第11話 石材収集方法はソリで運び、ソリの道を製作せよ 5日目(夕)

 ちなみに獣人熊のタグマさんともテイム契約みたいなものが成り立っているはずだ。

 さすがに同じ人間をテイムしたとかアナウンスが流れたらどうすればいいのだろうと、少し思いつつも。今は獣人であるタグマさんに連絡する必要があった。


「こんにちは、タグマさん」

『あれ? どこにいるんですか? 声だけが聞こえてくるんですけど』

「司令官というスキルでして、それで意識の言葉を飛ばしていると思ってください」

『わしに遠くから指令するとは、少し生意気な小僧じゃが、それも致し方ない』


「はい、助かります。ウィングタイガーと森林獅子をテイムしたのです。彼らに石材を運ばせようと思っています。巨大熊たちがパニックになるのが嫌なので、統率者としてふさわしいタグマさんに連絡させていただきました。俺様なりに考えたのです」


『なるほどのう、って、それまじなのか、ウィングタイガーですらすごいのに、森林獅子とは、そいつは伝説級の生き物じゃぞ』

「は、はは」


『笑いごとではなかろう、よかろう、みなには説明しておく』

「助かります」


『まぁ半人半霊のテス殿にも驚かされるばかりじゃが』

「それは反論しません」

『そうじゃのう、ではがんばれ、こちらはお主が大量に伐採した木材の運搬で忙しいからのう』

「頼りにしています。では」

『うむ』


 これであらかたの問題処理は終了する事となった。


 あとはどうやってあの石材達を集めるか。

 

「考えられるのはにゃ、石材そのものを引っこ抜く、しかし、川の形が崩れ去ってしまい最悪川そのものが崩壊する。もう一つは石を砕いて、川の部分だけの石つまり石材を残すという方法にゃ」


 突如話しかけてきた魔法猫のティータさんは、両手で顔を洗っていた。

 水はないんだけど、毛むくじゃらの両腕を顔をこすっている。


 それはそれは気持ちよさそうだった。


 そこに到達すると、ウィングタイガーと森林獅子のシシさんがやってきている。

 グリドリーとグマドリーは胸を叩いて、さぁやるぞという顔をしている。


 確かこの森林地区から少し下った所に拠点にしようと思っている場所がある。

 そこに刑務所のような城壁と、ビルのような本拠地を作るのだから。


 近くには川はあるけど、すごく近いと言う訳でもなく。

 この川を分裂させて、本拠地のところに引いてこればいいのではないか。


 しかし草原地区の本拠地の場所に、川を引いてくると色々と問題があるのではないだろうか、この森林の生態が崩壊するのではないか?


 色々な事が脳裏をよぎる中、

 何も草原地区にまで繋がらせる必要はない。

 木々を伐採した場所には木々のカブが残らないように巨大熊たちに引っこ抜かせている。


 あそこにとても大きなため池みたいなものをつくり、色々と応用出来るのではないだろうか。


 あまりにも水が溢れるなら、その近くにある川に結合してしまえばいいのだ。


 そして迷いはいつしかなくなる。


 指示を下し始める。


「シシさんはその8メートルの体をいかして、あとパワーそのもので石を引っこ抜いてください、川が氾濫した時に、どこに穴を掘っていいかを考えます。決まったら、50体のウィングタイガーの役目です。あなたたちはトイレをする時に土を掘るでしょう、なら、それと同じことをしていただき、川をつくります。グリドリーとグマドリーは本拠地に繋がる部分にて池をつくってほしいのです。頭の中に映像を送るから」


 司令官というスキルは指示を下すにあたって映像を添付する事が出来る事に気づいていた。


 ウィングタイガー達にその場所の絵を見せた所で、彼等は行った事がないので分かる訳がない、なのでグリドリーとグマドリーという夫婦巨大熊に任せる。


「ふむ、穴を掘ってから石を引っこ抜くという方法があるのににゃ」

「それをやる訳にはいかない、この川のある地区、すごいでこぼこしているんだ。それをすべて配慮する事は出来ない、いくら掘っても、でこぼこで氾濫するだろう、なら力とスピードのパワーで一気に水が流れてきたら堀ったほうがいい」


「それはウィングタイガーがいたからできる事にゃ」

「その通り」


「あとお主本来の役目を忘れているにゃ」

「なんだい? あっそっか、確かに石材の事を忘れていた。なぁシシお前は巨大な石をよける事に成功したら。その石をあのソリに乗せて運んでくれ、全部で10個あるから残りの9体をウィングタイガーから選んでくれ」


「ぐるるるる」


「安心しろ、40体もいれば川の氾濫でも追いつく」


「ぐるるるる」


「雨がきたらどうするって? それは考えてなかった。雨はきそうなのか?」


「ぐるるぐる」


「来ないか、それはよかった」


 いつしかシシとの意思疎通が出来るようになっていく。

 別にテイムにレベルは存在しない。

 それでも人の慣れとは恐ろしいものだ。

 あれだけ他種族と接する事があれば、その他種族の事情を分かってあげられるかもしれない。


 俺様は空を見上げる。

 澤島アギトと呼ばれていた時代を。

 今この自然で無人島じゃないかというくらいの大きさの島にいる。

 その島の名前はエアロフーバ。


 ここには100年前、または数千年前に文明が出来あがり。

 それが唐突に崩壊した。


 まるで自分が今から作る文明の未来のようではないかと。

 第2の国をつくりあげたら、ここで滅んだ国についてなぜ滅んだのか、調べる必要があるのかもしれないだろう。


 その時だった。

 色々と考えていたけど、岸部からシシがその8メートルの巨体を利用する。


 ばかでかい石ころを引っこ抜く事に成功した。


 その巨大石をシシは持ち上げたままソリに乗せる。


 ソリの丸太たちが悲鳴を上げる。

 それでも力任せにシシは引っ張っていく。

 その後ろ姿を見送った時、

 爆発でもするかのように、川が決壊した。


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