『山月記』を元にしたパロディという形を取っていますが、カクヨムのユーザーであればぜひ読んでいただきたいと思う辛辣な秀作です。主人公を俯瞰で見るような冷静な視点から、この作家志望の男の創作に対する心情の歪みをくっきりと描き出してあります。それは傲慢さであり、言ってみれば無理やり作り上げた自己肯定。
対極的な立場にある「リア充」な友人が、読み手として、また一人の人間として、この男のおごりを見抜いてしまうところはまさに的を得た分析で思わず頷かされます。
文章には端々にクスリと笑わせる皮肉が散りばめてあり、そこも非常に魅力的です。
男の部屋の分厚いカーテンが象徴するもの。それはプロであろうがアマチュアであろうが、書く者みながもしかしたら陥る可能性のある危うさではないでしょうか。
とにかくおすすめの一編です。ぜひご一読ください。