてもらえそうにありません。

 あと腰が痛いです。 

 興奮したオブシディアンが腕に力をかけてきて、腰骨がミシミシ音を立てています。

 見た目が幼くても、彼女もれっきとした魔法少女です。僕以上の力を発揮することなんてとても簡単なんです。

 

「あ、あのね、オブ。話の途中でごめん。腰が、割れそうなんだけど……」

「……腰? あっ!」

 

 パッと、腰の重圧が消えました。

 同時に、僕はその場にへたり込んでしまいます。

 そこまで痛かったわけじゃないんですけど、なぜか脚に力が入らなくなっていたんです。


「ケースケ!? ……わたしのせい、よね。ごめんなさい、痛い思いをさせてごめんなさい! ごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさい……!」

 

 謝りながら、オブシディアンは僕を壁に寄り掛からせてくれました。さらに上に跨がってきて、僕の頬を両手で挟んで、潤んだ瞳で真っ直ぐ見つめてきました。

 彼女の瞳にはもう、先程までの凶気染みた暗い色はありませんでした。いつもの、優しいオブシディアンに戻ってくれたみたいです。


「オブ、大丈夫。心配ないよ。もうなんともないから、安心して。まぁ、ちょっとびっくりして腰は抜けちゃったけどね」

「本当? でも……」

 

 すぐにでも決壊してしまいそうな程、彼女の瞳には水が湛えられています。

 僕だけが、この洪水を止められる存在です。

 女の子の泣くところなんて、見たくありません。ですので僕は、この洪水を止めるため、オブシディアンの艶のある髪に手を差し込んだんです。


「んにゅ!? えっ! ああっ! だめよケースケェ、そんなことされたら…………はゆぅぅぅ!」

 

 僕がやった行為は、いわゆるなでなでです。

 前髪の生え際から後ろ髪にかけて、髪をくように、繰り返し繰り返し撫で続けます。


「……えへ、えへへへへへへへへ」


 先程まで溢れんばかりに水をたたえていた瞳は、どこへ消えてしまったのでしょうか?

 今、彼女の顔を支配しているのは、涎を垂らしてしまいそうなほど弛みきった極楽な表情です。

 これは……やりすぎてしまった。ということでしょう。

 でもこの状態ならもしかすると、お願い事も聞いてもらえるかもしれません。


「ねぇオブ?」

「なぁにケースケ♥」


 僕の胸に身体を預け、上目遣いにオブが答えます。


「ここから出して欲しいなぁって、思うんだけど……」


 急に、室内の温度が五度程下がったような気がしました。

 僕の手はオブシディアンの後頭部を撫で続けています。密着している彼女の姿勢も変わっていません。

 ですが、彼女の表情だけは、一変してしまいました。


「フゥン……」


 真顔です。

 胸の辺りから瞬きを一切しない瞳が、こちらを見つめています。

 正直、背筋が凍りそうです。


「まだ、そんなことを考えてたの? ふぅ……本当はこういうことをするのは嫌いなんだけど、仕方ないわよねぇ? ケースケが、わたしのケースケが。あんな下品なアホ女達に毒されて、世迷い言を言うんだから、多少手荒なことをしたって……仕方がないわよねぇぇ」


 あ、地雷踏んだ。そう思いました。

 苦笑いしか出来ない僕を、立ち上がったオブシディアンが見下ろしてきます。そして、しばらく立ち止まっているだけだった彼女が、一歩横にズレて手をパンと叩きました。

 音に反応したんでしょう。ベッドの天涯を支えている四つの柱、その一つ一つから、手錠付きの鎖が僕に向かって飛び出してきたんです。

 鎖は蛇のように、僕の手首と足首を狙っい、向かってきます。

 ガチャン。足首は避ける間もなく、あっさり捕まってしまいました。


 手まで捕まったら終わりだっ! 


 咄嗟とっさに手を上げ、一度は回避に成功しましたが……


「……あれ?」


 鎖は意思があるかのように瞬時に向きを変え、僕の両手首を手錠内に納めてしまいました。


 手と足。四肢を封じられてしまった僕に

はもう、逃げ場がありません。


「ウフフ、ケースケ、っかまえた♥ さぁ、あの毒女どくおんな共の消毒と消臭をしましょお。大丈夫、痛いことなんて何一つしないから♥ ただ、ベッドでわたしから二度と離れられなくなるだけ。それだけだから♥ そしてゆっくり、二人だけの時間を過ごすの♥ 二人の命が消えてなくなる、その時までずっと、ね。ほら、何も怖いことなんてないでしょお♥」

 

 鎖に引き摺られていく僕の隣を歩きながら、オブシディアンは恍惚な笑みを浮かべて言葉を並べてきます。


 これは、ジ・エンドです。

 こうなったらもう、僕一人での解決は無理です。誰か、助けにでもきてくれない限り、僕は残りの人生をベッドに繋がれたまま過ごすことになってしまいます。


 本当に情けないですが、心の中で助けを求めました。

 誰か、助けにきてください。グランさん。カナリーさん。パイロープさん。お願いです。僕を、守って下さい!


「……フゥン。やっぱり、ケースケはアイツらに毒されてしまっていたのね。わたし以外の誰かを求めるだなんて、正気じゃないもの」


 ビクンと、身体からだね上がりました。 


「フフ……いい反応ねケースケ。でも大丈夫。貴方の想いは届かない。この部屋に誰かが来るだなんてそんな事、わたしが許すとでも思う?」

「…………え?」

「だってそうでしょ? わたしはね、この時をずっと待ってたのよ。計画を立てて準備して、最高のタイミングが訪れるのを、ずっと待ってたのよ? それを実行したんだもの。邪魔が入るような状況を、わたしが許すと思う?」


 彼女の問いに、僕は魚みたいに、口をパクパクさせることしかできませんでした。


「ウフフ、可愛いわよケースケ♥ 気分がいいから、特別に教えてあげる。良く聞いてねケースケ。わたしはね、アイツら、敵の襲来を待ってたの。なるべく強くて、魔力の消費が多くなる敵の襲来を、ね。わたしの心配はあの意味不明な敵よりも、野蛮やばんな戦闘班の牛女達だったんだから、当然でしょ? アイツらの魔力さえなければ、この愛の巣に侵入できる外敵は存在しなくなる。カナリーやクロム、タンザナイトやインペリアルじゃここには入ってこれないもの。それぐらい、この部屋は頑丈なの、素敵でしょ? それにね、確認してきたから分かるんだけど、今日の敵は予想以上に強力だったわ。……きっと今頃、動けるのはグランぐらいじゃないかしら? 他はみーんな、魔力切れでひぃひぃ言ってるでしょうね」

「……は?」


 ――今、なんて?

 僕を引き摺る鎖が、動きを止めます。

 きっと、僕が床に爪を立てて、全力で抵抗しだしたからでしょう。

 

「ちょっ!? ……ケースケ、爪が剥がれてしまうわ。抵抗するのをやめて」

 

 オブシディアンは真剣に、僕の身体を心配してくれています。でも、抵抗するのは止めません。

 

「オブ。すぐにこの鎖を外すんだ。そして僕をこの部屋から出して欲しい。――僕は、皆に魔力を分けてこないといけないんだ」

「……許すと思う?」

「オブ」

「ダメ」

「お願いだオブシディアン」

「ダメよ! 絶対にダメ!」

ぃつっ!!」


 指に強い痛みが走りました。

 鎖の力が上がり、僕を引き摺ったせいです。

 痛みに負けて、少し引っ張られてしまいましたが、今度は足の爪も立てて引っ張られるのを止めました。

 

「オブ、お願いだ。僕をここから出して。僕は皆を助けたい。違う、助けなきゃいけないんだ」

「……ダメよ、ダメったら絶対にダメ!」


 僕が動かなくなった代わりに、オブシディアンが後退さがり、壁に背中をぶつけました。

 

「お願いだオブシディアン!」 

 

 ゆっくり首を横に振り、オブシディアンは否定します。少しして、彼女は右手を上にあげ、力強く振り抜きました。

 次の瞬間、僕の手足はものすごい力で引っ張られ、身体ごとちゅうに浮かび上がっていました。


 そんな――

 愕然がくぜんと宙を舞う僕の眼に、さらに衝撃的な映像が飛び込んできました。


「ガハッ!!」 


 オブシディアンが背を預けていた壁が破裂し、僕よりも早く、ベッドの方に向かって飛んでいったんです。

 

 丁度ベッドの上に落ちた僕と違い、オブシディアンはベッド隣、ただの床に落ちていってしまいました。

 オブシディアンは心配ではありますが、それよりも僕の眼はガラガラ音を立てて崩れる壁に集中してしまっていました。

 壁の中から、舞い散る粉塵ふんじんを気にもしないで、彼女は姿を現せました。

 

「……無事かいな。トウドウケイスケ」 


 茶色の瞳と大きな身体、そして特徴的な髪をした魔法少女、タイガーアイさんです。

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