第23話 真夏と琳音

「撮影を終えたらこのメアドに動画を送って」


 そうひとこと言って、真中は部屋から去っていった。家の主人である香澄さんも着替えに出て部屋には俺と琳音、ふたりだけだ。


 クーラーがガンガン効いた部屋で、とりあえず大きなダブルベッドの上に座って琳音と今後のことについて考える。


「これからどれくらいいる予定?」

「うーん……。お前と播磨さんが迷惑じゃなかったら夏休み中はいるよ」


 その答えに琳音は顔を明るくして、どこか嬉しそうに抱きついた。琳音の汗がいい匂いでジメジメしていてもどうしてだろう、嫌いになれない。


「ほんと?! 俺、真夏のことやっぱり大好き!」


 笑顔で俺を見上げながら、自分の瞳に俺を写し込む琳音の瞳。この瞳が数年前よりも澄んでいるように見えた。ラインでよく真中の話を聞いていたが、まさかここまで精神的によくなっていたとは……。


 俺は年下の少女である真中にライバル心ともいえる情を抱き、内心燃え上がった。俺から琳音を奪い取ろうとする奴がいる。しかもそれが年下の女子……。まあ、こんな状況になるとは思わなかったが、嫌いなシチュエーションではない。


「琳音」

「なあに?」


 無邪気な瞳で見上げてくる琳音を、俺はベッドの上に押し倒した。ベッドのバネが軋む音が聞こえる。この小さな美少年は、一瞬何が起きたか分からなかったようで不思議そうな表情をしている。


「ま、真夏……? これから何すんの……?」


 赤い頬をして、俺の目線から目をそらすその仕草が好きで、俺はずっと琳音が視線を変えるたびに自分の視点も琳音に合わせ続ける。そうすることを何分続けただろうか。琳音が目をつぶって恥ずかしそうに聞いてくる。


「なんでこんなことをするんだよ……?」


 その質問に俺はニヤついて答える。


「お前の恥ずかしがる仕草が好きなんだ。だから悪戯でついこんなことをしちまう」

「そこは変わってないんだな。あっ、このシーンを動画に撮ったらよかったんじゃねえか?」

「あっ……」


 ふたりだけの部屋で撮りたかったイチャイチャをちょうど今やっていたのに、真中が置いていったスマホに収めるのを忘れていた。

 後悔してももう遅い。恋敵とはいえ、残していったものはせめて利用して、Youtubeで俺たちのイチャイチャを披露したかった。


 ベッドの上に座り、落ち込んでいると琳音が例のスマホを持ってきて、俺に渡す。


「まあ、まだチャンスがあるさ。三脚だってあるんだから、テーブルの上で俺たちのイチャイチャを収めればいいんだよ」

「琳音、そうか……!」


 俺は琳音を抱きしめて、その体の柔らかさを改めて感じとる。肌は吸い付くように柔らかくて、弾力がある。外見からすればかなり細いのに、まだこんな柔らかい部分が残っていたなんて。

 俺は驚きながらも、改めて琳音をまたベッドへ誘おうとする。


「……なあ、ベッドでまたやらないか? 視線おいごっこ」

「……恥ずかしいからやだ。でも、ベッドで今度は真夏と一緒に寝たいな。寝るくらいならいいだろ?」

「ああ」


 俺は琳音をベッドに運んで優しく置いた。ベッドの横幅に比べたら琳音の肩幅はかなり狭く、本当に男なのかと疑ってしまう。まるでモデルの美女と致す前のような光景がそこには広がっていた。

 思わず唾を飲み込んで、汗が流れる瞬間を実感してしまう。これから映像の中で俺たちはイチャイチャするのか。AVの撮影をするときのような緊張感が俺を襲った。この動画を外国人の女性が編集して、投稿するのだというから尚更。


「ねえ、なに緊張してんだよ。早くやって」

「な、なにを……?」


 すると自分に主導権があることに気づいた様子の琳音がニヤけて、調子に乗った態度で俺を挑発してくる。


「キス。ちっちゃい頃はやったじゃないか。夜の湖水浴場の中で、ふたりで何回も唇を重ねて、体を合わせて……。キスをした後で抱き合った時にみた満月はそりゃもう美しかったなあ……」

「おっ、俺たちは確かにキスをしたし、体も重ねた。でも裸にはならなかっただろ? エッチなことはしなかっただろ? しっ、視聴者を勘違いさせないでくれよ」

「うふふ」


 さっきまで乙女のように可憐だった琳音が、小悪魔のように目を細めて笑った。彼の体から漂う桃花の香りも効果を表してか、どこか妖しい美女のようだ。例えるなら……、つるぺたな峰不二子。

 この男版峰不二子には少々お仕置きが必要なようだ。どこかで火がついた俺は琳音のワンピースに付いたリボンをとって、ボタンに手をかける。ちょうどエプロンに引っかかったところでそれが邪魔になったので、琳音に命令する。


「エプロンを脱げ」


 よそよそと起き上がってエプロンを脱ぎ捨てた琳音は、シックな黒ワンピース姿でまた横になって俺に舌を出す。


「今度は真夏の番だよ。どこを脱がせてもらおっかなあ?」


 丈の長いワンピースの裾から姿を現すのは黒いガーター。片脚を曲げて、天井へ伸ばすその姿に俺はまた喉を鳴らす。


「どこでもいいぜ。お前が望む場所なら、どこでも」

「…………」


 俺は半ばひざまづくような形になって琳音のガーターベルトから、黒いニーソックスに手をかける。視線とスカートの中身がチラチラと目が合うのが妙に性的な感情を誘い込んでくる。


「お前、女物の下着を履いてるんだな。しかも白いフリルの……」

「あーっ! もうこれ以上言うな! 俺の下着は秘密なんだから」

「これYoutubeの規約に引っかからないかな?」

「そこは監督が編集でなんとかしてくれるっしょ。もしかしたら年齢制限がついてたりして」


 あはは。そう笑う琳音に俺は安心した。四年前、近江舞子の湖水浴場で出会った時はかなり弱っていて、なかなか笑顔を見せてくれなかったから少しずつ前へ進んでいるような気がした。


「琳音……」


 そう名前を呼びながらゆっくりとニーソックスを脱がせていく。徐々に現れる白い肌はまるで絹糸のように柔らかくて、白い。脚も葦のように細いのがまたそそる。


「真夏……。大好きだよ」


 何気なくそう言われた一言。その時、俺の視線は琳音の足の爪に行っていた。赤いネイルで彩られた琳音の爪から太ももまで、琳音の下半身全てが芸術品のように思えたのはどうしてだろう。


「俺もお前のこと、好きだよ」


 俺と会うためにネイルまでしていたと想像するだけで滾ってしまう。俺は琳音の汗ばんだ白い脚に口付けをして、その口で彼の太ももまで上がっていく。


「ちょっ、やめろよ。くすぐったいったら」


 やめて欲しがっている琳音も声を上げながら笑っている。いくら片脚で背中をゲジゲジされても、喘ぎ声をあげられても俺はその行為をやめなかった。

 太ももの汗を舐めて口付けをすると、目線にはすぐ目の前に白い下着が。もちろん俺は自身の行為を止めずにそのまま下着にも手をつけた。


「ちょっと真夏、やめてくれよ」

「やめない。お前、今日のためにこの下着を選んでくれたんだろ?」

「……まあ、そうだけど……」


 赤い顔をさらに紅潮させた琳音とまた目が合う。その琳音はどこか恥ずかしそうで、これから始まる行為に未来を見ているようだった。


「おっ。お前はTバックを履いてるのか。こう見えてエッチな奴に成長したな」

「でもさっきさ……、貞操を守る人が好きだって言ってなかった?」

「女ならな。でもお前は特別なんだよ。男、女、琳音って枠があるんだ」

「…………」


 これ以上琳音が言葉を発することはなかった。彼の下着越しに立派に勃ったペニスにしゃぶりついて鬼頭を探そうとする。あちこちを吸いながら探すと、時々琳音が体をヒクヒクさせて小さく喘いだ。


「いやっ……。あんっ……、そこじゃない」

「じゃあどうしよっかなあ?」

「脱がせていいよ。Tバック」


 そう答える琳音は涙声だ。どうして泣いているのか分からないが、俺も正直言って泣きたい気持ちだ。

 Tバックの結び目を解いて脱がせてやると、立派にペニスがピンと勃ち上がって、青筋が通っていた。皮はすっかり剥けて、もう立派な大人のペニスだ。それなのに。


「琳音、お前パイパンなんだな」


 すると琳音は赤い顔を両手で隠しながら、消えるような声で答えた。


「だって……。みんなこうじゃないの?」

「違うぞ。日本では下の毛は剃らないんだよ」

「じゃあレッテだけなんだ……」

「いや、趣味だから人それぞれだな」

「……エッチ」

「お前もな」


 俺が琳音の鬼頭を舌で一回、滑らせるように舐めると更にペニスは硬くなって琳音は恥ずかしそうな表情をした。


「お前のペニス、美味しそう」

「飲まないでね」

「分かった」


 そう言って俺は恋人のペニスを食む。すると、琳音が小さな喘ぎ声を上げながら体をまたヒクヒクさせている。体が熱い。根元から鬼頭まで、自分の大きな舌で舐め上げてやると琳音のペニスから一度白いものが発射された。


「……オナニーは声を立てないでやってたのに……」

 琳音がどこか消えそうな声で口にする。

「監視カメラに見られないようにか?」

「……うん」


 監視カメラ越しに美少年のオナニーを見る監視者のことを想像すると、俺も下半身が熱くなってズボンのチャックを下ろした。


「お前もすること、分かってるよな?」

「…………」


 琳音が起き上がって、俺の下着からペニスを取り出して小さく驚いた。琳音が尻餅をついたせいで、またベッドが軋む。


「で、でかいよ……」


 頬を赤らめて俺から視線を背ける琳音。だが手には俺の立派なペニスが握られている。これをよしとした俺は琳音に命令した。


「よし、歯を立てるなよ」

「…………」


 命令から早速何も言わず、彼は俺のペニスを口にする。俺のペニスは琳音の吸引力が凄くて、すぐ射精してしまった。それからすぐ、顔中が俺の精液で真っ白になった琳音が、俺の勃ち続けるペニスを握って片手でピースする。


「イェーイ、アレックス見てるう?」


 Youtubeにきっとこれ、上げられねえな。そう笑う琳音の姿を見て俺も琳音の頭を掴んでペニスを咥えさせる。


 琳音が苦しそうに呻き声を上げながら喉奥に俺のペニスを突っ込まれる。いきなりだったからか、琳音も準備ができなくて苦しいだろう。それでもやはり掃除機みたいにペニスを柔らかい舌で包んで吸い込む琳音は、娼婦のような性技スキルを持っている。


 やがて俺が琳音の口に出すと、解放された彼は顔中を真っ白にして酸素を求めて息を吸い込む。


「…………」

「はあ……。真夏、ずいぶんと攻めてくるなあ」

「琳音で抜きたくて、ずっとしてもらいたい技を考えてきたんだ」

「だからって、バキュームフェラはきついよ」

「だな、ごめんな。で、顔が俺の精液でこんなになっちゃったわけだが……。写真に撮っていいか?」

「いーよ」


 俺は自分の精液で汚れた琳音を写真に収めようと、アプリを起動させる。少し古い型のせいか、画面がブレているが気にしない。


「ほら、琳音。笑って……」

「ピース!」


 四年前に琳音がされて辛かったことを俺もした。罪悪感を覚えながらも愛しい人のハメ撮り写真を撮る感覚は背徳感ともいえるだろうか。どこか色っぽい琳音を写真に収めながら、また琳音が俺の上で腰を振る妄想をしてズボンの中で射精したのだった。

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