第3話 テレパシー……?
夕飯を食べ終えた俺は自分の部屋に戻り、能力の確認をしていた。
『テレパシー!』って叫ばないと効果でないとかかな?
「テレパシー‼︎」俺は大声でそう叫び、手を両耳にかざし耳を澄ます。
すると1つの声が聞こえてきた。
「うるさい!」……妹か……
あいつの声はテレパシーで読み取らなくても聞こえる声量だな…
「す、すまん」俺は小声で謝ると階段を登ってくる音が近づいてくる。
怒られる……悪かったって〜〜……
「お兄ちゃん! ちょっとあけて! 」妹の声は怒気が混じっていた。
「悪かったって! もう叫ばないから怒らないで!」妹は怒るとめちゃくちゃ怖い。
死のうかと思うくらい怖いのだ。マジで……
「怒らないから! 」いや怒ってますやん……
俺はゆっくりと扉に近づき鍵を開ける。
「開けて!」妹は俺が鍵を開けたことに気付いてないのか、まだ怒鳴り散らかしている。
「あ、開いてるよ……」俺の声は今にも泣き出しそうなぐらいだ。
「あ、ほんとだ。」妹はそういい扉の隙間からひょいっと顔を覗かせる。
それ癖なの?
「な……なんでしょうか……美幸様……」つい敬語になってしまった。
「な、なんで敬語なの……」妹はこいつキモッ! みたいな顔で見てくる。
「い、いや……つい……」俺は妹の眼光に耐えきれずそっぽを向いてしまう。
「また変なことしてないか心配なんだよ……お兄ちゃん時々変になるから。」
妹の顔は怒っていたが、なんだか赤みがかっていた。
「ご、ごめん……もう……しないから……」
俺は思い出したくなかった、なにが正解かわからなかった。
でも妹がいる限り、家族がいる限り、大切な人がいる限りは生きようと決心したのだ。
「じゃ、私もう寝るね、おやすみ。」妹はそう言いそそくさと部屋から出て行ってしまった。
「おやすみ……」俺が妹が見えなくなるまでその背中を見つめていると妹の小声で囁く愚痴が聞こえてきた。
「まじで世話焼かせるんだから……あの馬鹿……」……聞こえるように言うなよな……
「世話焼かせアホ兄ちゃんでごめんな…」
俺は嫌味混じりにそう言うと、ドドドドっとこっちに向かってくる音が聞こえてくる。
勢いよく扉が開いたと思ったらそこにいるのはなんだか焦った様子の妹だった。
「なんで聞こえてるの?」
妹の瞳の中には好奇心と恐怖が入り混じっており、夕日の指す光によって少し赤みがかっている。
「え?」
俺は妹がなにを言ってるのか理解できず、拍子の抜けた声でそういった。
「私今声に出してないんだけど…。」
そう言う妹の声はなんだか少し震えている。
「テ、テレパシーだ!」俺は思いっきりそう叫んでしまった。
妹はなにいってんのこいつ?みたいな視線を俺に刺してくるが、そんなのお構いなしだ。
「おい、お前の心臓を握り潰してやるぞ!」俺は高揚してしまい、ついふざけたことを言ってしまったが、
その勢いは誰にも止められなかった。
俺はドラゴンボールのクリリンがフリーザにやられた時のことを思い出して、
妹の数センチ前にある空間をギュッ! っと握ってそれを高く上に持ち上げる。
もちろん妹は宙に浮かない。
俺はなんだか楽しくなってしまい、一人二役してしまう。
「悟空ーーッ‼︎ ボンッ!」なんと爆発の効果音まで入れてしまった。
俺はふぅーとか言いなんかやり切った感を出しながら妹に目をやるとなんだかガチで引いてるっぽい。
「あ、ごめ、違…」俺が誤解を解こうとする前に妹はドアを力強く閉めて部屋から出て行ってしまった。
「おやすみ」その声はドアの向こうから聞こえてきた。
今度は心の声じゃなさそうだな…
「ごめん…おやすみ…」
もう寝よ……明日学校だし……
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