第25話 夜の悪戯

夜になった。食事を終え、琳音に連れられて公園まで足を運ぶ。着くまでに俺が見たものは何だっただろうか。山菜を切って茹でた質素なサラダと、鶏肉のトマートスープが今夜の食事だったが、播磨一家は琳音に合わせているのだろうか。


 とりあえず夏休みの間、俺は部屋で過ごすために三万円を払って食事、洗濯、挙げ句の果てには希望すれば掃除までしてもらっている有様だ。もっと払ってもいいのに、と思ったが一〇万円しか貯金がなかった。


 専業主婦とはいえ、播磨さんはちょっと俺たちのために色々してくれている。その理由を聞くたびに彼女はうつむいてこう言うだけで、俺は何も知らない。


「まあ、むかしね。私も拓也と同じことをしてたから。君たちと」


 一体何者なのか不審に思いつつも、俺は琳音に涼しい夜の風が吹く中、髪がなびく様をみながら聞いた。


「なあ、播磨さんって何者なんだ?」


 すると琳音も香澄さんと同じように少しうつむいて、やがて顔を上げて俺に悲しそうな笑みを向けた。


「あの人はな……」


 眼を丸くして琳音が隣の俺を見つめる。言っていいのか否か、迷っているような顔だ。そうそう。琳音にはいつも秘密が付きまとってきた。これは播磨さん一家の話だが、夫婦の話になるとなかなかやばいものになるらしい。

 ますます琳音と播磨一家、いや夫妻に対する何かこう、さす影が深くなっていく。ちょうど駅に入ると、俺の目に入ったのはカラオケスナックのネオン看板。


「ここの階段を越えて歩けば藤峰公園だよ」


 琳音と誘う声に、俺は我に帰ってその手を繋いだ。


「やっぱり風呂から上がっただけあって、お前の手はあったかいなあ」

「うふふ。真夏はやっぱりおとぼけさんだな」

「なんだよ……。まあいいけど」


 さあ、行こう。琳音は俺の手を引いて、そのまま電灯に照らされた緑色の階段を上がっていく。屋根から柱まで、全てが淡い緑色で彩られたそれは、俺にとってどこか新鮮な光景だった。まあ、ただの地元民の使う階段なんだけどな。

 それから階段を降りて藤峰公園へ行く道沿いを歩くと、たくさんあるわあるわ駐車場。普段の利用者数とは違って、なかなかその台数は多い。どうやら、廃線跡を利用したらしいがその割にはあまり栄えていない。


 寂しい駐車場さえ越えて行くと、そこには琳音が声を上げながら山の中腹を歩く姿があった。この細い体からよくそんな体力がついているなあと、よく感心させられる。


「ねえ、真夏ってどこまで射精できる?」


 いやらしいニヤケ顔をする琳音に、俺の中でスイッチが入ってしまった。琳音を星空の下で押し倒すと、彼はどこか青ざめた表情で固まっている。


「なっ、なにを……んんっ!」


 ポッケに忍ばせた猿轡をはめ、ホームセンターで買った縄で手足を縛る。その技は藤峰に来る前に練習していたから、大体数十秒で終わったか。縄をギリギリ言わせ、猿轡から唾液を垂らした琳音が俺を睨みつけている。

 そんな琳音に俺が見せたのは電マ。


「これの意味、分かるよなあ?」


 琳音が足で抵抗してくる中、俺は琳音の下着を剥ぎ取って公園の原っぱへ捨てる。そしてそのペニスを手に取って鬼頭に電マを当てた。ブルルと音を立てながら震える電マが琳音のペニスを刺激する。徐々にそれは上がっていき、青筋も立って立派に勃ち上がった。勃ったままのそれを握りながら金玉を指で弄ぶと、琳音が射精した。


「んーっ! んーっ!」


 涙を流しながら公園の原っぱへへたり込む琳音を見て、俺はまた鬼頭に電マを当てた。すると琳音が暴れ出して馬のように喘ぐ。


「んん……っ、んんーっ! んん…んっ」

「おお、何か言いたげなようだなあ」


 俺は琳音がさっき俺に見せたような笑顔を見せて、一度猿轡を外す。唾液で汚れた口周りはなかなかいやらしくて、俺の性欲をいい程度に誘ってきた。


「ちょっと真夏、どうして……?」


 俺がよだれにまみれた琳音の顎を指で撫でると、彼はそのままどこか打ちひしがれたような表情を見せてくる。ああ、なんというか。絶望に満ちたその顔を見たくはなかった。それでも、なぜか俺のペニスは徐々に勃ち上がってきている。


 琳音が膨らんだそれを見て絶望した顔を見ていると、なかなか素敵なSMショーを行いたくなる。


「わりい、琳音。お前の顔を見てるといやらしい気分になってくるんだ。だから、しっかり処理してね。俺の性欲」


 琳音をまた押し倒して、今度は琳音に俺の下着からペニスを出させる。ピンと勃ったそれを見たのか、琳音は「おお……」と小さく声を上げつつも、舌で舐め始めた。

 こうしてお互いシックスナインの体勢になってペニスを舐め合い、金玉を舌ですすったり手で刺激して射精した。


「琳音、お前ったら何度でも出るんだな」

「当たり前だろ? お前を思ったら、何度でも出るさ……」

「最高記録は?」

「…………」


 起き上がった琳音が俺の精液にまみれた顔で笑いながら答えを出し渋る。眉を下げたその顔に、俺は耳元でささやいてやる。


「まあたお前のペニスに電マ当てちゃうぞお?」

「……十二回!」


 瞳を閉じて、羞恥心を捨てた琳音は山の中腹から大声でオナニーの射精回数を叫んだ。するとハッと気付いた人もいたのか、半袖のカップルが俺たちを睨みつけてきた。


「なんだよ睨みつけて! セックスするならもっと射精しろ! 相手のことを思う時は名前を大声で呼んでやれ!」


 そう叫び出す琳音を止めながら、俺は聞く。


「お前ってオナニーでかなり抜くんだな」

「賢者タイムもないんだよ。……真夏がいなかったから」


 そうジト目で恥ずかしがる様が可愛らしい。琳音のこういうところが好きで、俺はずっと四年間を琳音の夢と共に過ごしてきたのだ。


「真中に見せてやりたかったな」

「ああ。きっと悔しがっただろうぜ」


 肩を寄せ合いながら恋人と見る星空は綺麗で、それは都会のものとは到底想像がつかないほどに美しかった。まあ、こんな陳腐な言葉を使っているが、俺たちは下で睨みつける恋人たちを無視して星を見やって笑い合ったのだった。

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