第14話 大木住宅 6日目(朝)
色々な夢を見ていた気がする。
皆が分かり合える国を作ってみたいと思っている自分がいる。
それでも色々な種族同士で戦争は当たり前のように起きる。
色々な行き違いや、勘違い、または誤解から戦争は始まるし、欲望からも始まる。
俺様は何かを掴もうと右手を上げた。
そして何かを掴んだ。それが希望の明日へと繋がると、その時ようやく俺様は目を覚ました。
半分が右と左で半分つつ肉体と幽霊に分かれているテスの胸を右手で握りしめていた。しかも胸は肉体の方だし、何気に触り心地がよかった。
「あ、いや、これは」
「ぶっ殺すわよおおおおお」
テスが怒りを表して背中から鎌を取り出して追いかけてきたのだ。
小さい小屋の中をぐるぐると回りながら、ようやくテスが諦めてくれた。
「本当にごめん、わざとじゃないんだ」
「それにしてもすごく揉んでた」
「いや、すごく柔らかかったから」
そう言うと、テスの顔は右と左で色は違うが真っ赤になっていた。
俺様も真っ赤になりつつも。
「アギトはさ、無理にウィングタイガー達の家を作る為にずっと考えていたけどさ、途中で気絶してたよ、しかもアギトは考えながらこの小屋を建ててしまって、本当にすごかったんだから」
「そうかな、そこまで褒められると嬉しい限りだ」
アギトは取り合えず仮住まいとして小屋を建設していた。
今までは行き当たりばったりで外で寝ていたりしていた。
「なんだにゃ、こっちはゆっくり眠っておったのににゃ、テスよアギトを襲うなら止めておいたがほういいにゃ、こいつ全然エロイ事考えてないからなのにゃ」
魔法猫のティータの発言で頭を首の下にまで落下させる勢いで首を曲げ、元気がなくなったテスであった。
「とりあえず、自宅を作るのは後回しにしておいて、まずはウィングタイガーの巣または家を作る必要がある。あまりほったらかすと森にいるモンスター達が怖がっているから、あまり放置も出来ない」
「なるほどですね、確か木の上で暮らす習性があるのですよね」
「大体の設計図は完成している。もちろん頭の中だがな、問題は50体も支え切れるかという所だ」
「なるほどですね、支える為の柱見たいなものを付ければいいのではないでしょうか?」
「なるほど、柱になりそうな素材はあるか? 木材はダメだし、そうだった石があったんだ」
俺様は巨大な石たちを回収していた事を忘れていた。
テスはガッツポーズを取ると。
「行動は早い方が良いですよ」
「だな」
「眠いのじゃが」
魔法猫ティータは文句を言いながら、俺様の右肩の上に乗ってきた。
さっそく住居地区となる場所に向かった。
そこでは石の洞窟に住み始めた巨大熊達がいた。
グリドリーとグマドリーは仲の良い夫婦のようだった。
何度も助けてもらっていると、同じように見える巨大熊でも1体1体が違って見えた。
タグマさんが外に出て体操をしていた。
彼の体はどこまで持つ事が出来るのか、俺様としてはとても興味のある内容だった。
今の目標はビルのような城と、刑務所のような壁であった。
俺様が城と城壁をイメージすると、なぜかビルと刑務所の壁となってしまうのだ。
頭の中では城とはどういう形かはある、それをスキルに応用するとそう変換されてしまう。もしかしたらこの世界にいる事により認知がずれるのかもしれない、だとしたらこれだけではない可能性がある。
例えばゴリラがサルだったり、飛行機が鳥だったり。
確実にこの世界に脳味噌は浸食されていっているのだろう。
俺様はそれを恐ろしく感じるのではなく、新しい発想の転換だと思うようにしている。
人生は一度きりなのだから、精一杯生きたいと思う。
まぁこれは人生が2度目と言っても過言ではないが。
異世界転移で自分の作りたかったものを再び思い出させてくれた。
全ての平和っていう国を作るのだと。
「おっと、考えがずれてしまった」
「何をしているんですか、もう」
「アギトは基本的にバカだからにゃ」
俺様はその場所に立ち尽くしていた。
場所は巨大熊の住居である石の洞窟の隣であった。
そこは広々とした場所であり、ここも住居地区にする予定だ。
【魔法概念】というスキルを覚えているので、そこから土魔法を発動する。
地面がシェイクみたいに回転していく。
建設スキルを使用してイメージ通りに建築していく。
木材は異空間のような場所から飛び出てくる。
その異空間の先はビル建設予定地の近くの崖付近に素材置き場が置いてある。
現在は木材置き場と追加で石材置き場も設置した。
その場所から木材が異空間を通して運ばれてくるのだろう。
【建設】というスキルの力に驚きを感じている。
木材が1本また1本と連なっていくと、うねるように曲がって来る。
15分間の建設作業(ただ手をかざしているだけ)だったが、無事に完了した。
石の洞窟より遥かに巨大な形となった木材のアーチは、まさしく木々の上で生活出来る環境を整えてくれた。
それはビル3階建てくらいはあるだろう、ウィングタイガー達の家であった。
ウィングタイガーが50体いても結構な広さとなり、巨大な森林獅子のシシでも寛げるスペースは作った。
周りにいるウィングタイガー達は本能によるものなのか早く登りたそうにしている。
しかし俺様は右手を上げる事で静止して見せた。
先程発動させた土魔法によりシェイクされた地面に建設を発動、大きな石を使う。
形は建設の力により創造する事が出来る。
出来上がったのは無数に広がる石の柱の大群であった。
ウィングタイガー50体と8メートルを超える森林獅子のシシが寛げるスペースは大型スーパー並はあるだろう。
それを支える石材の柱は数えるのが馬鹿らしい程に存在していた。
魔法の連打使用により、少し疲れたので、その場に座って休憩する。
ウィングタイガー50体とシシが木々に上って寛ぎ始める。
中には葉っぱを沢山集めて自分の巣を作ってしまうものまでいる。
10分後にはただの木材を利用して造られた芸術の木材アーチのような家には、所々に沢山の葉っぱが乗せられそれぞれの生活をし始めた。
先程までいなくなっていた魔法猫のティータがいつの間にか左肩に乗っていた。
右肩に乗ったり、左に乗ったりと忙しい奴だと思いながら。
「次はにゃ、鉄材が必要だにゃ、拠点地点となる場所を作るのだろうにゃ、それがあたしたちのシンボルとなるのにゃ、鉄材は山の方にあるにゃ、向かってみるかにゃ?」
「そうだな、その前に食料がなくて飢えて死ぬのを防ぐ為に、本格的に畑と牧畜について役割を決めようと思う」
「なるほどにゃ、さすがは頭がいいにゃ」
「俺様は平和とは何かを考えているだけさ」
「ふふにゃ、それがアギトのいい所にゃ」
アギトは空を見上げた。
そこには太陽が昇っているが、まだ昼ではなかった。
【レベルアップおめでとうございます】
【レベル8→9になりました。スキルを覚えます】
今回覚えたスキル。
【作物創造】【動物創造】
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます