第3話 姫さまと行商人2

緊張した趣ながらもそこはやはり王族の血がなす業なのか、謁見の間に入られた姫様はとても気品がある様子で、凛とした表情で玉座に着かれています。


一見興味なさげに片肘をついてため息なんか洩らしちゃってます。



ああ、あれで内心、ものすごーくドキドキしているんだろうなあ!


頭を垂れる行商人の傍らには、なにやら大きな包みが置かれています。おそらく献上の品でしょうか……。


ああ、普段から好奇心旺盛な姫様、きっとあの中身が気になってしょうがないんだろうなあ!


先ほどから、「早く始めぃ!」と言わんばかりにこちらへチラチラと視線を送ってくる姫様。


ふふ、口元が少し弛み始めていますよ!

かわいいです!



……ふう。


さて、あまりじらすと後でご機嫌斜めになってしまわれるだろうし(それもまたかわいいのですが)、そろそろ始めましょうか。


希望の光を差し伸べるべく、私が宣言します。


「本日の皇女様への謁見を始める。謁見希望の者、これへ」


「ははっ」


行商人は節目がちにしたまま、一歩前へ出て、一礼。


「本日謁見に賜りました、アゲトールと申します」


「うむ。苦しゅうない。よくぞ参った」


うーん、このGIKOCHINASA!かわいい!KAWAII!


「皇女様におかれましては本日もご機嫌麗しゅう……」


「の、能書きは別に良い! して、わらわの目にかなう相応の品を持ってきたのであろうな!」


うわっ、やっぱり我慢してた姫様! いきなり本題に行っちゃいましたか。


行商人のアゲトールは一瞬驚いた表情を見せたものの、場慣れしれいるのか何事もなかったようにてきぱきと献上品の準備を始めた。


「もちろんでございます。ではさっそくお見せいたしましょう。私が世界各地を巡り手に入れた稀代の名品」


「な、なんじゃなんじゃ!」


ああ、そんなにも身を乗り出して。さっきまでの気品が早くも消え去ってしまっていますよ、かわいいなあもう!


行商人は、傍らに置いていた包みを解き、ガラスの靴を取りだした。


「これぞ、この世にたった一つの名品、【バカにしか見えないガラスの靴】でございます!」


うっ、そうきたか!まさかこの者、私と気が合う予感が致しますぞ!


案の以上、期待に違わず、興奮を抑えきれない様子で姫様はこう答えました。


「ほう、なんと美しい! もっと近くで見せよ!…………あ」

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