第11話 姫さまとライバル登場3
「こちらでございます、姫さま」
「ほう。確かによく見えるの。で、パリエはどうじゃ?」
客間隅のクロークから、姫さまと私は中の様子を伺います。
「丁度パリエ、もとい偽姫さまが入ってきたようです」
「おお、間に合ったか。急いで先回りした甲斐があったの!」
なんだか楽しそうですな、姫さま。
「ノーラ! 来るのが遅い! 何分待たせるのよ!」
客間に甲高い声を響かせるのは、本日の御客人、デナリ姫。
西国の自治領主の一人娘にして、姫さまより一つ年上のお嬢様でございます。
あ、ちなみにノーラというのは我らが姫さまの御名です。
ああ、御名の響きを聞くだけで失神もののかわいさですな! ノーラ姫最高!
(相変わらず、うるさい奴じゃ)
ばれないように小声で、姫さまが毒づきます。
(デナリ姫は昔から、姫さまをライバル視しておられますものね)
(あと、気が短すぎ)
ムスッとふくれっ面の姫さまもMORE MORE カワE!
「相変わらずうるさいのう、デナリ」
偽姫さまに扮したパリエが、普段の姫さまを忠実に再現して言い返します。
(よし! いいぞパリエ。もっと言ってやるのじゃ!)
野次馬姫さまもKAWAIIIIIII!
「このデナリさまがわざわざアナタのファッションチェックをしにきてあげたのだから、感謝しなさい!」
「ふーん、先週来たばかりじゃがの」
「う、うるさい!いいから見せなさい。‥ん? むむむ?」
パリエ扮する偽姫さまの身体を、舐めるように見回し始めました。
(おい、セバスチャン。あれは、疑ってるのではないか? ひょっとして、ばれてしもうたか?)
まあ、疑っているのは確かですが‥おそらく変装ではなく‥
「ノーラ。アナタ、なんだか胸が大きくなってない? 先週まではえぐれるかってくらい水平まな板のちんちくりんだったじゃない」
「成長したのじゃ」
「う、ウソおっしゃい! …確認させてもらうわ」
(プププ! デナリのヤツ、うろたえておるわ!)
(まあどう見ても姫さまより大きいですからねえ。先週もいらしてましたし、驚きもしますよ)
「うっ…ほ、本物だわ…」
(あはははは! 見ろセバスチャン! あのデナリの表情! いや~愉快ユカイ!)
(……よろしいのですか?)
(はは…ん? なにがじゃ?)
(あの姫さまは確かにデナリ姫よりお胸が大きいですが、明日からはどうするおつもりです?)
(はっ! そ、そうか! あれはわらわじゃないんじゃった!?)
とたんにアワアワと取り乱す姫さま。
そうとは知らずに、偽姫さまは調子に乗って続けます。
「言うたじゃろ。これに懲りたら、もう年上づらするのはやめるのじゃな」
「くうぅ~」
「これからはわらわの事はオトナフェロモン全開のノーラ姫様と呼ぶのじゃ。そうすれば、お主にも胸を大きくするコツを教えてやろう」
「ほ、本当?」
(わーーーーー!! や、やめるのじゃパリエ!)
(い、いけません姫さま! ここで出て行って偽物だとばれれば、それこそ明日からどんな扱いを受けるか知れたものではございませんぞ!)
(うう~)
慌てふためく姫さまもかわいいなあ~。
それにしても、パリエが代役を務める時点で胸の大きさでばれるのは間違いないとは思いましたが、まさかこのような面白展開になるとは…。
GJ! パリエ!
「き、今日のところは失礼するわ…。またね、ノーラ姫…様……」
肩を落としつつも、どこか羨望のまなざしを向けて、デナリ姫は退席されました。
(ううう…)
いっぽう、頭を抱えこの場で崩れ去る姫さまを尻目に、私は大役を務めたパリエとこっそりサムズアップ。
これだから姫さまの執事はやめられませんなあ!
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